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いつか、必ず。

テトラポットの端のほうで、4人くらいの男性が釣竿を手に海を眺めている。釣りをする人は、おそらく海が好きなんだろうと勝手に思っている。竿を小刻みに動かす人、ほとんど動かさずに煙草の煙をくゆらせる人、竿を岸壁に固定して両手を投げ出して座っている人。みな一様に、途方もなく広い海を見ている。


お日さまが昇っている間の地上の温度は、火傷してしまいそうなほどに熱い。アスファルトも海の砂浜も、裸足では歩けない。夕方、日が落ちてから海に行く。田んぼの畦道を通って辿り着く海岸の上空には、カモメたちに混じってオニヤンマが滑空している。


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着いたときにはうっすらと明るかった浜辺が、すでに陰り始めている。何かを合図にしたかのように、砂浜で佇んでいたカモメたちが一斉に空を舞った。海のちょうど真ん中ら辺で、群れをなして翼を上下に動かしている。魚を捕らえているのだろうか。それとも彼らには、この時間にみなでまとまって飛ぶ儀式でもあるのだろうか。


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