プロローグ4-2(ガスズの仕官)-サイレント・ネオ-boy meets girl-
「仕官ではございませぬ、客将として迎えていただきたい」
「ガスズ殿、現在、このシャギ陣営には各地から多くの人間が仕官を求めてやってきておるのだ。どういうこか、おわかりかな?」
「と申されると…?」
普通のものならばシャギに見下ろされてにらまれれば、生きた心地もせずに、おどおどと、おびえてしまうものである。
しかし、ガスズという男、そんなそぶりをみせないどころか、眼光鋭くシャギをにらみ返した。
「並みの腕のパイロットなど、はいてすてるほどいるということでござる。
客将を迎える必要などもはや不要なほど、多くのパイロットを仕官で受け入れておるのだ。
まあ、地球からわざわざやってきた心意気は買うが…一平卒から初めていただくならば雇ってもよいがのう…」
とシャギは適当にあしらう。
というのも、ガスズという若者の鋭い目を見ていると心が落ち着かず、不快な気持ちになったからである。
また、よくいる他の若者と同じように自信過剰で、大したものではないと、はなから決めつけていた。
「ほう、この俺を一平卒で雇うと…」
ガスズは立ち上がり、シャギを見据える。
周りにいる家臣たちはざわめきたった。
何の許しもなくいきなり立ち上がるのは、非常に不遜な態度だからだ。
それを見ると、眠そうにしていたシャギの顔色がさっとかわった。
シャギは自分を侮蔑するものを、決して許さない。
「ガスズと言ったな…歳はまだ20代そこらであろう。
いいか、よく聞くがよい若造。礼儀には気をつけろ、月歌で早死にしたくなかったらな…」
シャギは口調を変え、低いトーンで静かに言った。
家臣はわかっていた。これはシャギが怒る前触れであると…
獲物をとらえようとする獣が息をひそめて身を屈めるのと同じことなのだ。
だが、ガスズという男はただのバカなのか、あるいは豪胆の塊なのか、自信過剰の世間知らずなのか…
不遜な態度を改めるどころか、エスカレートさせ暴言をはいたのである。
「シャギと言ったな…歳は40過ぎのおっさんか…いいか、良く聞いておけ。
口のきき方は気を付けるべきだな。あと、その曇り切った腐った眼は、よく洗って見えるようにしておいた方がいい」
ガスズが言い終えた刹那だった。
一瞬で怒りの沸点に達したシャギが腰にさす愛刀に手をかける。
この愛刀で気に入らない人間の首を、いったい何百回、切り落としてきたかわからない。
しかし、居合の名人であるガスズはそれより早く腰から刀をぬいて、シャギの首元につきつけた。
0コンマ数秒の駆け引き……ガスズが勝った。
あまりの速さにシャギ党の連中は驚き慌て、ほとんどが身動きすらとれない。何人かはガスズを殺しにかかろうと一瞬動いたがすぐに固まり、椅子から転げ落ちる者までいた。
刀をつきつけられたシャギは額からたらりと汗を流し、手をかけていた帯刀を握るのをやめた。
「ほ、ほう…剣の腕はなかなかのものだ…だが、CAの腕はどうかな…」
「試してみるか、シャギのおっさん…」
つづく
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