CASSHERN
鑑賞時の感想ツイートはこちら。
2004年の日本映画。1973~1974年に放送されたタツノコプロのテレビアニメ『新造人間キャシャーン』を原作に、CGを駆使して実写化されたSFアクション作品です。
監督は『GOEMON』の紀里谷和明。出演は、伊勢谷友介、麻生久美子、寺尾聰、樋口可南子、小日向文世、唐沢寿明、ほか。
キャシャーンがやらねば誰がやる!
本作『CASSHERN』のことを書くにあたって、わたしがまず最初にご紹介したいのは、こちら!
たった一つの命を捨てて
生まれ変わった不死身の身体
鉄の悪魔を叩いて砕く
キャシャーンがやらねば誰がやる!
納谷悟朗さんのオープニング・ナレーションと共に始まる、タツノコプロのヒーローアニメ『新造人間キャシャーン』です。
放送されたのは、1973年~1974年。当時、わたしは6~7歳。3つ年下の弟と一緒に放送を観ていたなぁ。懐かしい~!
もちろん主題歌も歌えますよ~♩
ひーびけ キャシャーン
たーたけ キャシャーン
くーだけ キャシャーン
(チャララララッチャ チャララララッチャ チャララララッチャッチャ)
うわさに聞こえた すごいヤツー
キーック! アタック! 電光パンチ!
生ーまーれ変わーった ふじみのかーらーだー♩
/
………… ハッ!
\
誰か止めて~!笑
・・・
タツノコ・アニメ『新造人間キャシャーン』についての解説はここでは省きますが、高度経済成長期という当時の時代背景を受けて、「公害」問題や「機械 vs 人間」などのテーマを盛り込んだ、シリアスで硬派な作風が特徴でした。もし興味がおありでしたら、ググってみてくださいね。
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ところで、上にご紹介した動画、ご覧になりましたでしょうか?
納谷悟朗さんのナレーションが渋くて格好いいですよねぇ! 納谷悟朗さんといえば、『ルパン三世』の「とっつぁん」こと、初代・銭形を演じた声優さんとしてお馴染みですね。
ディズニー好きのわたしにとっては、東京ディズニーランドのアトラクション「カリブの海賊」で、リニューアル前(*)の「トーキングスカル」の声を演じていらっしゃった方―― というイメージも大きいです。
その様子が、こちら♩
「やい、てめぇたち」と喋っているガイコツの声が納谷悟朗さんです。
*東京ディズニーランドの「カリブの海賊」は、2007年にリニューアル。映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』の世界観が取り入れられ、ジャック・スパロウなどのキャラクターが登場する新バージョンになりました。(新バージョンの「トーキングスカル」は神谷明さん)
映画とは関係なく、純粋に荒くれ者の海賊たちの世界を描いていた旧バージョンも、趣があって好きだったなぁ♩
ついでに言うと、最近のTDRのアトラクションは、2016年に終了したシーの「ストームライダー」しかり、キャラクターに直結しないものがどんどん終了してしまう傾向にあり、ちょっと寂しく感じています……。(運営側は、グッズ販売にも展開しやすい “キャラクター化” を推進する方針のようですね)
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いつものことながら、序盤から話が脱線してしまいました。笑
実写版の本作『CASSHERN』では、原作アニメ版『新造人間キャシャーン』でナレーションを担当していた納谷悟朗さんが、映画の冒頭で導入部のナレーションをやっていらっしゃいます。
これは、ちょっとアツい!
ただ、実写版で、あの名文句「キャシャーンがやらねば誰がやる」が聞けたかどうかは…… 残念ながら、覚えていないのです。ごめんなさい。あったかなぁ……? どうだったかなぁ……。
映画としての出来は……
『CASSHERN』を観た時に、わたしが「おっ♩」と思ったのは、(納谷悟朗さんを含め)ご覧のような豪華キャストと、(当時監督と結婚していた)宇多田ヒカルの主題歌。
残念ながら、この2点だけだったんですよねぇ。
[キャスト]
伊勢谷友介、麻生久美子、寺尾聰、樋口可南子、小日向文世、唐沢寿明、宮迫博之、佐田真由美、要潤、大滝秀治、西島秀俊、及川光博、三橋達也、寺島進、森口瑤子、鶴田真由、玉山鉄二、ほか。
率直に申し上げて、映画としての出来はあまり良くない、と思っています。
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ちなみに、原作アニメだけをご存じの方にお伝えしておきますと、原作アニメと実写版では、ストーリーも設定も大きく異なります。なので、“まったくの別物” としてご覧になった方が良いかと。(キャシャーンの相棒であるロボット犬「フレンダ―」も出てきません)
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鑑賞時の感想ツイートには、実はつづきがありまして――
まとめると、「評価できる点」と「イマイチだった点」はこんな感じ。
[評価できる点]
○ 出演陣が豪華
○ 映像は綺麗
○ 役者さんの演技が良い
○ 部分部分の短いシーンは良い
[イマイチだった点]
○ 全編にわたりフィルタをかけまくったような色合いで、疲れる
○ スチームパンク、サイバーゴシック、なテイスト(*後述)
○ CGがショボい……
○ アクションが、急に漫画みたいな表現になる
○ 話が冗長で、後半まで見続けるのがつらい
○ 紀里谷和明氏の作家性が強く出過ぎて、映画として楽しめない
○ 監督がやりたい要素ばかりを詰め込み過ぎて、まとまりがない
○ ラストは「エヴァンゲリオン最終回か!」笑
結構辛口なコメントになってしまいました。お許しを。
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つまるところ、
紀里谷和明氏は「映像作家」であって「映画監督」ではない。
――ということなのだと思います。
(あくまでも、「わたしは」そう「感じた」ということです。その一方で、原作アニメを知らない若い世代や、海外での本作に対する評価は、概ね高かったとも聞きます。)
「作家性」と「映画として楽しめる」ということ。
ここで、紀里谷和明さんの経歴を少しご紹介しておくと、10代の頃に単身アメリカに渡り、アート系のハイスクールや美大などで、デザイン/音楽/絵画/写真/建築などを学んでいらっしゃいます。
まず、バックグラウンドが美術系の方なんですよね。
その後、20代で音楽アーティストの写真やMV(ミュージックビデオ)を手掛けるようになり、本作『CASSHERN』が映画監督としてのデビュー作になりました。
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同じように、美術系のバックグラウンドを持つ映画監督は、たくさんいます。
スタンリー・キューブリックは写真雑誌のカメラマン出身だし、ティム・バートンやデヴィッド・フィンチャーはアニメーター出身。ミシェル・ゴンドリーもパリの芸術学校で学んでいます。
わたし自身も高校時代、美大への進学を目指していた時期がありまして、自分のことを「美術系」寄りの人間だと認識しています。
みなさんは「美術系予備校」ってご存じでしょうか? 美大の入試科目には「実技試験」というものがあります。内容は志望する学科によって異なりますが、デッサン/色彩構成/立体構成/油彩など。その技術を学ぶため、美大志望の人たちが通うのが「美術系予備校」です。
わたしも高1の頃から、美術系予備校の夏期講習や冬期講習に通っていました。(……が、デッサンの苦痛に耐えきれず挫折!(苦笑)。高3の時にあっさり進路を変えました)
予備校に通っていた頃、最もカルチャーショックだったのは、そこに集まっている若者たちの個性的な変わり者ぶり!(特に現役高校生より浪人生の方が顕著でした)
髪型や服装などのファッション、作品の作風、振る舞いや話し方、趣味嗜好まで、自分が周囲よりも “いかに「突き抜けた個性を持っている」か?” を競うような空気が漂っていました。極端に言えば、“平凡さは悪” くらいの勢いというか……。
当時は、そういう美術系独特の “アクの強い” 雰囲気に圧倒されましたね〜。美大進学をあきらめた理由は「わたしなんて、こんな人たちの中ではとてもとても……」と、自分の無力さを感じたから。
そんな背景も手伝って、「あ、この人にはなんとなく独特の雰囲気を感じるな……」と思っていると、後で「美大出身」とわかって「あー、やっぱり!」みたいなところがあるんです。(たぶん「美大あるある」笑)
何が言いたいのかというと、美術系バックグラウンドを持つクリエイターは基本的に「芸術家」。中でも、世に頭角を現すような人は「強烈な個性」や「独自の美意識」を持っている―― ということ。
その個性を「作家性」と呼ぶわけです。
ですが、クリエイター独自の作家性が炸裂するあまり、しばしば観る側を置き去りにしたまま “ひとりよがり” の方向に爆走しているような作品も中にはあるわけで――。
要は「クセが強い」。笑
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わたし、いろいろな映画を長年観てきて思うのですが、この「作家性」と「映画として楽しめる作品であること」は両立が難しく、両方を成立させるには絶妙なバランス感覚が必要なのだなぁ――と。
その点で言うと、わたしの大好きなスタンリー・キューブリックなどは、両立に成功している映画監督の筆頭ではないでしょうか。こちらの記事では、このように書いています。
高い芸術性を保ちながらも、ストーリー(起承転結)を持った「映画」という「コンテンツとして魅力的」で「面白い(楽しめる)」。
スチームパンク、サイバーゴス、ロシア構成主義
また、本作を特色づけているのが、スチームパンク(steampunk)、サイバーゴス(Cybergoth)、ロシア構成主義などを取り入れた、映像や衣装のテイストです。
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○ スチームパンク
SFのサブ・ジャンルのひとつ。現実世界よりも「蒸気機関」が著しく発展した世界――という設定がベース。イギリスのヴィクトリア朝時代をイメージしたファッションや真鍮製のガジェットを組み合わせたモチーフなどがよく用いられる。
映画の作品で言うなら、『ヒューゴの不思議な発明』の世界観とかかな。
Eテレの音楽教育番組『ムジカ・ピッコリーノ』なんて、モロにスチームパンクですね♩
Googleで "steampunk" を画像検索した結果は、こんな感じ。
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○ サイバーゴス
ファッションのジャンルのひとつ。クラブイベント(レイヴ)に通う若者達が個性を競うために用いるファションが発祥。近未来SF的/工業的なイメージのサイバー(Cyber)から派生し、黒を基調とする退廃的なゴシック(Gothic)ファッションの要素を加えたもの。
こちらはあまり馴染みがないので、ふんわりとしか理解できません。笑
Pinterest で検索してみると、こんなふう。(ひょえー!)
"cybergoth" の Google 画像検索結果は、こちら。
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○ ロシア構成主義
1910~1920年代のロシア(ソ連)で起こった芸術運動(絵画/彫刻/建築/写真)。実生活に役立つ芸術、社会的目的のための芸術を創造しようとした。ロシア革命(1917年)との関連も深く、プロパガンダ的な側面も。独特の色使いとシンプルな幾何学図形、タイポグラフィを組み合わせた力強いビジュアルが特徴。立体作品も多い。
アレクサンドル・ロトチェンコの作品
ウラジミール・タトリンの「第三インターナショナル記念塔」
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これらを踏まえて本作のワンシーンをご覧いただくと――
「ああ!」とお分かりいただけるのではないかと思います。
建物に掲げられた大きな広告には、大滝秀治さん演じる「上条将軍」(大亜細亜連邦共和国の国家元首、という設定)の顔と共に、ロシア文字のような表記も見えますね!
誰かの願いが叶うころ
本作の主題歌として使われている曲は、宇多田ヒカルの『誰かの願いが叶うころ』。紀里谷氏の当時の妻だった宇多田さんが起用され、話題になりました。MVはもちろん、紀里谷氏の作品。
MVは『CASSHERN』の悲劇的なイメージともリンクしていて、映画のキャストである、寺尾聰さん、樋口可南子さん、要潤さん、及川光博さんが出演しています。さすがの俳優陣、曲の雰囲気にぴったりの、良い表情をしていますね~!
物悲しい曲調。スモーキーな声質と震えるようなビブラートが持ち味の、憂いを含んだ宇多田ヒカルの歌声。本当に素敵な曲だなぁ、と思います♩
好きなので、わたしも歌ってみようとたまにカラオケで挑戦するのですが、宇多田ヒカルの曲は総じて歌うのが非常~に難しいっ!(音域の幅が広かったり、音程が取りづらいメロディーだったり……難易度高いです。涙)
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紀里谷氏は、結婚前から宇多田ヒカルの MVを多数手がけています。
『FINAL DISTANCE』、『traveling』、『SAKURAドロップス』といった、作家性の強く表れているもの――
『光』のように、被写体の自然な魅力を捉えた、ナチュラルなものなど。
楽曲の良さも相まって、印象的な作品が多いですよね。
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うーん。
やっぱり「映画監督」ではなくて、「映像作家」なんだよなぁ。
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2021.3.11[追記]
映画『CASSHERN』についてのわたしの感想はここに書いた通りですが、紀里谷和明さんご自身については、こちらの記事などで最近の活動の一端を知り、「あら、思ってたよりイイ人みたい?」と、ちょっと認識が変わりつつあります。
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