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【インタビュー】都倉賢「給与を貰うだけの時代は終わった」

「僕らはコロナ危機による戦力外対象になりやすいはず」

Jリーグ通算108ゴールを叩き出すストライカーは
コロナによる中断期間を一種のチャンスとも見ている

行動を突き動かす原動力は
強烈な危機感
そして新たな挑戦から得られる
成長への欲求だ

新型コロナウイルスの感染拡大で、
Jリーガーの活動休止が続き、
改めて見つめ直される

「アスリートに求められる役割とは?」

各種SNSでも精力的に活動する
セレッソ大阪の都倉賢選手にその想いを直撃した

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「個人活動も重視される時代」

---現在はどんな時間サイクルで日々を送っていますか?

都倉:
午前中はサッカーの為に時間を使い、午後からはリモートワーク中の妻の
サポートも兼ねて子供と時間を過ごしてますね。
朝9時からバイクを漕ぎ、10時-11時半でZOOMによるチームのフィジカルトレーニングを行っている。
娘が昼寝をする14時-16時頃と晩飯後の20時半以後はJリーグ再開後も見据え新たなコンテンツ作成の為、個人活動に時間を費やしています。

---今、多くの選手がSNSでの発信を活性化しているが、シーズン中も同様の活動は可能だと思いますか?

都倉:
ケアの時間は増えるが、時間はたっぷりある。
シーズンが始まっても本人の意思次第で確実にできますね。

---コロナの中断期間、サッカーが出来ない状況下での自身の役割をどのように捉えていますか?

都倉:
〝サッカーをプレー出来ない状況下での選手の価値とは


それが今、自分に問い掛けているテーマです。

一つ大切なのは〝発信〟できるか?だと思う。
僕は元々、継続的にSNSを使うなど〝挑戦〟への土壌があった。

そして、世の中の動きも
単に会社から給与を貰う時代は終わった。

個人でマネタイズするなど、
個人で稼ぐ事が重視される時代になって来たと思う。

サッカーと野球に関しては競技のブランド力が強い事もあり
これまで、ピッチ外での活動が重視されておらず、
恵まれてるからこそのデメリットもあると感じていた。

しかし、格闘家などは競技収入が不安定なこともあり、
各々の個人活動も重視し、生活ベースを整えている事例が多いと聞く。

社会全体で見てもSNSを用いた
〝個人〟に力が移行しているのは確実。

その中でまず何が出来るか?というと
SNSを整えて影響力を強めること。

それが今後、セカンドキャリアも見据えて生きて行く上での
最低限のベースになると今回のコロナで一層感じている。

僕で言うと、中断期間中にマネタイズできる
ポイントを増やして行きたい。
選手は現役中に活動出来るメリットを絶対に生かすべきだと思う。

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---都倉さんは『Jリーガー』という肩書きを上手く利用してセルフブランディングしていると感じるが、何か心がけていることはありますか?

都倉:
サッカー選手は基本的に週1の試合日にしか報道されないが、
個人メディアを持つことで、勝ち負け以外のプロセスも共有できる。

目標に向かってトライする過程を共有することで
〝人間としての都倉賢〟を応援して貰えればより本質的だと思うし、
引退後も応援してくれる軸が育つと思う。

ワインのクラウドファンディングで約600万円集まったのも
サッカーだけに捕らわれず、色々なチャレンジをしてきた事が繋がり
多くの方が応援してくれたのだと思う。
(※自身のワイン造りの支援を募ったクラウドファンティングで目標金額の
3倍の約600万円が集まった)

---しかし、サッカー選手は「ピッチで結果を残せばいい」という一つの考え方もある。ピッチ外で目立った活動をすると「サッカーに集中しろ」といった声が出ることも想定される。そういった声に対して都倉さんの考えは?

都倉:
そういった人たちの言葉は気にならない。
価値観は時代に反映される側面もあるので、それは仕方ないと思う。

考え自体は否定しないが、
昔は与えられたタスクをこなせば
評価される側面が強かったと思う。
僕らの時代はSNSもできて、多様性の文化で育ってきた。

正解はないし、違う価値観の考えを否定はしないが、全く気にならない。
それぞれの価値観でお互いが生きていけばいいと思う。

ただ、〝サッカー選手はサッカーに集中しなければいけない〟という
ある種の洗脳的側面は選手側にもある。
批判意見はマイノリティかもしれないが、
その声が大きく感じてしまいがち。

しかし、世の中の状況や構図を理解していれば、
SNSへの向き合い方や批判に対する
受け止め方も変わってくると思う。

「僕らベテランは戦力外の対象になりやすい」

---都倉さんは現状を注視し危機感も感じているのだと思う。来年以後、クラブ運営にも一層大きな影響が出てくると想定されます

クラブの三大収入
スポンサー収入(約50%)→広告機会の損失などで減額可能性
チケット収入(約20%)→試合数減や無観客試合で大幅減が濃厚
物販収入(約10%)→試合時の物販販売なし、中国サプライヤーによる物販遅れなどで大幅影響あり
※クラブ収入の約60%が選手人件費に費やされる

都倉:
世界的に見ても、破綻したクラブもありますし、
コンサドーレの年俸削減報道なども出ていたので、

〝サッカーが出来る前提で〟
「来年は年俸が減る」という危機感は
どの選手もあると思う。

その中でも僕らベテラン層は戦力外の
真っ先の対象になりやすいと思っている。

来年プロとして契約出来ないリスクがある。

自分ではまだまだ、プレーできると思うが
世の中の流れや経営目線で見たらそうなるので
強い危機感がある。

ただ、若くて年俸が安い選手も対象になりやすいだろうし、
それぞれのレイヤーで不安の種類は各々あると思う。

---そういった意味でも今後、現役選手のピッチ外の活動事例も増えそうです。都倉さんはサッカー外の収入を得た経験があると思うが、サッカー給与とは違う喜びがあったりしましたか?

都倉:
めちゃくちゃそれはあった。
オンラインサロンの収入など額自体で見ると
本業の給与とは比にならない。

でもその価値の重さはすごく感じる。
僕はサロンやクラウドファンディングなんかで
経験したことは本当に勉強になっている。

---成功体験を一度できたら、その後の向き合いが変わる方も出るかもしれません。

都倉:
僕はそうだったと強く感じましたね。
サッカー選手は自分たちの貰っている給与が大きい。
でも一般的な社会におけるお金の巡りの感覚を感じる経験が出来たら
すごく勉強になると思います。

---今、一番注力している活動の一つがYouTubeだと思います。
どこに目標設定は置いてますか?

都倉:
色々なジャンルの方と対談して学びの機会を得たい。
また、現役の間は、スポンサー企業の社長さんと対談する
プラットファームに出来れば、そこも僕の価値の一つになると思う。
プレイヤーとしてのプレーが前提にありつつ、自分の付加価値にもなる。

また、YouTubeを始めたことで、取材も増えたり
ここ数日も小野伸二さん、箕輪厚介さん、武井壮さんらと
対談できた。

受け皿を持つことによる
メリットの大きさを感じる。

今まで聞けなかったようなことも聞けるし、
僕自身がめちゃくちゃ成長できるなと。

もっと登録者数が増えて大きくなることで、今まで面識の無かった方とも
接点を持てるチャンスが出ると思うので今後が楽しみですね。

---今、一番出て欲しい方はどなたですか?

都倉:
西野亮廣さんには是非、話を聞いてみたい。
現段階で武井さんや箕輪さんに出て貰えるのは本当に恵まれていると思う。
僕の強みは肩書きなど関係なく人の懐に飛び込めること。
どんどん業界の垣根を越えていければと思う。

---昨年から橋本英郎選手と共にオンラインサロンも運営しています。その狙いと効果は?

都倉:
参加してくれる方々との出会いからコンテンツを生み出していきたいという考えで始めた。
試行錯誤しながら続けてきたが、LINEやZOOM機能を効果的に使えることになったことで出来る企画も増えて来たし、楽しみが広がっている。
今後、一層活動を活性化していきたい。

---先日はベガルタ仙台の赤崎選手にサロン作成に当たっての助言も行ったそうですが、どんなことを伝えたのですか?

都倉:
自分の1年強のサロン経験と個人活動をするに当たって、チームを巻き込むことの大切さを話した。個人事業とは言え、チームに所属してる手前
扱いにくい選手などと思われたら損ですからね。

「若者から常に学びたい」

---スポーツ選手ではまだ参入選手が少ない
TikTokも中断期間に始められましたが、その狙いは?

都倉:
〝時代は常に若者が作っていく〟
TikTokは若い年代が多いという印象もあって、
そういった人々の価値観を知りたかった。

時代に取り残されないように若い年代から常に学びたいと思っている。

始めてみると、他の媒体とはコメントの質が違うなど特性を感じている。
また、TikTokのアルゴリズムの特性上、今までリーチ出来ない層に
タッチしやすい側面がある。
やり始めたら想像以上に面白くて、編集も簡単なので
他選手にもおススメしたいですね。

---TikTokは特に若手選手との相関性が高いと思う。レアル・マドリードも成長領域として重視している。選手が始められない障壁は何だと思いますか?

都倉:
未知のジャンルに対する〝怖さ〟が強いんだと思う。
プロアスリートになった人たちは基本的に
自分が出来る事×よく知っている事=今の職業
になっていることが多い。

競技外で 出来ない事×知らない事
に直面した時の免疫が弱い。
それは大きな問題だと今思っています。

---インスタライブでも連日、朝8時からラジオ体操を行い、盛り上がりを見せていますね。都倉さんは競争が少ない領域を意識的に狙っていますか?

都倉:
こんなに見られるとは正直思っていなかった。
朝8時開始を習慣化したのが受けているのだと思う。

中断期間に何かを始めたいと思っていたが、
何を行うか?迷っていた。

妻に相談したら、「ラジオ体操なんかいいんじゃない?」
と提案されて不安もあったが、ひとまずやってみた。

初日は200人程度だったのが、今では連日500人を超えていて
皆さんの日常の一部になり、継続されている方が多いように感じる。
自分自身も〝習慣化の良さ〟を本当に実感できている。

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---継続的にコンテンツ投下を続けられる選手も少ない。各種SNSなどを継続できるメンタリティの秘訣は?

都倉:
Youtubeの堀江貴文さんと前田裕二さんの対談の中で
「人が面倒くさいと思うことは意外とコスパがいい」という
発言をされていて、自分の中でストンと腑に落ちた。

周りの多くは面倒な状況に直面すると続かない。

そこで自分がやり続けたら耐性が付き、やがて自分の物になって、
成長を実感するサイクルを経験しているから継続できるのだと思う。

---今、都倉さんがピッチ外の活動で面白いと思うアスリートはいますか?

都倉:
チームメートの柿谷曜一朗ですかね。
正直、曜一朗はすぐに飽きると思って見ていたが
毎日夕方にインスタライブをして他チームの選手とも
絡めた配信をしている。
曜一朗はサッカー選手としての影響力が大きい+しゃべりもいいので
面白いですね。

---柿谷さんもYouTubeチャンネルを始めましたが、その想いなどを話したりしましたか?

都倉:
まだ聞いていないですね。
曜一朗はそういったタイプではないと
思っていたので興味はありますよね。
近日中に対談をして聞く予定ですよ。

---引退後のプランを考えたりはしますか?

都倉:
まだ全然考えてないです。

元々ゴールを決めずに
まずは、行動してみる習性がある。

現役中にアクションを起こしておいたら、
その後も優位にスタート出来るという
理解はしているので、その時々でいいと思った
行動の連続で多くの種を蒔いておく感覚ですね。

---移籍の際にセカンドキャリアも考慮することはありましたか?
特に一昨年末のコンサドーレからセレッソへの移籍は驚きました。

都倉:
32才になる年で大きな評価を受けたのが大前提ですよね。
その年齢でのワクワクできる挑戦は競技者として恵まれているなと
思いましたし、僕自身ストレスを抱えることで成長してきた選手。

北海道に家を買って、リフォームしたのを見れば
僕が北海道にどれだけ思い入れがあるのかは
言うまでもないと思うが、その時の心の声に従いました。

選択に正解はないと思うが、大阪に来て
多くの刺激も受けましたし、怪我もあったが、
人間として色々な経験を積めていると思う

---最後に今後への想いを一言お願いします

都倉:
コロナで中断し〝サッカーをしたくてたまらない〟

個人的な願望としてはJリーグが
早く再開することを熱望している。

そこに向けてガイドラインにしっかりと従った中で
プレーして、自分たちの価値を還元することが
閉塞感が漂う今の日本に貢献できる事だと思っている。

スポーツやエンタメは無くてもいい存在だと思っていたが、
このままそういった領域が無いのはヤバい。

サッカーが出来る価値を感じているので、
それを表現する責任も増したと思う。

今まで以上にサッカーが出来る有限性を噛みしめて
表現していきたいと思います。

PROFILE
都倉賢
1986年生まれ、東京都出身。Jリーグ・セレッソ大阪所属。

横浜F・マリノスJr.ユース菅田−川崎フロンターレU-18−川崎フロンターレ−ザスパ草津−ヴィッセル神戸-北海道コンサドーレ札幌-セレッソ大阪


今、多くの人々が困難な状況に直面し、
自分自身の〝仕事〟を今一度見つめ直す
契機になっているのではないだろうか。

世界全体が大きな影響を受けている。

スポーツチームのビジネスモデルも
これまでと同様の取り組みでは
立ち行かなくなるはずだ。

個人個人のアクションが大きな実を結ぶ時がきっと来る。

日本フェンシング協会会長の太田雄貴さんは
「プロアスリートは引退後にこそ、その価値が見えてくる」
と語る。

競技を通して何を学んだのか?
そこからどんなアウトプットをできるのか?

都倉選手のように〝発信するブランディング〟もあれば
敢えてピッチ外での露出を控えるという策もあると思う。

それでも何となくその道を選択するか?
それとも複数の選択肢を考慮した上で
「ピッチ上の活動のみに集中する」
という道は似て異なるものだと感じる。

幼少期から絶え間ぬ努力を続け、
一握りの人々のみが許された道だからこそ、
各々にはその道と貴重な時間を大切に過ごし、
アスリート一人一人の価値が
一層高まる未来を心から願いたい。

自分自身も改めて考えたい。
今、出来る最善の取り組みは何なのか?

そして、各々のフィールドで
アスリートの皆様が再び
輝く日々を心待ちにしている。


<了>
くろかわひろと



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