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ヤンゴンでインド製の新型コロナワクチン(コビシールド)を接種した

7月から8月にかけて新型コロナウイルスに感染した経緯は以前のブログに書いた。私は既感染者なので再度感染する確率は低いのだが、複数回感染する人もいるという。日本だったらすぐにワクチンを打つことができるが、ここミャンマーでは簡単ではない。

ミャンマー国内のワクチン接種状況

そもそも、ミャンマーでのワクチン接種率は低い。11月6日付けで2度の接種を済ました割合は約15%だ。
https://ourworldindata.org/covid-vaccinations?country=~MMR

私が住んでいる地区でもワクチン接種(今は45才以上)をやっているのだが、このワクチンを打たない人たちが多い。原因はふたつある。ひとつは、軍が管理しているワクチンなど心情的に打ちたくないのだ。軍の世話にはなりたくないとか、軍を全く信用していない人たちが多い。

もうひとつの原因は中国だ。ミャンマーでは軍が輸入しているワクチンのほとんどは中国製のシノファームやシノバックだ。元々ミャンマー人は反中国感情が強いし、クーデター後は中国政府が軍をサポートしているとされ、反中国感情がより強くなっているからだ。

私も軍管理のワクチンは打ちたくないし(そもそも外国人が摂取できるのかどうか不明)、中国製ワクチンも信頼できない。普通のミャンマー人と同じような心情になっている。しかし、コロナから回復して既に3ヶ月、そろそろワクチンを打ったほうがいいのではと思い始めた。

在留邦人へのワクチン接種

7月に入り、ミャンマーでコロナの猛威により多くの人たちが次々と倒れていった。在留邦人も例外ではなく、4人の日本人がコロナに感染して亡くなった。また、ミャンマーから日本まで緊急搬送された邦人も何名かいた。そういう状況でもミャンマーではワクチンを打つのが難しかった。

そうした状況の中、クーデター後もミャンマーに残っていた邦人のうち、かなりの人たちが週に一便程度飛んでいたANAの救援便で日本に帰国するようになった。ワクチン接種のためだ。しかし、一度帰国するとミャンマーに再入国するのが難しいため、ミャンマーに踏みとどまる人たちもいた。私もその一人だ。

その頃、コロナが蔓延していたのはミャンマーだけではなく、他の東南アジア諸国でも同じだった。日本人の多い東南アジアの国々(タイ、インドネシア、ベトナム、フィリピンなど)では、各国にある日本大使館が在留邦人向けにワクチン接種のサポートを始めた。そのワクチンの多くはアストラゼネカ製だった。

ミャンマーでもコロナの流行が一息ついた9月に、日本大使館が在留邦人向けにワクチン接種のサポートを行った。ところが、このときのワクチンはなぜか中国製のシノファームだった。私はコロナ完治後あまり日数が経ってなかったのと中国製のワクチンだったため、このワクチンを辞退した。

ヤンゴンでインド製ワクチンを打つ

11月に入ったある日、コビシールド(Covishield)ワクチンをヤンゴンで打つことができるという情報をミャンマー人の友人が持ってきた。コビシールドはインド血清研究所によるアストラゼネカのワクチンのライセンス生産品だ。ミャンマーではファイザーやモデルナのワクチンはほとんど手に入らないが、最近はコビシールドが少しずつであるがインドから入るようになったらしい。

11月某日、友人の車で接種会場に向かった。会場といってもヤンゴンの市街地の一軒家だった。その家はとある商品のショップも兼ねていた。医薬品とは縁もゆかりもない商品だが、ここでは伏せておく。

既に数名の人たちが待っていた。中には英語を喋っている外国人らしき人たちもいた。血圧検査をしたあと、奥の部屋に入った。自宅の一室から家具を片付けたようながらんとした部屋だった。そこには男性の医者が一人いた。物静かなその医者に挨拶をし、すぐにワクチンを打ってもらった。接種量が少量なので痛みも少なくすぐに終わった。夕方の6時にパラセタモール(解熱剤の一種)を服用するようにと医者に言われた。

その日は全く副反応は出なかった。ところが、翌日起きるとなんだか熱っぽい。体温を測ると37.5度あった。ワクチンを打った左腕もうずくようになった。通常は一度目の接種では副反応は出ない人が多いというが、私の場合はコロナに一度感染しているので一度目から副反応が出たのかもしれない。昼頃になるともっときつくなり、体温は38.5度に上がっていた。コロナにかかったときの症状と似ていて、倦怠感が非常に強い。

結局、一日中ダウンしていた。次の日には熱は37度ちょっとに下がったが、相変わらず体はだるかった。それでも、3日目にはほぼ回復した。左腕に多少痛みが残るくらいだ。これほど副反応が出たということは、ワクチンは間違いなくコロナウイルスのワクチンだったということだ。それに、副反応が強かったということは1回目のワクチンで体内に強い抗体ができたということでもある。2回目のワクチンは私にとってブーストワクチンになるのかもしれない。

ちなみに、今回のワクチンは1回につき10万チャット(約6,450円)だった。2回で20万チャット(約12,900円)になる。ミャンマーの庶民にとっては厳しい金額だが、多少余裕のある人には待望のワクチンで、多くの人たちが喜んできているという。

このワクチン、軍の目の届かないひっそりとしたところで行っていた。注射をした医者もCDM(市民的不服従)に参加している医者だったかもしれない。本当は医者にいろいろと話を聞きたかったが、聞くのを憚れる雰囲気だ。そんなことは聞かないという、暗黙の了解がみんなの間にあるようだった。何しろ、CDMに参加しているというのが軍にバレただけでも逮捕されて拷問を受けるという人たちがたくさんいるからだ。

このようにヤンゴンの街なかにはこっそりと活動している人たちがいる。

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