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無理してみんなと仲良くしなくてもいい。国語の教科書にそう書いてあった朝。

子どもたちに出された宿題で、母親の私が大嫌いだったもの。
それは「音読」。

国語で勉強しているところを子どもが教科書持って「音読」し、
親は、聞きましたという印に、教科書に貼られたカードにはんこを押す。

うちは朝型の子が多かったので、「音読」するのはたいがい朝。
だから私は、ガッツリ系弁当をいくつかおおあわてで作りながら「音読」を聞くことが多かった。

はっきり言おう。私はこの「音読」という宿題が大嫌いだった。
音読はいいんだ。でも、読む題材を自分で選べない。教育的で、よく出来すぎの物語や、やたら「あおる」詩なんかを、毎朝何度も聞かされるのは、いくらわが子の声といえども苦痛。

でも、
ある年、五年生の三男坊が読んでくれた、いとうひろしさんの
「だいじょうぶ だいじょうぶ」はよかった。
かなりよかった。

ほんわかとした絵本のようでいて、実は結構ヘビーなこの物語、
まずは主人公の男の子の思いが羅列される。

「お向かいのけんちゃんはわけもなくぼくをぶつし」
で、笑ってしまってから、しみじみうなづく。そうなんだよね、人生って理不尽なことが多い。(ご飯を特大弁当箱に詰め込む手につい力がこもる)

どんどん弱気になっていく主人公。
(応援したくて、肉やピーマン(唯一弁当に入れていい緑黄色野菜)と、かさ増しのキノコを強火でジャンジャン炒めまくる)

主人公のそばにいるのは、おじいちゃん。
でも、教訓じみた話なんかしない。ただくりかえすだけ。

「だいじょうぶ だいじょうぶ」

そのうちだんだん主人公の男の子はわかってくる。

「無理してみんなと仲良くしなくてもいい」

最初に聞いた時にはびっくりして、卵を混ぜるさい箸が止まった。
これって、小学生の教科書としては、革命的なのではないのか。

だって、少なくとも私が小学生の頃は、みんなと仲良くできない子は、ダメな子だった。先生から叱られ、居場所をなくし、学校に通えなくなった子もいた。「クラスの全員と仲良くなれるのがよい子ですよ~」
って小さな頃から叩き込まれてきた。

でも、いろいろ経験するうちに思うようになった。世の中の人全員と仲良くなるのは無理。相手の人それぞれに、それぞれ折り合いをつければいいし、それは悪いことでも、卑怯なことでもない。そんな中で、もし自然に、いつのまにか仲良くなった人がいたら、楽しく遊びまくればいいし、仲良くなれない人とは、適度に距離を置けばいい。相性が悪いだけ。それだけのこと。誰のせいでもない。

そして、だんだん主人公の男の子は、ちょっとだけ強気に思えるようになってくる。

「世の中、そんなに悪いことばかりじゃない」

これをね、わが子の口からきくと、本当にほっとします。

厚焼き卵もくるりんとうまく巻けた。
今日もね、きっと学校でいろんなことがあると思うけどね、そんなに無理して頑張らなくてもいいんだからね。じゃあね、いってらっしゃい、と子どもたちを見送ってから、空を見る。
ああよかった。今朝は、笑顔で送り出すことができた。
ありがとうございます、いとうひろし先生。ありがとう「音読」。

「世の中、そんなに悪いことばかりじゃない」

いい日になるといいなあ。


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