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俳優・三浦春馬の集大成 『天外者(てんがらもん)』の見どころを紹介する

U-NEXTで、6月23日から『天外者(てんがらもん)』が配信開始されるという。

昨年12月11日に公開された本作を楽しむために、私は公開初日に有給休暇を取得して、映画館に一日中入り浸った。

敬愛する俳優・三浦春馬さんの最新主演作。彼に見たことがない景色を見せてあげたかった。映画は公開初日を含む3日間の興行成績が勝負らしい。ならば、可能な限り貢献しようじゃないか。そう思ったのだ。

Twitterで発表された、U-NEXTの今月配信開始のラインナップを貼っておく。

実は、さんざん『天外者(てんがらもん)』については書いていて、もうネタ切れではあるのだ。だけどせっかく配信が開始されるので、あまり三浦春馬さんのことを知らない人にも観ていただけたらと考えた。そこで、今日は映画『天外者(てんがらもん)』の紹介をここに綴っておく。

観ずに詳しく知りたい方は、以下をご参照願いたい。ネタバレしかないので、作品を観たい方は、読まないことをお勧めする。


映画『天外者(てんがらもん)』とは

幕末から明治にかけて日本近代産業の礎を築いた五代友厚の功績を伝えるべく、市民有志が立ち上げた「五代友厚プロジェクト」により制作された。大きな映画配給会社が絡んでいるわけでも、大きな制作会社が関わっているわけでもない映画『天外者』は、端的に言えば「五代友厚の一代記の体裁を借りた、幕末の若き傑物たちの物語」である。本作は、公開までに様々な困難に直面した。

決まらない配給会社、新型コロナウイルスの流行という逆風、主演の急逝。

それでも、昨年12月11日に、五代友厚プロジェクトをはじめとする制作に携わった人の熱意、三浦春馬さんファンの熱意が合わさって公開にこぎつけた。

コロナ禍の中、全国各地で上映期間延長、再上映・再再上映、ドライブインシアターなどの広がりを見せた奇跡の作品である。

ちなみに、天外者(てんがらもん)とは鹿児島地方の方言で、「すごい才能の持ち主」を指す。

『天外者』見どころその1:三浦春馬の殺陣

最近の作品でいったら、殺陣と言えば『るろうに剣心』であろう。

ワーナー・ブラザースのような大資本が入っているからこそ実現可能な、ワイヤーアクションバリバリの殺陣もカッコよくて素晴らしい。だが、お金のかかっていないこの映画で見せる、三浦春馬の殺陣もまた、大変美しくて見惚れる。必見だ。

まるで往年の時代劇スターのような太刀筋の美。鍛え上げられた体幹のおかげで、刀を振るう時の姿勢がとても美しい。

そして、薩摩の示現流。一撃必殺の薩摩武士の構えに、三浦春馬がやるからこその様式美が垣間見える。他の薩摩武士役の方々も、同じ構えをしているにも関わらず、だ。

『天外者』見どころその2:三浦春馬の英語

長崎に遊学している時と、薩英戦争で捕虜になった時の2回、三浦春馬には英語のセリフを話す箇所がある。

このセリフの発し方が、まるで違うのだ。

最初の英語のセリフは、たどたどしい。2回目の英語のセリフは、かなり流暢だ。時間的には6年の月日が流れている設定で、徹頭徹尾開国派だった五代友厚が、6年にわたって英語をコツコツ学んでいたことを感じさせる。

そして、この時代具体的に薩摩と関わっていたのは英国である。

だから、三浦春馬の話す英語は、Britishなのである。

是非聞いてみてほしい。三浦春馬は耳が良いのだ。歌が上手いことからもそれは明白だ。耳の良さは、語学の習得にも活かされている。

ちなみに、俳優さんがセリフとして必死に英語を話しているという感じではない。普段から英語学習をちゃんとしている人の英語だ。はっきりわかる。

『天外者』見どころその3:三浦春馬のお芝居

表情筋を含めて、姿勢など身体を細部までコントロールしてのお芝居は、この作品に限ったことではなく三浦春馬の「平常運転」なのだが、あまり見たことない方には印象に残るだろう。

遊女・はるに向けるまなざし、簪を買う時の表情、はるの手を握る才助の手、涙。

仲間である龍馬に向ける顔、いたずらっぽく利助と話す時の笑顔。ナンバ走りで走り去る姿。

妻・豊子に向けるまなざし、ともに墨絵を書くシーンでの柔らかい表情。

そして、薩摩弁。耳が良いと、方言も上手にこなせることがよくわかると思う。

『天外者』見どころその4:圧巻の演説シーン

五代友厚が設立した「大阪商工会議所」の前身となる団体の設立集会で見せる演説が圧巻だ。私は三浦春馬作品を結構観ている方だと思うが、これほどの熱量が画面を通じて伝わってくるのを、観たことはない。

なおこのシーン、出来れば何回か観ていただきたい。1回では気づかなくても、何度か観たら気づくことがあると思う。

作品を観る際の注意事項

五代友厚という実在の人物の生涯を描いた物語だが、五代氏の功績はあまりこの作品では分からない。実際の五代友厚が何をした人なのかについては、私が別途以下のnoteに記載しているので、そちらを参照してほしい。

また、本作は実在の人物をもとにしてはいるものの、ファンタジーでもある。伊藤博文と坂本龍馬と岩崎弥太郎と五代友厚が、4人とも知り合いだったということを史実として証明するものは何もない。「もしそうでもおかしくない瞬間はあったよね」というレベルである。

加えて、幕末の長州藩でゴリゴリの攘夷派だったはずの伊藤博文(当時は俊輔)がだいぶマイルド(というか、開国派の五代と何で仲いいんだ?状態)になっているし、英国から緊急帰国したのは、史実によれば下関戦争を止めるためなので、あんなところでのんきに武士に追いかけられている暇はなかったはずだとか、歴史好きにとって?な部分はある。

だが、そこはファンタジーなので、あまり気にせず作品として楽しんでほしい。要するに、歴史ロマンを追う作品でも、歴史上の人物の生涯を丁寧に描く作品でもない、ということだ。

あえて言うなら、時代を支えた若者のパワーと、駆け抜けた後に残ったものを描く。そういう映画だ。

終わりに

最近、三浦春馬さん以外の話を多くしているので、ありがたいことに春馬さんファン以外の方が、ここをポツポツと見てくれるようになってきている。U-NEXTで配信が始まるということなので、良いタイミングかと思い、『天外者(てんがらもん)』の紹介を書いてみた。

より作品にご興味がある方は、記事一覧からお好きなものをお読みいただけたらと思う。また、春馬さんの他作品については、やはり記事一覧からいろいろみていただけたらと思う。

書いていない春馬さん作品もたくさんあるのだが、悩んでいて書けないものと、未見のものがある。

ときどき春馬さん作品を観てみたいのだが、どれが良いか?と訊かれることがある。基本的には訊いてくださった人の好みに合わせた答えを返しているのだが、お好みを訊かずとも、一つだけ全力でお勧めできる作品がある。

コンフィデンスマンJP ロマンス編』である。

この作品の三浦春馬は、魅力のかたまりだ。くどくどと説明するよりも、とにかく興味のある方は観てみてほしい。


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