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『五等分の花嫁』の革新性 敗者のいないラブコメ

◆◆◆WORNING ◆◆◆ この記事にはネタバレが含まれます ◆◆◆WORNING ◆◆◆ 「五等分の花嫁∽」放送決定おめでとう! それはそうとして、自分はこの作品を原作でリアルタイムで追っていたが、ひとつだけ納得のいかなかった部分がある。 先に、あらすじを少し説明する。 ◆「ミステリーラブコメ」というジャンル 五等分の花嫁のあらすじを簡単に説明すると、勉強のできない一卵性五つ子ちゃん(性格は違うが全員同じ顔)のもとへ、超勉強できる風太郎が家庭教師となり、そこで喧嘩

    • 岩波明『発達障害』(文藝春秋、2017年)

      ■要約大人の発達障害について歴史的過程や実証データ、具体的人物例を多く参考に書かれた本書。 主に紹介されるのは、発達障害の代表ともいえる、ASD(自閉症スペクトラム)とADHDの2つ。 現代の発達障害について、犯罪報道が過熱したことなどもあり、一般人の間でも非常に認知されたものであるといえる。その一方でそれが正しく理解されているとはいえない現状があると指摘される。 しかも一般人だけでなく、専門家あるいは精神科医師でも診断を誤る。正しくその概念を把握している人は限られている。

      • 仲正昌樹『悪と全体主義 ハンナ・アーレントから考える』(NHK出版、2018年)

        ■要約本書はハンナ・アーレントの主要著作の解説書となっている。 序章をのぞけば5章立てとなっており、それぞれ『全体主義の起原』(三部)、『エルサレムのアイヒマン』、『人間の条件』を解説している。 アーレントの本書の邦訳を引用し、著者がその引用部分をわかりやすく説明する形式となっている。 解説書という性質上、まとめと感想はアーレントの思想内容に沿う。 『全体主義の起原』は3巻本となり、サブタイトルが1巻が「反ユダヤ主義」、2巻が「帝国主義」で、これらの考察から3巻「全体

        • 『「一見、いい人」が一番ヤバイ』感想

          ■概評 「一見いい人、だがその中身は悪人」がヤバイんじゃない。 「いい人」"だからこそ"、ヤバい。 ■要約 「いい人」なのに、この人と接すると心がざわつく・・・、そういう相手。 それが「一見、いい人」である。 「一見、いい人」とは例えば、明るい人気者だったり、部下を信頼してくれる上司だったり、情熱的なコーチだったりを指す。 彼らは多くの場合、「悪意」をもっていない。善意だったり彼らなりの信念・理由をもって周りと接する。だから目に見えた欠点はない。 そしてそういう「い

        『五等分の花嫁』の革新性 敗者のいないラブコメ

          ジュリアン・バジーニ『100の思考実験』(向井和美訳、紀伊國屋書店、2012年)

          ■概評  哲学初学者が復習や知見を広げ、思索を深められる本 ■登場する主要な思考実験 〇邪悪な魔物(デカルト『方法序説』) ・・・ 認識論  →自分たちが信じている世界が、邪悪な魔物によってつくられたものかもしれない。この1+1=2と私たちは信じているがそれは邪悪な魔物によってつくられた偽りの答えなのかもしれない。そして私たちはこの世界が邪悪な魔物によってつくられたかどうかを知る由が無い。合理的といえるものですら邪悪な魔物が潜んでいるかもしれない 〇仮想浮気サービス ・

          ジュリアン・バジーニ『100の思考実験』(向井和美訳、紀伊國屋書店、2012年)

          久米郁男他『政治学 補訂版』(有斐閣、2011年)

          ■概評 政治学の初学者の方は読んで損はない教科書というべき本 ■紹介される基本的な単語(一部)〇消極的自由と積極的自由(第3章 自由と自由主義) →権力に対する自由(私有財産の保障など)と内心に対する自由(表現の自由など)が未分だった古典的自由主義に対し、バーリンが区別した自由観。消極的自由はある人が決定することに外部からその決定に干渉を受けない自由であり、積極的自由は選択に対し自らが主体的に決定できる自由を指す。後者は外部からの干渉を否定しないため自由への強制が発生しうる

          久米郁男他『政治学 補訂版』(有斐閣、2011年)

          マックス・ヴェーバー『職業としての政治』(脇圭平訳、岩波文庫、1980年)

          ■要約1、政治とは何か(P.7~P.19)〇政治とは何か(P.7~P.10)  国政がその目的として問題にしてきたものの中で、政治的な団体つまりは国家だけが関わるべき専売特許のようなものは存在しない。 (一般的に国政が対象とするものでも、経済なら会社、軍事なら軍人や兵器産業、税金なら税務士などが関わるといえる)  したがって、政治的な団体とそれ以外の団体とを分ける固有の差というのは目的よりむしろ手段にある。 つまり「正当な暴力行使による支配」である。そして国家以外の人間にと

          マックス・ヴェーバー『職業としての政治』(脇圭平訳、岩波文庫、1980年)

          カール・シュミット『現代議会主義の精神史的状況』(樋口陽一訳、岩波文庫、2015年)

          ■概評  議会制民主主義に対する批判を行った文献。カール・シュミットの思想を手軽に触れられる入門書。 ■要約(現代議会主義の精神史的状況(1923年))0、序言 〇近代議会主義への批判  近代議会主義には以下の批判が度々行われた。政党の支配、不明瞭な人治的政治、政治素人の統治、議会演説の無目的性と陳腐さ、議事妨害、特権乱用、適当でない院内人事などである。代表原理も党議拘束によって無意味となり、公開の原則も重要な決定は諸党の秘密会議で行われてしまっている。  議会主義は結局

          カール・シュミット『現代議会主義の精神史的状況』(樋口陽一訳、岩波文庫、2015年)

          ハンス・ケルゼン『民主主義の本質と価値』(長尾龍一 他訳、岩波文庫、2015年)

          ■概評民主主義及び議会主義を現実的な形で擁護した本。21世紀の民主主義にも適用できる箇所も多い。”法哲学者”としてのケルゼンの影は薄い。 ■民主主義の本質とその価値1、自由〇序論  民主主義の理念は、その第一は他律の苦痛に対する抗議、つまり自由であり、もう一つは英雄否定的な平等の理念であり、そしてこの二つの原理の総合である。  しかし自由は社会的なものを否定するが、そのため社会と適合するために、意味の変遷を経過しなければならない。つまり自由は社会的拘束の否定から、社会的

          ハンス・ケルゼン『民主主義の本質と価値』(長尾龍一 他訳、岩波文庫、2015年)

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