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海のことば、空のいろ

少し深めのエッセイ。創作にまつわるエピソード。時々、小説。 海の傍で生きてきた私のなかにある、たくさんの“いろ”と“ことば”たち。より自然体で紡いでいけたら、と思います。
いつもより深めのエッセイ、創作インスピレーション、創作小説等を月4本以上、ランダムにお届けします。… もっと詳しく
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#フィクション

【雪虫の舞う朝だけは】

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碧月はる
2年前
42

【塞いだ、その先】

 朝がきたら、少しは楽になると思っていた。けどちっともそんなことはなくて、雨戸を開けて風…

碧月はる
2年前
30

【溶けて、重なり、降り積もる】

 泣くのを我慢していると、喉の奥がぐうっとなる。熱くて苦い塊が詰まって、そこから抜け出せ…

200
碧月はる
3年前
38

【ぬるくなったココアと、春風と】

 時々、無性に焦がれる。ほしくてほしくて溜まらないのに永遠に手に入らないものを、ただじっ…

200
碧月はる
3年前
36

【名前のない獣】

 波音を聞きながら、空の色が変わりゆくのをただ眺めている。頭のなかでひっきりなしにあらゆ…

碧月はる
3年前
43

金魚の尾びれ

 ゆらゆら揺れる金魚の尾びれ。重なる色と光。 「きれい」  呟いた声が、変化する色と重なっ…

200
碧月はる
3年前
28

悪人

「お前、面倒くさい」 「面倒くさいから、浮気したの?」 「そういう返答が面倒くさいんだよ」  つい昨夜まで恋人だった男は、捨て台詞を吐いて部屋を出ていった。荒い足音を立てるでもなく、怒鳴り散らすでも物に当たるでもなく。当たり前みたいに、この部屋からいなくなった。  彼の気持ちが冷めていくのを、毎日ただじっと見ていた。どうでもよかったからじゃない。どうしたらいいのかわからなかったからだ。引き留めたいと思ったし、気持ちが再びこちらに向いてくれるのを心から望んでいた。でもそのため

有料
200

夜泣きと煙草と夏の終わり

「もう切ろうか」  そう言うと、眠たげな声で「やだ」と駄々をこねる。子どもみたいな言い方…

200
碧月はる
3年前
19

 繋がったイヤホンマイクから漏れ出す、規則正しい寝息。酔っ払ったときしかイビキをかかない…

200
碧月はる
3年前
31

愛し(かなし)

失ったものを、ただぼんやりと眺めている。その時間は、何も得るものがない。それでも私は微動…

200
碧月はる
3年前
28

わたしの日記帳

「奉仕もできないとか、もはや寄生虫でしかないよね」 薄笑いを浮かべながらそう言ったこの人…

200
碧月はる
4年前
42

自由な空は、ほんの少し苦い。

そのお店は、商店街の曲がり角にひっそりと建っていた。ガラス窓に張られた手製の紙に並ぶ不揃…

200
碧月はる
4年前
34

どこにでもある恋の話

白いレースのカーテンから、光が漏れている。室外機の上に無造作に置かれた多肉植物にお日様が…

碧月はる
4年前
24

ジェラートを買いに

パソコンのキーをカタカタと打つ手が、ふと止まった。頭にかかっている靄が、ごまかしきれないほどに濃く、重たくなっていく。水分をたっぷりと孕んだ霧のように、それは私の脳内をじわじわと侵食した。