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プロローグ4-4(シャギの野望)-サイレント・ネオ-boy meets girl-

シャギ党は春先からにわかに動きを活発化させていた。
カイバを謀略により手中におさめたシャギであったが、それだけでは満足しなかった。
むしろ、燃え盛る野望の炎に油を注ぐかのごとく、いっそう野心がむくむくと大きくなるばかりであった。

すでに、最大の政敵だったコンクリオン家は滅亡し、その長男などわずかな生き残りだけが、ムーンキングダムに亡命しているだけである(コンクリオン家の悲劇)。
もはやシャギに対抗できる勢力はカイバにはなく、シャギは独裁を敷き、好き放題にふるまっていた。
そして、シャギは心の奥に潜む復讐心がにわかに沸き立ち、重大な決断をしようとしていたのだった。

それは満月の夜だった。強い風に吹かれ、雲のきれはしが凄いスピードで流されていく。
私邸には参謀のマーバイム、客人のムドーが呼び寄せられた。

シャギはカイバの街が一望できる、5階建ての最上階のバルコニーに置かれた椅子に座っていた。
高級ワインをふるまい、自らも機嫌よく口に運んでいる。

「閣下、このような夜のお呼び出し、何か重要なことでもおあり、あそばせなさるか?」

マーバイムはふるまわれたワインをグラス半分ほど飲むと、すぐにきりだした。シャギに長年仕えているマーバイムであったが、未だにシャギのことはよくわからないことも多かった。

シャギを知るのは、シャギ10将と呼ばれる最古参のみの将軍だが、シャギの事になると彼らも一様に口が堅かった。

「マーバイム、貴様ならばよく覚えておるであろう。砂漠の砂に紛れながら、悪党をしていた日々のことを…」
「もちろんでございまする。あの頃は毎日の糧にも困る有様。ひどい生活でしたなあ」
「本当にそうだのう…しかし、今ではどうだ!?」
「はっ…閣下の知略才略さえわたり、シャギ様はカイバの提督になられました」
「ふふ…その通りよのう。カイバを一望して飲むワインはうまいのう」

シャギはまるで水をのむかのごとく、ワインをごくごく飲んでは注いで、注いでは飲んでを繰り返していた。

「マーバイム、だが、余はまだまだカイバの提督ごときでは満足しておらぬぞ」
「その通りでございます。閣下こそ、やがて月歌を統べる方にござりまする。だからこそ、我らシャギ党、命をかけて従っております」
「そうか、そうか…お前たちも余によう尽くしてくれておる」

シャギはいつになく上機嫌である。

一つは傍らに座り、優雅にワインを飲んでいるムドーを客将として迎えられたからだ。
シュトライツァー四天王の1人にして、北閥随一のパイロットの力を得られたことはシャギにとってあまりに大きいことであった(来襲シュトライツァー党!)。
シャギはだからこそ、ムドーには一目も二目も置いてへりくだり、「ムドー先生」と呼ぶほどであった。

「ムドー先生、カイバのワインはお口に合いまするかな? 先生ほどのお方なら、各地でうまい酒を飲んでいらっしゃることでしょう」

ムドーは軽く会釈すると、
「いや、シャギ殿。このようなうまい酒はなかなか飲めるものではござらぬ。しかし、私はほとんどの時間を戦場ですごしてござる。戦場で飲める酒はたかが知れております。この酒は格別ですな」
「ムドー殿にそういっていただければ、光栄でござる」

シャギは満足そうにいうと、またうまそうにワインを飲み干した。すかさず、マーバイムは相槌をうつ。

「まさに閣下のおっしゃる通りです。ムドー様を加えられたシャギ様は、まさに鬼に金棒でござる」
「マーバイム、口には気を付けい。このような優しい男をつかまえて、鬼とは。余は鬼ではないぞ、鬼ではないぞ!」
と言うと、3人そろって大笑いした。

「ところで、マーバイム…」

シャギは突然真面目な顔になり、立ち上がるとバルコニーの手するにてをついて、外を眺めながらいった。
つづく…

プロローグ:4-1 4-2 4-3

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樫の木庵のマボ

サイレント・ネオ-boy meets girl-

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