サシャの秘密13-サイレント・ネオ-boy meets girl-
「レイラ、やめておくれ、サシャは生きておるのじゃ、死んでなんかおらん、ああ、ああ……」
ゲンバはこれ以上聞きたくないとばかりに、両耳を手でふさいだ。
「叔父様、これはあくまでも、も・し・ものことでございます。
ええ、サシャはきっと見つかりますとも!」
と、この姪は叔父をなぐさめているのか、おどしているのか、よくわからないことを言った。
さらに、突然手で目を覆うと涙声で、
「叔父様、私は本当にサシャが戻ってくることだけを毎晩、祈っているのですよ。サシャが死んでしまうなんて私には考えれません!」
と話した。しかし、頬からは涙は一粒も落ちていなかった。
「レイラ、おそろしいことだ。もはや我がオーウェン一族は、ワシとお前だけになってしまった。
レイラよ、こんなことは考えたくはないが…サシャが見つからず、ワシに何かあれば…お主が提督を…」
すると、レイラは待ってましたとばかりに嘘泣きをやめて叫んだ。
「いけませんわ、叔父様、そんなことを考えては! サシャはきっと、きっと戻ってくるのですから…けれども、本当に万が一、万が一の時は私しか、
叔父様のあとを継げる者はいないのですね…わかりました、私はまったく気が乗りませんけれど、もしもの時は叔父様とサシャの遺志を継ぐつもりですわ。ここにいる、御重臣のお二方がきっと証人になってくれることでしょう!」
ゲンバとレイラのやり取りを聞いていた二人の側近は、複雑な表情をしていた。レイラという女の評判は芳しくないのを知っているからだ。
しかし、もはや今のゲンバに論理的にものを伝えたり、説得することは難しかった。
「その通りじゃとも、レイラ、その時は頼んだぞ…」
レイラはその言葉を聞くと口元がわずかに歪み、笑みを隠すのに必死だった。なので、下を向きながら軽く膝をまげて早々に別れのあいさつすると、そそくさと叔父の前から姿を消したのだった。
つづく…
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