#34 社会人編 〜生活と500円玉貯金〜
皆さんは、貯金をしているだろうか。
ある人は、
「私の趣味は貯金なんです。」
と、訳のわからないことを言い、またある人は
「私の貯金全然ないんです。ほら○円。」
などと、もはやおろせないレベルの貯金を見せて、これまた訳のわからないことを言う。
そんな貯金は、日本人とは切っても切り離せない存在だと思う。
もともと私はバイトでコツコツと貯めたお金や、幼い頃からの貯金を総額してそこそこはあったと思う。
そんな状況だったので、社会人になればどんどん貯まってウハウハな毎日を送れるだろう、と練乳よりも甘い考えをしていた。なぜ練乳か、今ちょうどいちごを食べていたからである。
そんな私だったが、やはり社会はそう簡単ではなかった。
働き始めると一人暮らしの身の上では、飛ぶように生活費が消えていき、何かと購入する必要に迫られ、雑費を含めると手元にはほとんどお金は残らなくなっていった。
「これは、まずい。このままではウハウハどころか、毎日キツキツの生活を送らねばならない。」
と、ようやく自分の置かれた状況を理解し始めたのだ。
そこで、よく周囲の大人たちが
「今月も節約のために野菜買うために、スーパー○件はしごしたんだよ。見て、○十円安い!」
などと、話していることを思い出した。
学生だった当時の自分は、
「なんでたかだか数十円のために、そこまで努力するんだろう。理解できない。」
と、その行動を冷ややかな目で見ていた。
しかし一人暮らしをして気づくのだ。
これらの金額は、ちりも積もれば大金になるのだと。
私も働き始めて知ったのだが、電気代には第3段階まである。これはひと月の電気の使用量に応じて徐々に加算されていく仕組みで、当然だが、ガンガン使うと第3段階に達してしまいとんでもない請求金額になるのだ。
まだまだ社会に出たてのひよっこ、いや卵だった私はそんなことも知らずに莫大な金額を毎月支払うことになっていたのだ。
このままではいけない。
そう、焦りを感じ始めた私はまず自分の生活を見直し始めた。
1円単位まで切り詰める、なんて芸当は本当にお金を趣味にしている人でないと難しいので、諦めた。
とりあえず、自分の生活の無駄なものを削減しようとしたのだ。
例えば、電気代はその最たるものだ。とにかくいらない電気はこまめに消す。
そして食費。余計なお菓子やジューズは絶対に買わないと決めた。飲み物をペットボトルで買うと1日150円だとしたら、20買えば3000円にもなる。水筒にしようとマイボトルを用意。
しかしそれだけだと心もとない。
ということで、数年前から“500円玉”貯金を始めることにした。
500円玉貯金とは書いて字のごとく、貯金箱に基本的に500円玉のみを入れていき、ある程度のまとまった金額を貯めていこうとする計画のことである。
私は500円玉貯金のために、いっぱいまで貯めたら10万円になると言う貯金箱を買った。
これで、近々10万円を貯めて、
「知らない間にこんなに貯まったな。自分へのご褒美に何を買おうかな。いや、どこかへ行くと言うのもいいな。」
などと10万円を手にした未来を夢見ていた。
しかし、ここでもまた現実というのは甘くないことを思い知らされる。何度も言うが、甘いのは練乳と今食べているいちごくらいなのだ。違うか。
結局500円玉貯金はまだ3分の1も貯まっていない。
何が悪かったのか、原因は色々と考えられる。
第一に、私が現金派ではないことだ。
最近の流れとして、キャッシュレス化の波がある。
確かに現金を下ろす必要もなく、特典やポイント報酬もあり、また手ぶらで色々な買い物をすることができるのは大変便利だし、実際その流れに乗って私もQRコード決済やスマートペイなどを使うようになった。
しかし、その代償として、現金での支払いが極端に減ったことはいうまでもない。
現金で貯金をしていく必要があるのに、現金を使わない自分…なんと本末転倒なことだろう。
自分の愚かさはこの時ばかりは嘆いた。
500円玉が出るように買い物なり、外食なりをして行かない限りは500円玉貯金は永遠にたまらない。
もっとうまいことお金を支払っていけば、貯金できるのかもしれないが私はその辺がべらぼうに下手だった訳だ。
他にもまだ理由はある。第二に、せっかくの500円玉を使ってしまうことだ。
いや、言いたいことはわかるのだ。誰もが思うだろう、ばかだと。
でも、ここは少しばかり開き直らせてほしい。
例えば現金で支払う必要があったとする。1300円だとしよう。手元には1000円札と500円玉がある。皆さんならどうする?1500円で支払いたくなるだろう。
お気づきの方もいるが、本来500円玉貯金をしたいなら、そのような場合2000円を出してお釣りできた500円玉がくれば、2枚も貯金ができる。
そう、それはわかっているはずなのだが…どうしてもギリギリ足りるように支払いたい自分が囁きかけるのだ。
「なんで500円で支払えるのに、1000円を出すんだ。500円玉を出してしまえばいいだろう?ほら、出してしまえ。」
と、本当にこんなやつが囁いていたかは定かではないが、こんな風にして私はみすみす貯金できる機会を逃していったのだ。
この調子でいくと、あと10年くらいは500円玉貯金に時間が要るだろう。
そして思うのだ、
「これだったら、普通に節約して浮いたお金を貯金に回せばいいんじゃないか。」
と。まあ、その通りだろう。
それでも、私は夢を見ていたいのだ。
多分この夢が現実になるのはだいぶ先なのだが、毎日少ししか貯まらぬ貯金箱をガチャガチャ振りつつ、今月何を節約しようかと考えるのだった。
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