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違和感は希望への第一歩だと思う

読売新聞の「人生案内」というお悩み相談コーナーが好きで、毎日チェックしている。

読者から寄せられた悩みに、弁護士や哲学者、作家、医師などがアドバイスするというものだ。

毎日のように読んでいて気付いたのは、パートナーからのモラハラに悩む人が想像以上に多いということ。

なかには、精神的DVを受けている事実に気付いていなくて、相手にひどい言葉をかけられるのは「私のせい」だと自分を責めてしまっている人もいる。

いつも願う。「外の世界とつながることで違和感に気付き、一歩踏み出せますように」と。

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当時、私のスマホの検索履歴には、以下のキーワードが並んでいた。

夫 怖い
夫 暴言
夫 帰ってくる 怖い
夫 帰ってくる 動悸

夫との関係に違和感を覚えたきっかけは何だっただろうか。

たしか、誕生日かクリスマスに、実母からもらった「すぐそばも幸せにできないで。 -半径5メートルのレシピ―」という本だった気がする。

当時、まだ1歳になったばかりの娘を寝かしつけて、元夫の帰りを待つ間、ひとりリビングで読み始めた。

途中から涙が溢れて止まらない。今まで自分では「普通」だと思っていた夫婦関係。でも、本を通して、パートナーのことを、大切に考えている旦那さんもこの世には存在するのだと知った。

そして「私は夫から愛されていないのかもしれない」と気づいたのだ。

その夜、布団に入ったら、また涙があふれてきた。隣でスヤスヤと眠る娘を起こさないよう、声を殺して泣いた。

愛だと信じていたものは、愛じゃなかったのかもしれない

その日から、私は笑えなくなった。結婚するときに望んでいた「温かい家庭」は存在せず、現実は息苦しいだけの空間。

私は、生まれてしまったモヤモヤを消し去りたくて、毎晩スマホ画面のなかに答えを探した。そして、たどり着いたのが「モラハラ」という言葉だったのだ。

***

「芸能人夫婦が、夫のモラハラが原因で離婚した」というニュースで、言葉自体は聞いたことはあった。

でも、具体的にモラハラがどういう言動を指すのかは知らない。

ずらりと並んだ、記事のタイトル。

とりあえず一番上のサイトを開く。

「モラハラ夫の特徴」という見出しの下に並んでいたのは、まるで自分の夫の説明書きのようで、衝撃を受けた。

まさか、そんなわけない。

私の夫がモラハラじゃないって証明してほしい。「モラハラに似た何かであって、上手く対処さえすれば、優しい彼に戻るよ」って誰かに言ってほしい。

次の日、すがる思いで男女共同参画センターの相談サービスに電話をかけた。

***

小さな面接室みたいなところで、初対面の女性カウンセラーと向かい合って座る。私は、ぽつりぽつりと、夫に対する違和感を言葉にしていく。

「子どもに予防接種を受けさせたら、そんな痛い思いをさせるなんて母親失格だと言われました」

「子育てがつらくて夫に相談しようとしたら、俺だって疲れ果てたお前のいる家に帰ってきたくなかったよって……。女として見れないって……。だから、死にたいと思ってしまうくらい悲しい気持ちになったよって伝えたら、じゃあベランダあるから死ねば?って言われ……て……それで……」

気づいたら泣いていた。うまく話せていたかどうかも自信がない。

でもね、人に話してみて、やっとわかったんだ。「私、なんてひどいことを言われてきたんだろう」って。

ひと通り話を聞き終えたカウンセラーの先生は言った。「どんなことがあっても、言っていいことと悪いことがある」と。

ああ、やっぱりそうだよね。今まで「夫に言わせた私が悪い」って思ってきたけど、「死ねば?」なんて言っちゃいけないよね。それがわかっただけでも、勇気を出してカウンセリングを受けてよかったと思った。

少し落ち着いた私に、カウンセラーの先生が「彼からプレゼントって、もらったりする?」とたずねる。

どうしてそんなことを聞くのかわからない。けれど、実際、誕生日や記念日以外にもプレゼントをもらっていたので、素直に「はい」と答えた。そして「大体いつも、ひどいことを言われてしばらくたってからだと思います」と付け加える。

「そっか」とつぶやきながら、手渡されたのは「DVとは」と書かれた冊子だった。

DV……

モラハラよりも、言葉のインパクトが強いのはどうしてだろう。

「ここにチェックリストがあるんだけど、どうかな?」

そこには、質問が5~6つほど書かれていて、ほとんど当てはまっていた。

***

モラハラだと否定してほしくて訪れたカウンセリングルームだったけれど、夫から受けていたのはDVであり、違和感は気のせいではないことがわかった。

この日をきっかけに、私は現実と向き合い始める。

もし、パートナーとの関係に違和感があるなら、「気のせい」だなんて思わないで、自分の感情を信じてあげてほしい。誰かに話してみてほしい。

本当に愛しているなら、あなたをこんなに苦しめるはずないんだから。

カウンセリングでもいいし、電話相談でもいい。思っている以上に味方はたくさんいるよ。

家の中から一歩踏み出して外の世界とつながってみたら、何かが動き出すかもしれない。

#モラハラ #モラハラ離婚 #エッセイ #エッセイスト #熟成下書き

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