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『しゃぼん玉に舞う』

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「しゃぼん玉に舞う」第一章 夢中①

「しゃぼん玉に舞う」第一章 夢中①

 一発打ち上がるごとに背中に轟く花火の音、歓声を上げて夜空に拍手を送る浴衣姿の人々で浅草寺に続く道路は埋め尽くされていた。道行く人は綿あめに顔をうずめていたり、紙コップに入っている焼き鳥を頬張ったりしていた。その道で停滞する人々を警備員が体と声を張って汗だくになりながら誘導している。
夏を満喫する群衆の中、横山仁美は一人、その場に不釣り合いなスーツ姿で流れとは反対側にある駅を目指して大股で歩いてい

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「しゃぼん玉に舞う」プロローグ

「しゃぼん玉に舞う」プロローグ

 どこから来たのか、しゃぼん玉はどこへでも飛んでいく。ふわふわと、当てもなく揺れ動いているのに、いざ掴もうとすればするりと躱して遠くへ飛んでしまう。まるで行先は決まっているかのようだ。しばらく目で追っていると、しゃぼん玉はいつの間にか消えていた。その軌道の読めない動きと光の反射によって変化する鮮やかな色に人々は魅了され、翻弄されていく。
 彼はしゃぼん玉のような人だった。

 どうもうまくいかない

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