巡れ、巡れ、ぐるぐると。
「大丈夫だよ。だって、これはほんとのことじゃないから」
虚ろな表情でそう言った息子は、まだたったの4歳だった。4歳の子どもの心には耐えられない現実が、テレビの向こう側で淡々と報道されていた。
幼い子どもの命が、また一つ消えた。その命を奪ったのは、実の母親だった。
ありふれたニュースの一つ。私たち大人はいつの間にかそういう防御壁を自身のなかにつくり、己の心を守っている。子どもの心はまだ剥き出しで、防御壁の建設が終わっていない。そして息子は、人一倍感受性が強かった。
当時の彼にとってそのニュースは、到底受け入れられるものではなかった。
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