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プロクラブに恋して

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世界初(?)のプロクラブ連載小説。
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プロクラブに恋して④

プロクラブに恋して④

いらっしゃいませ

ベビーピンクの照明があやしくゆらめく店内。呼び込みのギャル男くんが明かりの向こうへ手を向ける。蛾のように誘導されて席についた。おしぼり、灰皿。

「よろしくお願いしまぁす」隣に舞い降りたのはショートツインテールの女の子。眉まで隠れた前髪。くっきりアイライン。きゃりーっぽい。水割りを頼むと彼女はうなずいて、まるで演舞のような所作でグラスを操った。

「どこかお店寄ってきたの?」慇

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プロクラブに恋して③

プロクラブに恋して③

寄りかかるように、松葉色の扉に身体を当てて押し込む。もれてくる薄闇と珈琲の香り。

カフェ"CORRIENTE"に通うようになって久しい。コルク色を基調とした調度品と穏やかなBGM。窓から差し入る光の角度。無表情で白髪の店主。凜とした(おそらく)夫人。笑顔の絶えない給仕の(ちょっと胸の大きい)女の子。このカフェを構成する全てが心地よくて、長居をしてしまうのが常だった。久しぶりに文庫本片手に訪れたの

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プロクラブに恋して②

プロクラブに恋して②

L字型の席に導かれた。チープなおしぼりを剥いて両手を湿らせる。叩きつけるようなトランスミュージック。よく回るミラーボール。乱反射する七色の刃が暗い店内を傷つけてうねる。煙草と香水の匂い。早まる鼓動。

「20番にレイカさん、21番にナミさんお願いします」

早口のアナウンス。(声が田中リングアナに似ている)そう思いながら僕は無表情で女の子を待っている。ここはセクシーパブ。人肌が恋しくて、つい繁華街

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プロクラブに恋して ①

プロクラブに恋して ①

パーキングブロックに沈む後輪を、みぞおちに感じて車を停めた。名刺入れを胸に封筒片手に。ルームミラー越しにアイビーグリーンの自転車が映る。

2回ノックして会社名を告げると「どうぞ」とくぐもった声。「失礼します」来客用スリッパに体を浮かせて事務所内へ。カウンタの向こうで事務の女性がモニタから半身ずらしてこちらを見つめている。

「請求書をお持ちしました。遅れてすいません」

立ち上がって会釈をする彼

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