テディ・Dと実験機3-サイレント・ネオ-boy meets girl-
「もう一度だけいう。これは最終警告だ。はやくわたせ」
白影は拳銃の撃鉄を引き、不気味な金属音をカチャリと響かせた。
月明かりに照らされ、青く光った表情が恐ろしい。
「サシャ、もうだめだ…!」
オジャムがうなる。
しかし、サシャは叫んだ。
「大丈夫だよ!」
その時だった。
3
崖の下から轟音が響いたと思うと、白銀色の巨大な顔がぽっかりと二人の目の前に出現し、モノアイを赤く光らせたのだった。
それから、ゆっくりと赤い一つ目が左右に動いたかと思うと、猛烈な突風を下から吹かせながら、”実験機”と呼ばれるぶかっこうなCAが姿をあらわしたのだ。通常のCAは人騎などとも呼ばれ、二足歩行だが、実験機の脚部には長短無数のパイプ・ホースのような、曲がりくねった細い管がうねって、からまったり、交差したりしていた。研究所の職員たちはは、この実験機を「何とも奇妙な代物で、グロテスクなCA」と評していた。
そのCAに乗っているパイロットこそ、テディ・Dだったのである。
研究所から脱走したテディ・Dは、森の中に実験機を隠しており、勘が鋭い彼女は必要になると予知していて、取りに行っていたのである。
そして、やはり勘が鋭いサシャもまた、ここにテディ・Dが現れることを予測したのだ。そう、この2人こそ超感覚(SS)の持ち主だった。
実験機の全長は30mもあり(通常のCAは33m程度)、建物で言えば10階に相当する。オジャムとサシャは小人のような気分で、口を開けたまま巨人を見上げていた。
「良かった、間にあったわ!」
テディ・DはCAのスピーカーから安堵の声をあげると、オジャムとサシャが吹き飛ばされないように慎重に、ゆっくりと浮遊したCAをあやつり、2人と陸戦艇との間に降り立った。それから、前に倒れるように手をつくと、オジャムとサシャが戦闘に巻き込まれないように頭部にあるコクピットに招き入れた。
サイレント・ネオ-boy meets girl-(テディ・Dと実験機全10話・先行配信中)
BGM
-登場人物-
テディ・D:ゴスロリの格好をし、腕には9.8と数字をほり自死がんぼうがある少女。
オジャム:お飾りの提督をしていたが、父親をころされたあげく、砂漠に追放された。命からがら助かり、ゴサクの家で豚小屋などを掃除して糧を得ている。心優しい少年。
サシャ:誘拐船でオジャムと出会った6歳の女の子。勘が鋭く、ゴサクに気に入られている。その正体は…!?
ムサシ:地球(テラ)・ネオ東京出身の19歳の青年。愛機サイレント・ネオをあやつり、第5次地球・コロニー戦争において100機落としを達成、スーパーエースに認定された。しかし、戦う意味を見失い、月歌に放浪の旅に出る。
ソック:ムーンキングダム・斥候隊副隊長。ボーナスをなくしてしまい、恐妻トド子に家を追い出された悲しき中年男性。
マギー教授(おねえ)とみなみちゃん(アイドル):一年前に地球(テラ)から月歌に向けて出発したが、未だに到着せず。