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恋人との上手な別れ方

 久しぶりにテレビをつけたら、ちょっと面白い番組がやっていた。皆さんご存知、水曜日のダウンタウンである。企画名は、

「マツケンサンバを踊りながら泣くことなど出来ない説」

 参加する人々がそれぞれ泣けちゃうエピソードを思い出しながらマツケンサンバを踊り狂って制限時間内に泣けるかどうかを検証するものだった。
楽しくなくても無理矢理笑顔を作れば楽しくなるっていうしね。フィジカルでメンタルを組み伏せる、というやつだ。

 なるほどな、とわたしは思った。わたし自身、結構すぐに落ち込んでしまうほうなので、落ち込んだ時にさめざめと涙を流すよりは無理矢理にでもテンションをぶち上げてしまえるのならこれはありがたい。是非、採用させて頂きたい。

 しかし、マツケンサンバは音楽に加えて、あのばっちばちにエッジのきいた金色の衣装に、後ろで狂ったように盛り上げてくれる踊り手さんも必要だ。どっかで調達できないだろうか。

しまむらとかに売ってないですかね?

 しかも、実際には仮に衣装と踊り手の方々を調達できたとしても、タイミングも重要になってくる。泣きそうになった時、すぐに発動できなければ意味ない気もする。ヤバイ、泣きそう、ってなった時にすかさず着物に着替えてスタンバイしてる間に後ろのクロゼットからドババッっと踊り手さんがなだれ込んできてくれないだろうか。ここでもたもたしちゃうと、ピシッと決まらない。なんかこの辺りをうまくコーディネート出来たら、すごくいい感じに応用できそうな気がする。 

目を瞑って想像してみて。

 例えば、あなたがずっと付き合っていた恋人にフラれるとする。場所は街のこじゃれた喫茶店。彼の前にはいつものエスプレッソ、あなたの前には手つかずのウインナーコーヒー。BGMは聴こえるか聴こえないかくらいの音量でそっと流れるクラシック。恋人が口火を切る。

「ごめん、もう君とはやっていけない」
「そ、そんな。結婚するって言ったじゃない…」
「本当にごめん」
「わたしの何が悪かったの!?」
「他に好きな人が出来たんだ」
「な、なんですって!?ウ、ウワア…」

 はい、ここでイントロスタート。

 チャン!チャンチャラチャラチャラチャラ~♪

 机に突っ伏していたはずのあなたがいつの間にか金色の着物に身を包み、華麗なステップを披露する。

「たたけぼーんご、ひびーけさーんば、おどれみなみのかるなばーる」

 歌詞が全く意味不明。ちなみに、カルナバルとは何ぞや、とヤ〇ー知恵袋で調べてみたら、こんな答えが出てきた。

「都市の名前…カルナバル市」

嘘つけ。

 とんでもねーやつがいたもんだ。正解は「カーニバル」のことらしい。インターネットに落ちている情報なんて玉石混淆なんだ。鵜呑みにしてはいけない。

時を戻そう。

 あなたがステップを踏んでいる間に、気付けば他の席に座っていた客もみんな揃いの着物を着て踊り狂い、店内はかの懐かしき昭和のマハラジャと化す。カラーボールの色とりどりのライトに照らされ、腰を振り、華麗なステップを踏むあなた。

エスプレッソのカップを持ったままフリーズする彼。

「ああ、恋せよアミーゴ。踊ろうセニョリータ。眠りさえ忘れて踊りあかそう」

 ほら、盛り上がってきた。もう不誠実な彼のことなんてどうでもいい。わたしには、サンバがあるから!あなたは汗を散らして踊り狂う。目には涙の代わりに歓喜が宿る。

 そこにあるのはただ胸にあふれるこのリズムだけ!

 やがてショーは佳境を迎える。

「オーレ、オーレ、マツケンサンバ!オーレ、オーレ、マツケンサンバ!」

 最後の「オーレッ」と共にあなたは自分の分のコーヒー代を机に叩きつけて、呆然とした恋人を置いて颯爽と店を去るのである。

 カッコいい。

 この記事を読んだ皆さま、もし恋人にフラれることがあれば是非上記を実践して、結果を教えて頂きたい。個人的には、あの「オーレ、オーレ」のところのステップをきれいに踏めると非常に見栄えがすると思っている。

              おしまい


 ちなみに、この記事で言うマツケンサンバは「マツケンサンバ」シリーズの2作目で、「マツケンサンバII」を念頭に置いている。「マツケンサンバI」は1992年ごろに作られたらしいが、正直全く印象に残っていない。



















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