オーロラの彼方へ
鑑賞時の感想ツイートはこちら。
2000年のアメリカ映画。父と子が無線機を通じて交信し、過去と現在、30年の時を超えて「声のタイムトラベル」をしながら絆を深めてゆくファンタジー・サスペンス作品です。原題 "Frequency"。
出演は、『シン・レッド・ライン』、『パッション』のジェームズ・カヴィーゼル(現:ジム・カヴィーゼル)、『ライトスタッフ』、『僕のワンダフルライフ』のデニス・クエイド、ほか。監督は『真実の行方』のグレゴリー・ホブリット。
前半と後半でガラリと様相が変わる作品
本作は、ある親子の物語。「1969年」と 30年後の「1999年」を軸に、彼らに起きる出来事が描かれています。
主な登場人物
〇 フランク・サリヴァン(デニス・クエイド)
1969年のニューヨークで消防士として働いている。妻のジュリア、6歳の息子ジョンと三人暮らし。野球が大好き。趣味はアマチュア無線。愛煙家。
〇 ジョン・サリヴァン(ジム・カヴィーゼル)(ダニエル・ヘンソン(6歳))
フランクの息子。父からは「チビ隊長」(Little Chief)と呼ばれている。幼馴染のゴードとは親友。
〇 ジュリア・サリヴァン(エリザベス・ミッチェル)
ジョンの母。職業は看護師。夫と息子を愛する、良き妻であり良き母。夫婦共に働き者で、仕事にやりがいを感じている。
まずは「1969年」のサリヴァン一家から。主人公のジョンは6歳。父フランクは消防士、母ジュリアは看護師。両親とも忙しいながらも、お互いにプロフェッショナルとして尊敬し合い、幸せな生活を送っています。
――ところが、ある日、火災現場での任務中に父フランクが殉職。
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一方、その30年後である「1999年」では――
「チビ隊長」と呼ばれていたジョンも 36歳。NY市警の刑事になっていました。子どもの頃と同じ家で恋人と同棲していましたが、最近彼女が出て行ってしまったばかり。
母ジュリアは、別の住まいで暮らしながら、30年経った今も看護師を続けています。年齢を重ねてもなお、美しい……♡ お互い忙しい職業ながらも、息子のジョンとはいたわり合い、よく連絡を取り合う関係。
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そんな中、「1969年」と「1999年」のニューヨークでは、同じ気象現象が――。太陽フレアの影響による、オーロラが観測されていたのです。
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1999年。幼馴染ゴードが息子を連れてジョンの自宅へ遊びに来た際、物置の中から父の遺品である無線機を見つけます。
幼い頃は、父から「おもちゃじゃない」と、触らせてもらえなかった無線機――。懐かしさから触ってみると、一人の無線愛好家と交信が繋がりました。
会話しているうちに、無線機の向こうにいる相手が、30年前「1969年」の父だと気づくジョン。片や父のフランクも、最初は半信半疑ながら、成人した30年後の息子が交信相手だと理解します。
未来の息子から、自分が間もなく殉死すると知らされるフランク。父を死なせまいと、必死で訴えかけるジョン。
こうして、父と子の「声のタイムトラベル」を通じ、父の命を守ることができるのか!?――というのが、本作の前半部分。
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この前半の雰囲気、わたしはとても好きです♩
30年前に亡くなった父。今はもう会えず、声を聴くこともできない。当時幼かったジョンにとっては、父がどんな人物だったのかさえも、おぼろげな記憶しか残っていない――。
そんな父と、不思議ではあるけれど、無線を通じて語り合うことができる。しかも、自分はあれから成長していて、父が見ることのできなかった「30年分の自分」を話してあげることができる。
父と子の物語―― というと、他にも重松清の『流星ワゴン』を思い出します。心に深く染みる、あたたかい物語です。号泣必至。
父フランクが、また、とても良いパパなんですよね。
消防士というヒーロー的な職業。野球が好きで、息子とキャッチボールをしたり、野球選手になる夢を応援したり。休日には、仕事仲間たちと家族ぐるみでバーベキュー。息子の自転車の練習にも、熱心に付き合う――。
アメリカの典型的な “父性” の象徴のような、頼もしい父親像をデニス・クエイドが好演しています。
ママともラブラブ♡
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特にわたしがグッときたのは、大人になったジョンが、30年前の自分や母親と無線で会話をするシーン。
1969年にいる若き日のママや6歳の自分は、こちらのことを “パパの無線仲間の、どこかの「ジョン」” だと思っているのも微笑ましい。
わたしが6歳の頃の自分に声を掛けるとしたら、何て言葉を掛けるだろう……?
「不安になることもあるけれど、絶対に大丈夫だから安心してね」
「将来、結婚はするよ♩」(その後、離婚するけど。笑)
「子どもも一人産むよ。男の子だよ。とても優しい素敵な子だよ」
いえいえ、そんなネタバレ、つまらない! やめておきましょう。
「誰にどう思われようと、あなたはあなたらしく、好きなもの “だけ” を追いかけて生きてね」
かなぁ? ……いや。こんなことを言っても、6歳の子には意味がわからないですよね。だからきっと、余計なことは何も言えないと思います。
でも、無垢な6歳の自分。今のわたしの原点である幼い自分を、ただ、ただ、愛しく感じることでしょう。
そう思うと、なんだかとても感慨深い気持ちになります。
SF? ファンタジー? サスペンス?
ここまでお読みいただいてわかる通り、太陽フレアの活発化、ニューヨークでオーロラ発生、無線電波で過去の時間軸と未来の時間軸が交差――など、本作には “SFの要素” が盛り込まれています。
父の死をなんとか回避しようと、ジョンが過去の出来事に干渉してしまったために、タイムパラドックスも生じます。いわゆる「タイムトラベルもの」ですね。
「SF映画のサブジャンル」については、こちらの記事で少し触れています。
本作が他の「タイムトラベルもの」と違っていて面白いのは、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『ターミネーター』のように “未来の人物が過去へタイムトラベルしてあれこれする” のではなく、無線で過去と交信するという「声のタイムトラベル」であること!
30年前の父フランクと現在の息子ジョンが「同じ家」に住んでいて、「同じ無線機」を使っている、という設定も重要な点。
様々な伏線が30年という時間をまたいで回収されてゆく様は、クリストファー・ノーラン作品にも負けない見事さ! 脚本家トビー・エメリッヒに拍手! と言いたくなります。
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ハートウォーミングな親子のお話だった前半に続いて、後半は二転三転とストーリーが展開し、ある事件をめぐるサスペンスに様変わりします。
鑑賞時の感想ツイートには、こう書きました。
後半はサスペンスに様変わり。
面白いけど、ラストで無理矢理感にガッカリ。
ですが、タイムパラドックスによる効果を上手く使って、サスペンスの部分もとてもよく出来ているのです。面白いです。
今回 note の記事を書くにあたり、U-NEXT で再鑑賞してみましたが、「後半はサスペンス」と知っている状態で観たので普通に面白かったです!
ただ、初見時のわたしは、前半の “じーんとする親子愛” 部分でいたく感動し、全編そのムードで進行すると思っていた予測が裏切られた分、
美味しいケーキを食べて、うれしくなって2個目のケーキも期待していたら、ケーキじゃなくて美味しいラーメンが出てきた時の気持ち―― とでも申しましょうか。笑
いえ、ケーキもラーメンも、どちらも美味しいのですよ? でも、ここでラーメンがくるとは思わないじゃない? わたし、ラーメンなんて頼んでないわよ! みたいな。
今考えると、そういう戸惑いの表れが、あのツイートになったのかと。笑
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ここは、アーモンドグリコのごとく “1粒で2度美味しい” と捉えて楽しめるか、トーンがガラリと変わり過ぎて “がっかり” と感じるか、好みが分かれるところかもしれませんね。
――でも、映画って、あくまでも “その人が観て感じたことが、その人にとっての正解” なので。ね♩
わたしのように、2015年(初見時)と 2021年(2回目)で、作品への印象が変化することもありますし。逆に、そこが映画の面白さでもあります!♡
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ラストについても、“これで良かった” と納得するか、“もう少し違う終わり方が良かった” と感じるか、観る人によって違うのではないかしら。
わたしは「ちょっと強引に大団円に持ってゆき過ぎ~!」と感じました。
さて、あなたはどちらでしょうか?
『FARGO/ファーゴ』のあの人が
最後に、ちょっと雑談を。本作には、こちらの俳優さん(ショーン・ドイル)も出演しているのですが――
1969年のシーン。ちょっとスタローン似。
1999年のシーン。良い面構え。
調べてみたら、この方、私の大好きな『FARGO/ファーゴ』(*)にも出ていたのですね!
*『FARGO/ファーゴ』
コーエン兄弟による映画『ファーゴ』(FARGO)をベースに作られた、TVドラマシリーズ。TVドラマ版は、ノア・ホーリーによる脚本。シーズン1~シーズン4まである。
シーズン1の第1話「人喰いワニのジレンマ」(The Crocodile’s Dilemma)にゲスト出演しています。女性警官モリーが働く、ベミジー警察署の署長さん。(すぐ死んじゃうのですが……苦笑)
余談ですが、『FARGO』は映画版もドラマ版も超面白いので、大好き!
特に映画版(1996年)は、後続作の原点となる作品でもあり、おすすめです♡
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