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キャラクターデザインのヒミツ


先日アマチュアさん向けにキャラクターデザインの仕組みについてプレゼンする機会を頂きました。とても好評でしたので、一部資料を改変してアップです。

さて、早速ですが以下の質問について考えてみてください。

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とっても簡単な選択肢ですよね。でもこれ、キャラクターデザインにおいてとても重要なことなんです。



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理由は、この熊から発せられるメッセージを私たちが無意識のうちに受け取っているからです。

今回解説するのはキャラクターデザインのヒミツについてです。

キャラクターデザインとは

アニメ・映画・コンピュータゲームなどに登場する登場人物 (キャラクター)の外見やイメージをデザインすること。 登場人物の外見や伝えたいイメージを 「わかりやすく可視化 ( 記号化 ) する」 ことがキャラクターデザインです。

キャラクターデザインの3つのポイント

かわいいと思ってもらえる、キャラクターデザインを3つのポイントにまとめてみました。

1,形の心理学
2,頭身が与えるイメージ
3,ベビースキーマ

1,形の心理学

私たちが普段目にするキャラクターは基本的にこのような単純な形状から成り立っています。これらの形はそれぞれ異なる印象を見る人に与えることができます。

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実際に映画「モンスターズインク」のキャラクターで見てみましょう。(著作権の問題上サイトのURLのみ記載)

サリーはがっしりした体格で四角形の図形を用いて構成されていることがわかります。また、相方のマイクは丸の図形で構成されていますね。どちらも
ファーストコンタクトで見ている人にキャラクターのイメージを印象付けています。

2,頭身が与えるイメージ

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頭身とは、身長÷頭の直径がそのキャラの頭身になります。頭身が低い順から、親しさ、幼さ、デフォルメといった要素が強く、頭身が高いほうから強さ、大人、リアルといった要素が強くなります。
普通の大人は大体6~7等身程度です。等身が低いほど頭が大きく、顔を強く印象付けることができます。8等身になると頭もかなり小さくて、顔の印象よりも、体のたくましさや装備などに目が向くようになっています。

頭身は実際の人の成長に置き換えるとわかりやすいです。

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赤ちゃんのほうが頭が大きく等身が低く、大人のほうが体に対して頭が小さく等身が高くなります。先ほどの熊と赤ちゃんの等身は近いですね。つまり、私たちは無意識に赤ちゃんの身体的特徴の可愛らしさを、この熊に投影していると言えます。

赤ちゃんの身体的特徴の可愛らしさの投影 : ベビースキーマ

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ベビースキーマとは、幼い動物が持つ身体的特徴を指す言葉です。
対象に対するかわいい感情を喚起させる特徴とされています。
この赤ちゃんと大人の顔を記号化してみましょう。

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ベビースキーマの特徴がわかりやすくなります。
・赤ちゃんは大人よりも額が占める面積が広い。
・目は顔の中央よりやや下側に位置している。対して大人の目は顔の中央より上に位置する。
・大人は面長な顔に対して、赤ちゃんは全体的に丸みを帯びた形。
更に詳しい解説は下記Webにて公開されている論文に記載されています。

●かわいいものに対する反応とその効用

それぞれの特徴を最初の熊に当てはめてみました。

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ぱっとみでどちらの熊がかわいさが強いかわかりますね。
ベビースキーマが強いほうが可愛さが強く、ベビースキーマが弱いほうがより大人らしい印象になっているかと思います。
さて、デザインについてもう一歩踏み込んでみたいと思います。

2種類のデザインの仕方

デザインには2種類の方法があります。

1,足し算のデザイン 
2,引き算のデザイン

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足し算のデザインはその名の通り要素を足していくことによって、より強く見せたり、芸術品のような特別なものにみせることができます。
RPGゲームに置き換えるとわかりやすいですが、LV.1では単純な木の棒でTシャツ、ズボンだったのが、LV.20では剣や盾、マントの装備などを増やします。LV.50ではより複雑でごてごてした装備になることで、より強さや希少性を強調します。そのようにして、遊んでいる人に目に見える達成感を与える仕組みになっています。

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対して引き算のデザインですが、こちらはよりシンプルにしていくことで、親しみやすさをあたえます。更に、引き算のデザインにはよりデザインを洗練させていくといった重要な役割があります。

キャラクターデザインのヒミツ 応用編

さて、ここでさらに踏み込んで応用編です。
引き算のデザインがどう重要なのか、風ノ旅ビトというゲームのキャラクターデザインから紐解いていこうと思います。

風ノ旅ビトはオンライン上で他プレイヤーと出会い、ゴールに向かうまでひたすら進み続けるシンプルなゲームです。

風ノ旅ビト キャラクターデザインから引き算のデザインを考える

1枚目がプロトタイプ、2枚目が完成形のデザイン。↓のサイトより引用

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上記のデザイン画から、風ノ旅ビトはキャラクターデザインの作成途中で手や口をなくしたデザインに変更していることがわかります。更に年齢や性別、人種がわかる要素も一切引いてしまっています。

何故このようなデザインになったかと言うと、そこにはオンラインゲームならではの問題を解決したいという制作者の意図があります。

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オンラインで他プレイヤーといっしょに遊べるゲームをやったことがある人は分かると思うのですが、相手を攻撃したり、チャットで口論になったりとオンラインゲームではトラブルがつきものです。トラブルが起きないように、みんなが楽しく遊べる仕組みづくりをしたいと思っていました。

そこで制作人は心理学者に相談し、トラブルの起きない仕組みづくりに気が付きます。

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武器を持っていると、攻撃したくなる。言葉のやり取りができてしまうと、攻撃したくなる。では、これらの行動を制限してしまえばいいのでは?と思う方もいるかと思います。でも、人は「できそう」なのに「できない」とストレスを感じます。
むこうにおいしそうなごはんがあって、食べられそうなのに目の前に見えない壁があって進むことができないとものすごいストレスですよね。

そのためキャラクターがここまでシンプルなデザインにする必要があったのです。この経緯についてはGDC2013に制作人によって詳しく語られています。
▼『風ノ旅ビト』誕生秘話――人の感情を動かすゲームが生まれるまで【GDC2013】

この例からわかるように引き算のデザインには、プレイヤーの行動を変えさせる重要な役割があることがわかります。

まとめ

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少し踏み込んだお話になりましたが、まとめです。
デザインから無意識にメッセージを受け取っているということが伝わったでしょうか?自分の好きなキャラクターや映画など、何故それが好きなのか、その仕組みを知るとまた違った視点で大好きなものを楽しめるかと思います。

                             おわり

イラスト提供元:
かわいいフリー素材集 いらすとや


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