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最近読んだ本!師走

 師走も終わりに近づいたので、最近読んだ本を駆け足でまとめます。

♢ 『情事の終り』 グレアム・グリーン著,上岡伸雄訳

 舞台は第二次世界大戦直後のロンドン。作家ベンドリックスと人妻サラとの不倫関係は1年半前に終わったはずだった。だがある日、ベンドリックスの友人でサラの夫・ヘンリーが、妻の不貞を疑って相談を持ちかける… サラの愛する“彼”とは? 嫉妬に燃えるベンドリックスは探偵に調査を依頼した…

 面白すぎた。あまりに面白い本を読むと面白いとしか言えなくなって感想を書けなくなるが、まさに今がその状態だ。ひえ〜ほわ〜〜すげ〜〜〜みたいなことしか言えなそうなので、特に心震えた一節を引用します。

 普通の堕落した人間の愛がほしい。親愛なる神様、あなたはご存じなはずです。あなたの与える苦痛を私が求めたがっていることを。でも、いまの私は求めていません。しばらくそれを取り上げておいて、いつか別のときに与えてください。

『情事の終り』グレアム・グリーン著,上岡伸雄訳
新潮文庫,p234

 感情を解剖するような心理描写と、真実が明らかになっていく過程がスリリングで、とにかく面白かった。

♢  『海と毒薬』遠藤周作

 戦争末期に起きた米軍捕虜の生体解剖事件を通して「日本人」の罪の意識に迫った小説。凄かった。

 神の存在や愛を問う『情事の終り』に浸った直後に読んだので、罪を犯しても罪悪感を抱くことのない“神の不在”がなおさら薄気味悪く感じた。
 同調圧力なのか空気なのか無関心な諦念なのか、心理を追った先に何もないが確かにある、私達を押し流してくる“これ”は何なんだ?と、投げかけられた問いが空洞に放り出された状態で幕を閉じる。

『情事の終り』でサラが相対していたもの、ベンドリックスの前に立ちはだかったものは普遍的な神であったけど、『海と毒薬』ではおそらく流動的な世間(他者)であった。わかると思った。
 しかし、それを動かしているものは何か?にもう一歩踏み込むと、どこにも行きつかないのでゾーッとした。

 この小説を読んだ後、イスラエル国内でパレスチナへの攻撃に抗議し、良心的兵役拒否をした青年のニュースを見た。

 読みながら「私が勝呂だったらどうしてしまうだろうか」と考えて、明確な答えを出せずに恐ろしくなったが、わたしがページをめくっていたの同じ時、勝呂とは違う道をはっきりと自らの意志で選択した青年がいる。彼は軍刑務所に投獄されるそうだ。いったい何故?


♢ 『世界史の中のパレスチナ問題』 臼杵陽

 パレスチナ問題について知らなければいけないという焦燥に駆られている。
 まず必ず念頭に浮かぶのが「複雑」「難しい」ということ。でもおそらく一度は学校の授業で教わったはずなのである。なのになぜわたしは問題の経緯をきちんと捉えられていないんだろうと疑問に感じた。

 そこで手に取ったのが本書だったのだが、長い歴史の中でのパレスチナ問題の背景や位置付け、出来事の推移を掴み直せて分かりやすい本だった。
 おそらく授業だと、時代と地域ごとに単元が分かれているから、ひとつの問題に対してこれとこれがこう繋がっててこういうことになった…みたいな全体像が見えてこず、頭の中でうまく組み立てられていなかった。

 また、「宗教的なことだから…」と信徒以外が触れてはいけない問題であるように感じていたが、そのまとめ方だと実情とは違うのだろうなと感じた。
 読むと、本来単純な二項対立では捉えることのできない物事を、時代ごとに大国の都合で無理やり二極化して押し進め、対立が対立を、分断が分断を生んでいったことが分かる。

「religion」が各宗教をひっくるめた「宗教」だとするのは日本人特有だ、みたいなことを学生時代に講義で聞いてへぇー!と驚いたような覚えがあるが、ひっくるめることで問題をすり替えたり、何かから目を背ける理由にするのはやめたいなぁと思った。

 次は岡真里さんの『ガザとは何か パレスチナを知るための緊急講義』を読みたいと思っている。

▼ 岡真里さんの講演会の内容をまとめたnoteがありました。

▼ アジア・日本研究所がまとめた関連書籍の読書案内を見つけた。専門書は高価なのでなかなか敷居が高いけど、入門書から手に取ってみたいと思う。



 年末年始は遠藤周作の『沈黙』を読む予定だ。
 隠れキリシタンの末裔である青年を推しているからには必読だろうと思っていたが、なかなか手を出せずにいた。

 最近は風早巽を理解したい一心で小説を読んでいるところがあって、今まで以上に読書が楽しくなったので、その観点で面白かった本を近々まとめられたらいいなと思っている(自己満足)

この天井の重みよ

 本なら買っていいよというありがたい教育方針の家で育ったためか、金欠でも本なら問題ナッシングな気がしてよく考えずに買ってしまうが、金勘定はしっかりしよう… 仮に同じ金額でも飲み会や化粧品だとヒャ〜高!との財布の紐が引き締まるのに不思議なものだ。

🕊️

 あらゆる暴力と迫害がなくなりますように。

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