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【本紹介】子どもと学校(1)


河合隼雄著

教育における価値

価値の一様性

本当に生き方が多様になっただけ価値観も多様化したのか?
→良い成績=良い子とする一様な価値観に染まっている
→子どもの個性に従って大学を選ぶのではなく、その成績によって適当なところを選ぶ

このような一様性は子どもたちの幸福を奪っている

「素直な良い子」という言葉
→目上の人にいうままに従うこども=良い子
→大学に入って突然自主的判断を求められると挫折する

多発する問題

不登校問題、いじめ、校内暴力は依然として存在する
→その背後には、教師の暴力を暗に肯定するゆな考え方が働いている

子どもの心身症
→簡単には原因は見つからないが、子どもたちはストレスにさらされていて
その問題の深さが感じられる

家庭内暴力
→家庭内暴力を振るう子は元々「良い子」だったことが多い

「問題」の受け止め方

問題とは・・・解決を求めて提示されるもの。それを解くことによって得るものも大きい

もし人生に問題がなかったら、それは生きがいのない人生ということにならないだろうか

→問題児は我々に「問題」を提出してくれている

親・教師がもっと「問題」を解く姿勢を守ることが必要
→自分自身の生き方について深く考え直す

「臨床」の視座

問題児から多くのプラスが引き出されてくることがある
→マイナスを通してプラスが生まれる臨床の過程は教育そのものと言ってもいい

おもちゃのピストルを盗んで郵便箱に入れた子どもの事例
盗みという行動は悪い→叱って返却させることが必要
盗んでまで伝えたかった彼の「心」を考え生かす必要

臨床とは


→死、病、遊びなどの病気や休息の方に光を見出す

病い→外的世界との関わりを止めさせる代わりに、内的な世界の存在に気をつかせてくれる。内的成熟を促進してくれるもの。

そう考えると、「引きこもり」も必要な引きこもりというのがあるのかもしれない

遊びの重要性


自由な遊びの中に、創造活動が現れ、それを通じて子どもたちは自ら癒やされ自ら育っていく
→「お勉強」で固められ、遊びの少ない人間は成人してから創造的な仕事を達成できない。

死からの展望


死んでゆくものとして自分や子どもたちを見てみる
→子どもの教育に対する大人の態度が少し変わるはず
死後の世界で再開した時に、「先生の教えは役に立っています、ありがたい」と言ってもらえるような教育とは?と考えてみる

価値の多様化

いろんな尺度で子どもたちを測ることを考える

勉強も大事だが遊びも大事だと口だけでいうのではなく
「遊びとは何か」「遊びの本質とは」という問いかけを自らに課す姿勢が必要

教育の中の二つの原理

父性原理と母性原理

父性は「切る」母性は「包む」機能を主としている

父性原理(欧米的)
対象を「個」として重視し、確立と成長を願う
競争
※軍事国家的な意味ではない(皆がする限り命を捨てるという強さ)

母性原理(日本的)
場への所属を重視し、全体のバランスを考える
平等感


日本は母性原理の基盤の元にある
良い点・・・能力が低くても全体によって支えられる。凄まじい孤独感を体験することは少ない
悪い点・・・人と異なることをするのが極端に難しい。個の確立は極めて困難。

原理を深める

二つが相容れないなら、深めてみるといい
→深めるとは
自分のよって立つ原理に対立する原理にも意味があることを認め、葛藤の中に身を置く。

深めていくことで、足が地につき、ここを基盤にと感じるところにその人の個性が存在する

→教育の場は、既成の価値によって運営されるのではなく、新しい価値を創造していく場として意味を持つのではないか


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