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【論文紹介】エネルギー代謝を増やす、数分でできるトレーニングとは?

こんにちは。前回の記事で運動が脳活動に与える影響について書きましたが、今回は運動とエネルギー代謝促進について書いていきたいと思います。


エネルギー代謝のメカニズムとは?

ところで、一般に言われているエネルギーとは生理学的に言うと何でしょう?

エネルギーは、ATPという体内物質が変換された形で存在しています。

人間は体内にATPを作ることでエネルギーを貯蔵し、生命活動全般に使用します。

具体的には仕事、運動、家事、睡眠など、あらゆる活動にエネルギーが使用されます。

ATPを使用し続けるとエネルギーが枯渇するため、食事を通してエネルギーを確保します。

ATPは3大栄養素である糖質・脂質・たんぱく質から合成されます。脂質・たんぱく質は後述する有酸素系の供給ルートでしか合成されません。

糖質をはじめとした3大栄養素は、アセチルCoAという物質にまで分解され、アセチルCoAがクエン酸回路、電子伝達系を経てATPが産生されます。

ATPの供給経路には大きく分けて2種類あり、無酸素系と有酸素系に分かれます。そのうち有酸素系での供給ルートのほうが多くATPが産生されます。

その有酸素系の供給ルートを司っているのがミトコンドリアになります。

ミトコンドリアはあらゆる筋肉中に存在しています。本記事では

運動をすることによって筋肉中ミトコンドリアが増加することによってATP合成速度が速くなり、脂肪燃焼システムが機能し、代謝が促進されること

を紹介していきます。

ラットの研究ー高強度運動が最もミトコンドリア数増加に寄与していた

神戸大学医学部の研究で、※乳酸値濃度閾値を超える程度のハイインターバルトレーニング(HIIT)(週1日・30分間のランニングマシントレーニング)を行ったラットが最もミトコンドリア新生を行っていたことが報告されました。

※乳酸値閾値濃度:乳酸は、トレーニングをしている間に酸素が不十分な時に発生する物質。俗に言う疲労物質。運動強度が60%以下であれば血中乳酸濃度はそれほど発生しない。

実験群は、①トレーニングをさせない群②Low lnterval(LI)群③High interval(HI)群の3つに分かれています。

図2

筋肉の増強はHI群、LI群に有意な変化は見られませんでしたが、前者の方が脂肪減少量が大きかったそうです。

HI群が体内のミトコンドリア数を増やしたことにより、脂肪燃焼効果が大きくなったということになります。

ここで、ATPの合成の化学式を見てみましょう。

図3

有酸素系の供給ルートを司っているミトコンドリアが増加したということは、ATPの合成速度が増えるということになります。

無酸素系では2つのATPしか合成できませんが、有酸素系では過程が多く緩やかですが38ものATPを作ることができます。

特に脂肪は有酸素系の供給ルートでしかATPの合成が起こらないため、ミトコンドリアが増加することは、脂肪を分解するスピードが速くなり、燃焼量が増えることになります。

高強度の運動を短時間行うことによってATP合成速度が増えれば基礎代謝が増え、消費できるエネルギー量が増えますし、貯蔵されている脂肪を燃焼させやすくなります。

ビジネスパーソンにとって体力は貴重なもの。ミトコンドリアを増やすことで仕事に打ち込める体力を増やしていきたいものですよね。

たった4分間の高強度トレーニングをするほうが、筋トレよりもミトコンドリアが増加しやすい!?

先ほどはラットの研究でしたが、老若男女の人間を対象にした研究があります。

この研究では18~30歳の若者と60歳以上の高齢者を対象に、以下の3グループに分け、12週間のトレーニングによってミトコンドリア数などがどのように変化したかを見ていきました。

図6

結果として、①のグループで若者・高齢者でそれぞれ49%・69%、筋肉中のミトコンドリアが増加し、③のグループで若者では38%の増加が見られました。②のグループではどちらも有意な上昇は見られなかったそうです。

もちろん、筋トレに全く意味がないということではないです。特定の部位を鍛えるには筋トレが不可欠です。

たった4分間とはいえ、かなりキツイ自転車こぎをすることが最もミトコンドリア数を増やすことができました。

このトレーニング法をタバタ式トレーニングと言われていて、多くのアスリートのトレーニング法として広まっています。

広く広まっていて誤解されている点も多いそうですが、タバタ式トレーニングは20秒の運動+10秒の休憩を8セットやるトレーニングになります。

時短で高強度の運動ーバーピージャンプ

多くの人にとって運動をする障害となる理由の一つに、「時間がない」ことが挙げられると思います。

またタバタ式トレーニングは高強度の運動に当たるため、初心者向けではないため、セットを減らして行うのがおすすめです。

おすすめの高強度の運動はバーピージャンプです。

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動きはシンプルで、腕立てとジャンプを繰り返すだけ。特に下半身、太ももの筋肉に効くため、動くことが少なくなりがちな昨今ではおすすめのトレーニングです。

20秒で5回取り組むことができれば充分キツイ運動になると思います。

徐々に慣れてきたら脈拍数を意識してみてください。

運動強度90%とは、脈拍数175ぐらいの運動になります。

屋内でするのは音がするために難しいかもしれませんが、音を立てても大丈夫な場所でぜひやってみてください!

タバタ式トレーニングやバーピーでミトコンドリアを増やして、エネルギー代謝を上げていきましょう!

参考文献

神戸大学医学部:低強度及び高強度走行運動がラットヒラメ筋の代謝及びミトコンドリア数に与える影響

Cell Metabolism:Enhanced Protein Translation Underlies Improved Metabolic and Physical Adaptations to Different Exercise Training Modes in Young and Old Humans



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