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ひと 02|職人|漫画家のひみつ

この記事では、日々の生活で出会った"職人"をご紹介しています。

決めた道を探究している職人ってグッときます。
「明日もがんばろう」と思わせてくれるそんな人たちとの出会いの記録。

今回は、漫画を描く友人にインタビューをして文章に記しました。


「漫画家のお仕事図鑑 漫画ができあがる裏側」


初めて漫画を描いたのは2013年、今から8年前のことです。
場所は、東洋と西洋が交わる異国、トルコ。私は美大の建築科に所属していて、留学中の身でした。
建築学生は、留学が終わると、その記録を動画や写真などで発表します。
私は発表する素材として、「漫画」を描くことを思いついたのです。

小さな頃から、漫画を読むことは好きでしたし、絵を描くことが得意な方でした。
そして、美大に入ると、サブカル系の作品やゲーム、そういったいわゆる“オタク”文化を話す友人にも囲まれ、日々を過ごしていました。

けれど、「漫画家になりたい!」と強く思ったことはなかったような私が、
その後、人づてでスカウトされ、Web漫画でデビューしたのは、
はじめてトルコで漫画を描いた翌年の2014年。
楽しくてなんとはなしに描き始めた私でしたが、デビュー後は、プロの漫画家ならではの難しさも感じてきました。
そんな漫画家の、漫画ができあがるまで、をご紹介します。

漫画は、ページをめくり追いかけていくストーリーを通じて、読者に喜んでもらうのが仕事です。人さまに楽しんでもらわなければ、喜んでもらわなければ、漫画ではないのです。

そんな漫画ですが、まずは作家自身の興味のあること、好きなことが出発点となります。

「自分はなにが好きだろう?」、「何に興味がある?」など、自己分析が欠かせません。
なんにもないゼロの平野からイチを生み出す作業です。

「これだ!」と思ったときに、皆さんが見覚えのある漫画の1ページを描き出せるわけではありません。

興味のあることを複数個洗い出せたら、最初は2行程度でいいので、ストーリーの筋道、主人公、キャラクター、どんな読者に届けたいか、について資料を作成します。
それを編集者に見せて、読者の視点や色々な切り口から、意見をもらいます。「1週間で10個のアイデアを持ってきてみて!」なんて言われることも。

アイデアを出して、出して、揉んで、揉んで、ストーリー、人物設定のイメージを詳細化していきます。
この作業は人によりけりですが、数ヶ月かかることも珍しくありません。

その後、ようやく辿り着いたアイデアを元に、ネーム、という実際のコマを配置し、漫画の流れをラフに描いたものを用意します。連載の場合は、大体3話分を一気に描き上げます。

そして、できたネームを持って、編集者とその上長を含めて、連載化検討の会議にかけられます。
ここまできたら、漫画ができあがる険しい山道の8合目、と言っていいでしょう。

めでたく会議でOKが出たら、ネームの直し、作画の作業へとうつっていきます。
もちろんその間も、編集者とのディスカッションが行われる中、私たち漫画家はたくさんの眠れぬ夜を乗り越え、机の上だけでなく、移動中のタクシー内での執筆作業なんかも乗り切って、漫画は読者の元に届けられます。

私が連載当時のことを振り返ると、読んでくれる人を意識することと、自分の個性をとんがったまま打ち出すこととの両立が難しかったのが思い出されます。

Web漫画では、読者のフィードバックが、ダイレクトに、すぐに、漫画家の目に飛び込んできます。
嬉しくなるような100個のポジティブなコメントがあっても、目にしてしまった1個のネガティブなコメントに大打撃をくらってしまうのが実情です。
そして、連載を続けていくために、自分の個性よりも、編集者さんに嫌われまいとしてしまったこともありました。

*写真は、Yu TSUBU主催の漫画ワークショップに 参加した時のものです。


さて、これからの私の目標は「描きたいときに描く」ということ。

冒頭で、「漫画は、ページをめくり追いかけていくストーリーを通じて、読者に喜んでもらうのが仕事です」とお伝えしましたが、そんな喜びを届ける漫画を描かせられて描くのではなく、「描きたいという衝動があったときに描くこと」です。

それは、「自分の作品としてこの世に残しておきたい」、「描かずに死ねない」というような気持ちなのですが、描き出すと、なんだか自動的にレーンに連れられて走り出すような感じで、私には一生涯、避けられない衝動に感じているのです。


Yu TSUBU
instagram:https://www.instagram.com/yutsubu/
HP:https://www.nunounu.com/



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