掌編「カッシアリタ」 逃げて
本当に久しぶりだねえ。
車いすの膝の上にお盆を乗せながら、マキははしゃいだ声を上げた。
だな。突然悪かったね。
ううん、来てくれて嬉しいよ。ありがとうね、わざわざお土産まで。
マキはお盆からお茶と、おれの買ってきた栗ようかんをテーブルに置いた。安物のせいかようかんは思ったより小さく貧弱で、おれはひそかに肩をすぼめた。こじんまりとしてるけど、きれいに掃除、整理がされたバリアフリーのリビングには似つかわしくなかった。白いカーテンが揺れる窓際には写真立てがあり、枠のなかで