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詩をよみたいと思った日

「はるのひ」という名前は、中原中也の『春の日の歌』という詩から来ている。初めてこの詩を知ったのは、”文字“ではなく、”音“だった。

朗々と読み上げられたときの、その独特のリズム。ぱっと正確には意味が取れないのに、どこか惹かれる…そんな経験は初めてだった。

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春の日の歌   作・中原中也
流(ながれ)よ、 淡(あは)き 嬌羞(きょうしゅう)よ、
ながれて ゆくか 空の国?
心も とほく 散らかりて、
エヂプト煙草 たちまよふ。
流よ、 冷たき 憂ひ秘め、
ながれて ゆくか 麓までも?
まだみぬ 顔の 不可思議の
咽喉(のんど)の みえる あたりまで……
午睡の 夢の ふくよかに、
野原の 空の 空のうへ?
うわあ うわあと 涕(な)くなるか
黄色い 納屋や、 白の倉、
水車の みえる 彼方(かなた)まで、
ながれ ながれて ゆくなるか?

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恥ずかしながら、中原中也という詩人のことをそれまで知らなかった。だけど知らなかったから、純粋にその音のリズムや言葉の響きそのものに興味を持てたのかもしれない。

文章を書きたいと思ってnoteを始めるとき、一瞬で引き込まれたその詩に関係する言葉から名前を付けたいと思った。それくらい、強烈な印象がずっと胸に残っていたのだ。

…最近、政治関連のニュースを聞いていると、耳を疑うようなことばかりで、どうしようもなく目の前が暗くなる。言葉を大切にしていない人たちが国を支える重要な仕事をしているのかと思うと、恐ろしいし、腹立たしいし、すごく悲しい。やるせない。

こんなとき、他にやるべきことはいくらでもあるのかもしれない。だけど、noteを開いて何か書こうと思ったとき、こんなときだからこそ、私も詩をよんでみたいと思った。何てことないことを、そのままの意味の言葉で。

今日、外に出て、風を感じて、気持ちがよかったこと。春の訪れを感じたこと。何てことない、ただ感じたことを、普通の言葉に乗せて流れるように書きたいと思った。それ以上でもそれ以下でもない日常を、心地よいテンポで。

さっそく1つ詩を作ってみたけど、それは下書きに残しておくことにした。奥深い詩の世界、これから少しずつ探検してみようと思う。

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