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クレアモントホテル

鑑賞時の感想ツイートはこちら。

2005年のイギリス/アメリカ映画。ロンドンの長期滞在型ホテルで暮らす老婦人を主人公に、偶然ひとりの青年と出逢い、交流を深めてゆく姿を描いた心あたたまるヒューマン・ドラマ作品です。

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原作は、イギリスの作家エリザベス・テイラー(往年の大女優「リズ」とは別人)の同名小説。あまりメジャーではないけれど、隠れた良作です。原題 "Mrs. Palfrey at the Claremont"。

優しい、現代の「おとぎ話」♩

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主な登場人物
〇 サラ・パルフリー(ジョーン・プロウライト
最愛の夫に先立たれた老婦人。娘に頼ることなく人生の晩年を自立して生活しようと、ロンドンの小ぢんまりした長期滞在型ホテル「クレアモント」へやって来る。愛称「ササ」。
〇 ルードヴィック(ルパート・フレンド
作家志望の好青年。ある日、街で困っていたサラを親切に助けたことから、彼女との交流が始まる。愛称「ルード」。

わたしは常々「この先、年を取ったら、願わくば "上品な老婦人" になりたいものだなぁ――」と、思っています。

たとえば、こぎれいに保たれた真っ白な髪、流行に左右されない質の良い服を着て、美しい言葉で話す。それでいて、ちょっとしたユーモアや茶目っ気も忘れない―― いいですよね~、そんなおばあちゃま。憧れます♩

本作の主人公ササは、まさにそんな感じ! 好感の持てるおばあちゃまなのです。

・・・

愛する夫を亡くしたササ。あまり折り合いの良くない娘に頼ることなく晩年を過ごそうと “長期滞在型ホテルで暮らす” という選択をします。

“理想の老後の過ごし方” について話す時って、もしかしたら、その人の価値観が一番よく表れるのかもしれませんね。

住む場所ひとつをとってみても、好みはいろいろ。暖かい土地が良いか、冷涼な土地か。便利な都会か、自然豊かな田舎か。人との交流の頻度や距離感は? 食事はどんなスタイル(自炊/外食)が良い? 何を持っていたくて、何を持っていたくない?――などなど。

ミニマリスト流行りの昨今ですが、“わが身ひとつでホテル暮らし” というササの選択は、究極の終活ライフスタイルなのでは?

カルテット! 人生のオペラハウス』も英国のシニア世代を描いた映画。その作中でも “引退した音楽家たちが暮らす老人ホーム” が出てきました。イギリスでは、裕福な層向けのそういう施設は珍しくないのかしら?

そんな晩年を選んだササは、潔い女性だなぁ、と思います。

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わたしだったら、親しい友人も少ないし、人づきあいは苦手、一番 “素の自分” でいられるのは家族(息子)といる時……という人間なので、老後は家族と過ごしたいな。

・・・

本作はひとりの女性の人生の最終章優しくあたたかく描いています

醜いところやつらいところにフォーカスするのではなく、美しい面を捉えようとしています。

主人公が偶然出逢う若者は、王子様のように親切な好青年だし、ファンタジックで出来過ぎているかもしれません。

けれど、そこがイイのです。
これは、現代の「おとぎ話」なのです。

おとぎ話を見せてくれます
人々の心に「こうありたい」という希望の明かりを灯してくれます。

ルパート・フレンドの好青年ぶりを愛でる映画♡

ササが街へ出掛けた折、偶然出逢った作家志望の青年、ルードヴィック(愛称:ルード)。『プライドと偏見』の Mr. ウィッカム役が印象的だった、ルパート・フレンドが演じています。

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わたし、本作を観終わって名前を調べるまで、ずっとオーランド・ブルームだと思っていて……。笑

下の写真が「オーリー」こと、オーランド・ブルーム。

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ほらほら。似てません? 似てますよね!?

でも、オーリーの方が、ちょっと優しげで甘い雰囲気かな。
ルパートは、もっと眉が立派で頬がシャープな感じ。

わたしと同じことを感じている人が、世の中にはたくさんいらっしゃるようで(笑)、「Rupert Friend」+「Orlando Bloom」でググると比較画像がこれでもかと出てきて面白いです。

ご覧の通り、どちらもイケメンであることに変わりはないですが♩笑

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このルパート演じる青年ルードが、とにかく優しくて素敵なのです!♡

通りすがりの見知らぬおばあちゃんに、こんなに親切に接してくれる若者が果たしているのでしょうか! 見目麗しいだけでなく、行動もイケメン! 爽やか! 礼儀正しい! 好青年の中の好青年

外出先で親切にしてもらったササは、お礼にルードをホテルの夕食へ招くのですが、詮索好きなホテルの長期滞在者たち(皆、シニア世代)は、ササが日頃自慢していた「孫」の「デズモンド」が来ると勝手に思い込んでしまいます。

ササがそんな事情を相談すると、ルードは「一晩だけ、デズモンドのふりをしましょう」と申し出てくれるのです。

他にも、文学好きという共通点があったり、通じ合うものを感じるササとルード。互いに良い影響を与え合い、交流が深まってゆきます。

この「恋愛でもない」「友情だけでもない」「家族という感覚とも、また別の」絶妙に程よい距離感が、とても上手に描かれているなぁ、と思いました。

二人の間には「敬意」があって、節度もきちんとわきまえているんですよね。こういう関係性が成り立つのは、年齢や性別こそ異なりつつも、双方が知性品性を持ち合わせている人物だからこそ。

個性豊かなホテルの面々

ササが新しい暮らしの場として選んだホテル「クレアモント」。そこには、同じような境遇の老紳士や老婦人たちが住んでいます。

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彼らが、みんな個性的。「ここでは “臨終禁止”!」なんていう、ウィットに富んだセリフも。笑

暇を持て余しているため、他人の動向に興味津々。新しくやって来たササなどは、恰好の的。

彼らとの可笑しなやりとりにも、注目してみてください。

別の名作への扉を開いてくれる

本作のセリフの中には、映画、文学、音楽の名前が、いくつか印象的に登場します。

〇『ハロルドとモード』(1971年)

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自殺願望の強い19歳の少年ハロルドと、自由に人生を謳歌する79歳の老女モードの恋を描いた、少しブラックなコメディ映画。今でもカルト的な人気を誇る作品だそうです。原題 "Harold and Maude"。

For All We Know(1934年)

ナット・キング・コールのジャズ曲。互いに惹かれ合っているけれど、たぶんもう二度と会わないのでしょう―― という切ない詞の歌です。
『ふたりの誓い』という邦題のついた、カーペンターズの同タイトル曲 "For All We Know" とは別物。

ルードから「好きな曲は?」と訊かれてササが答えたのが、この "For All We Know"。ルードは、ポロン、ポロン♩……と、ギターを弾きながら歌ってくれます。

わー! イケメンと二人きりでこんな時間を過ごしたら、思わず「惚れてまうやろー♡」ですよね♩笑

〇『逢いびき』(1945年)

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互いに配偶者がありながら、外出先で顔を合わせる度にだんだんと惹かれ合ってしまう男女。道ならぬ恋に戸惑う二人の出逢いと別れを描いた名作映画。原題 "Brief Encounter"。

ササの好きな映画として挙げられています。

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『ハロルドとモード』も、『逢いびき』も、わたし的にはとっても気になる~♩ 機会があれば、ぜひ観てみたいです!

他にも、ワーズワースの詩が出てきたり、映画の中にいろんな作品が散りばめられていて、新しい世界への扉を開いてくれるのもうれしい。

記事の冒頭にも書きましたが、もう一度。
本作『クレアモントホテル』は隠れた良作ですよ♩ おすすめします。


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