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【本紹介】アートとしてのカウンセリング入門①


杉原保史著

カウンセリングとは何か

カウンセリングとは何かという問い

一筋縄で答えられるものではないが、大まかに言えば
クライエントの心理的な福祉の向上を目指して行われる対話

極論、
クライエントがよりイキイキと豊かに生きられるように援助できるのなら、何をしたっていい!

クライエントの「体験を促進する」

カウンセリングは何を目指して行うか?

重要なのは、
「面接の今ここでクライエントの体験を促進する」

◆体験を促進するとは
不安、罪悪感などの否定感情を避けるために抑え込んでいた体験に落ち着いて直接触れることができるように導く

複雑な<刺激ー反応>
だれかを羨ましいと思う<羨ましいと思う自分をダメだと思う<そういう自分をダメだと思う・・・・・・・
という感じで人間は思考、感情、衝動、願望などがお互いがお互いを刺激しあい複雑に連鎖する

→自分でも自分の感じがはっきりつかめなくなる

カウンセリングを求める人の多くは
生きていくパワーの源となるような肯定的な体験が親しめない体験として遠ざけられてしまっている

カウンセリングは知的なものではなく、非常に体験的なもの

自己理解

もちろん自己理解・自己洞察・自己への気付きは重要な要素だが
情動を伴っていない洞察では意味がない

例えば「怒りを感じていながらそれを感じないように遠ざけている」クライエント
→「怒りをありのままに体験すること」≠「自分の中に怒りがあると知的に理解すること」

クライエントの中に少しでも怒りが呼び覚まされたか
ありのままに触れることができたか

→ありのままに体験しながら、「ああ、自分の中にはこんな気持ちがあったのか」と知的にも自覚すること=情動を伴う洞察と言われているもの
→さらに言えば、別に知的洞察は必須ではない。カウンセリングは第一に体験的なもの、情動に触れるもの

体験に注意を向ける気づきが大切
→その気づきは、質が大事で
穏やかに気づくこと、価値判断なしに気づくこと、優しい眼差しで気づくこと
が重要

ありのままを受け入れる心構え

少なくとも逃げ腰ではない構えで体験に触れていく

体験そのもの<体験と主体の関係
→カウンセリングでは、クライエントが自らの抱える困難な体験とどのように関わっているかに注目し、その関係の取り方が窮屈で逃げ腰のものから穏やかで需要的なものに変わっていくように援助する。

怒り、おそれ、不安などの情動体験そのものは有害なものではないが、それを回避しようとして害が生じてくる

全身の身体表現を用いる

クライエントの体験を促進するために用いる方法

言葉、姿勢、視線、身振り・・・・・
最も重要なのは

「何をいうか」も大事だが、それを「どのような声でいうか」が決定的に重要

声には言葉の内容以上に、カウンセラーの気持ちがより端的に現れている
声のピッチ、リズム、テンポ、間、音色、抑揚などに対する感受性を高める必要がある

カウンセリングは、全身を用いて行う身体的コミュニケーションのアート

前提としての援助的人間関係

援助的な働きかけが実を結ぶにはその土壌として信頼感・安心感のある人間関係が必要

カウンセラーの癖と個性

カウンセラーが癖を抑えようとして個性まで抑えてしまうと、土台が崩壊してしまう

カウンセラーの聴き方

聴くことの重要性

本当に偉大なカウンセラーはほとんど聴いているだけのように見える関わりの中で相当な仕事をしている

聴く以外のカウンセラーの関わりは
聴く仕事を土台とした上でこそ十分な効果を発揮する

聴くことの難しさ

まずは本人にとってどんな体験だったのかを
興味を抱いて聴く
→その際に何らの判断も下さず聴いていく

十分に共有してもらった上で言われる言葉は大きな意味がある。

カウンセラーの聴き方

⑴ありのままをただ聴く
クライエントの体験を細やかにありのままに、そのまま聴いて受け止める
表情、トーン、視線、姿勢、身振りなど全てに注意を向けてイマココにおけるクライエントのありようを感じる
→聴きながら反応しようとする構えはない

音楽やスポーツでいうフロー(完全に没頭している状態)

⑵がんばらないで聴く

力みなく心を自由にしてただ聴く
頭を使うというよりは全身で感じながら聴く
→考えるモードではなく、感じるモード

⑶体験を聴く
自分の心の中にある気持ちを十分に語り、理解してもらえたとき

人が心の中で体験しているのは本当に計り知れない
カウンセラーはそこに関心を向けて注意深く探索するように聴いていく


⑷無知の姿勢で聴く

カウンセラー側の「こういう出来事があったら、きっとこういう体験があるんだろうな」という予想を完全に裏切るような体験が語られることがしばしばある

→カウンセラーは無知の姿勢で話を聴く

⑸声を聴く、態度や様子を聴く

クライエントの声はしばしばその声に乗って伝えられている言語的・概念的な情報と矛盾した思いを伝えている

→クライエントの話の内容だけに注意を向けてはいけない
声や表情、視線、姿勢、態度話しぶりなどに注意を向け
そしたチャンネルを通して伝えられるメッセージを受けるように聴く

⑹問題を解消しようとせず、問題を味わうように聴く

問題の中に落ち着いて身を置く
即座に解決しようとする姿勢を見せず、穏やかに落ち着いた態度を示す

⑺優しく穏やかに聴く

クライエントの自己防衛を緩めようと力をかけて頑張ってはいけない
余計反発してしまう
→そっと優しく触れるだけでOK

急いで結果を求めず、プロセスを大事にし、痛みはできるだけ小さく
そっと優しく行う方が効果が高い

⑻即座に慰めずに聴く、「目覚めさせる体験」を目指して聴く

痛々しい体験を聴いて、駆り立てられるように慰めを与えるとき
それはカウンセラー自身が楽になるための行為なのでは?

慰める代わりに「目覚めさせる体験」を目指す

◆目覚めさせる体験とは
死を目の前にした人間が、自分の人生をかけがえのないものとし
他の生き物を愛おしんで生きるように成長するきっかけとなる
死を深く見つめさせるような体験

→つらい経験を真摯に受け止め目を逸らさずにその現実をありのままに受け止めることが大きな成長の契機となりうるような体験

挫折体験に対して、それをすぐ慰めるのは追い払うことになる
→その体験を本人が体験し尽くすことを通して、自分に何が不足しておりどうやって補っていければいいのかを理解する道を開く(目覚めさせる)


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