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ミュージカル"Wicked"観賞

こんにちは。
またミュージカルのテーマ続きになります。


先日はWicked(ロンドン/West End公演)を見に行きましたので、その感想を。

Wickedはニューヨークのブロードウェイも含めると、6回目の観賞になりまして…。初めて見たときの衝撃をまだはっきりと覚えています…。

初めてWickedを見たのは、2011年(!)9月、アメリカのニューヨークで1ヶ月間インターンで過ごしている期間でした。東日本大震災が起きた年だったので、隣に座っていたご夫婦の旦那さんが、「君の家族は大丈夫かい?」と気にかけてくれたのを覚えています。あと、第一幕最後のDefying Gravityに圧倒されて、休憩中に放心状態になっていた私に「大丈夫?」と声も掛けてくれました。笑


…さて、思い出話はさておき。


今回はあくまで先日見たWest Endの公演の感想を。相変わらずの長文ですが、どうぞお付き合い下さい。


☆Wickedとは。
同名の小説が原作。「オズと魔法使い」のアナザーストーリーで、「悪」とされる西の魔女が何故「悪」と呼ばれるようになったのか?その裏話が描かれています。Wickedは、音楽の素晴らしさは勿論、セット・衣装が本当に豪華で煌びやかなので、「ミュージカル見てみたいけど、どれを見たらいいか分からない」という方にもお勧めです!


☆劇場
劇場は、"Apollo Victoria Theatre"。ロンドンVictoria駅のすぐ側にある劇場です。

Apollo Victoria Theatre

私はこのすごく主張が強い劇場の外観が好き。笑
すぐ近くにはハミルトンの劇場もあります。
客席は、StallとDress Circleの2階分のみですが、それぞれ客席数が多く、West Endの劇場の中でも大きめの劇場にあたると思います。そして席に着いた瞬間からセットの豪華さに圧倒されます。

この日は当日のRush Ticketでゲット。2階Dress Circleの前方の席だったので、舞台全体をほぼ正面で見られたので、かなりの良席でした。

Circle席前方からの眺め


普段は100ポンド近く(もしくはそれ以上?)する席が30ポンドでゲットできる…これだから、Rush Ticketは辞められません。。


☆ストーリー
生まれつき肌の色が緑色のエルファバ(西の魔女。後に悪の魔女として知られるようになる)。
学校で他の生徒からからかわれたり、ましてや気絶されたり…。エルファバが周りから拒絶される様子が、面白くコミカルに描かれていますが、これって結構グッサリ現代の人種差別にも通ずるなと感じてしまいました。Wickedの初演から20年近く経っている訳ですが、”人種差別”の問題はまだ根深く、寧ろ悪化しているような。。特にアジア人の自分としては、「存在するだけで馬鹿にされる。容姿をからかわれる」ことが他人事とは思えず…。

また、ヤギであるディラモンド教授が、
『Animal Should Be Seen and Not Heard / 動物は"見る"ものであって、"聞く"ものではない』
と嫌がらせされたことも、女性の社会的地位の低さの問題にも通じていたり…。

…とまぁ、ストーリーはテンポよく進んでいくのですが、所々、現代の問題に通じるポイントが散りばめられていて、決してフィクションの世界の中だけで終わらせられない痼りを残してくれるかなと。


☆キャスト
Wickedを何回も見ているのにも関わらず←、今回も見ようと思った目的は、グリンダ役のLucy St Louisさん。
彼女は、去年まで「オペラ座の怪人」でクリスティーヌ役を演じていました。ちょっと悲壮感が漂う(←)クリスティーヌから、ハッピールンルンなグリンダ…というイメージがほぼ真逆の役を演じる彼女を見てみたかったのです。

↑クリスティーヌを演じるLucyさん

見た結果…いや〜かなりハマっておりました。あのちょっと常に憂いを帯びているクリスティーヌから一転、キャピキャピハッピーなグリンダがめちゃくちゃハマってました。笑
そして、クリスティーヌをやっていたという絶対的な安心感。グリンダ特有の高音パートが美しいったらありゃしないのです。是非、多くの人に彼女が演じるグリンダを見て欲しい…!

また、現在フィエロを演じているライアンさんも結構お気に入りです。笑
彼はアフリカ系イギリス人の役者さんで、かなり筋肉隆々な方なんですが(でも喋り方めっちゃソフトという素敵なギャップ)、今までのフィエロの役者さんたちのイメージってどっちかっていうと細身でシュッとしてる方が多かったので、新鮮でした!でも初めの登場シーンなんてハマりすぎてて、さすがでした…!

今、エルファバ・グリンダ・フィエロを演じている主キャストが3名とも非白人なんですよね。やはり多様化が進んでるなぁと印象を受けました。

☆音楽
Wickedが長年愛される理由は、やはりその素晴らしい音楽にあるかと。

代表曲といえば、"Defying Gravity"。
直訳すると、”重力に逆らう"。
エメラルド・シティに蔓延る権力や縛りに疑問を感じたエルファバが、自分を解き放ち、
「今までは自分もリミットを受け入れてきた」
「でも自分の本能を信じる」
「誰にも私を引きずり降ろすことはできない」
と空へ舞い上がり、歌い上げる。第一幕の終わりにこれ以上なくふさわしい一曲です。初めてWickedを見る方は、このDefying Gravityの衝撃で、幕間は間違いなく放心状態になります。本当に。

そしてまぁ〜もう歌詞もいいんですよねぇ。
"Everyone deserves the chance to fly"
"If I'm flying solo, at least I'm flying free"

物語の中だけではなく、普段自分の日常で、窮屈さを感じていたり、
「もっと自分はやれるんじゃないか?」と一歩踏み出したいときに、自分自身を鼓舞してくれる曲です。

↑こちらはコンサートでのDefying Gravity

Wickedの音楽の素晴らしいところは、このDefying Gravityをはじめ、自分(=観客)の日常や考えに刺さるものが多く、気がつくとエルファバに自分を重ねてしまうんですよね。

そして全曲を紹介すると、すでに長い文章が更に歯止めがきかなくなるので…。笑
もう一曲だけ。


これも王道ですが…。“For Good"。
これは物語のクライマックスに、エルファバとグリンダがお互いに別れを告げるデュエットソング。

私は"Defying Gravity"以上にこの"For Good"が好きでして…。

大切な人に出会えたことへの素晴らしさと、その人への感謝の気持ちが歌われているのですが、その奇跡を、

Like a comet pulled from orbit as it passes the sun,
Like a stream that meets a boulder halfway through the wood.
Like a ship blown from its mooring by a wind off the sea.
Like a seed dropped by a sky bird in a distant wood.

このように美しい情景で例えている歌詞が素晴らしいなぁと思います。

この切なく、でもダイナミックな音楽が歌詞と相まって、グッとくるんですよね…。私、For Goodは「卒業式にピッタリな曲No1」だと勝手に思っています。←

↑ブロードウェイのオリジナルキャストであるIdina MenzelとKristin ChenowethによるFor Good。

…とまぁ、長々とダラダラと書いて参りましたが、Wickedは、音楽×ダンス×衣装・セットの豪華さ、これらのバランスが良いミュージカルだと思います。

興味がある方は、是非見に行って下さいね。

では。

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