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課題研究を前にして「<はじめての経営学>ビジネス・リサーチ」佐藤郁哉(@東洋経済新報社 )(発行年:2021年4月)を読んでみた。

課題研究を前にして「<はじめての経営学>ビジネス・リサーチ」佐藤郁哉(@東洋経済新報社 )(発行年:2021年4月)を読んでみた。

昨年2023年4月から社会人大学院で学び始めてもうすぐ1年が経とうとしています。大学受験のための予備校生だった1980年以来の長時間の学びの日々!若くないので1日にがんばっても8時間くらい!大体毎日、集中して学ぶのは6時間くらいというのが現状です!時々、仕事もしています。(笑)
 睡眠時間も意識して取るようになりました!脳が眠ることによって記憶が定着するなどのことが最近は普通に言われるようになりました。私の社会人の新人の頃は寝てない自慢をする先輩がたくさんいました。「俺、この3日全然寝てないんだよね!」みたいな。新人の学生から社会人になりたての私はそれを見て恐ろしくなりました。もともとショートスリーパーではない私。このTVの業界で生きて行けるのか?と思いました。しかし、実際はそうした方は編集室のソファで寝ていたり電車やタクシーの移動時間に寝ていたりされていました。「昨日さあ、徹夜なんだよね!」とおっしゃる先輩も、早朝まで編集作業や撮影などをされていたのは確かなのですが、その方々の出社は13時とかということも普通にありました。新人は9時半に来なさい!ということを新人時代は守らないといけなかったのですが、上司が来ないので午前中は資料を読んだり掃除をしたりして実作業は午後から始まるというのが普通にありました。今では、そのような個性的な業界の先輩たちもほぼ現役を退任されています。もはや「不適切にもほどがある」というようなことがなくなった時代となりました。
 来年度からはいよいよ課題研究という「論文」を書くという集大成の作業が始まります。その前に関学のIBAでは「課題研究基礎」を取って、研究調査とはどのように行うのか?ということを学びます。    
 
簡単に研究のプロセスを書くと

「課題を想定して→その課題に近いようなことが書かれている先行研究や文献を調査して→その文献から見えてくる事象と自分自身や会社も含めた世の中のことから、問題(課題)を導出し、そこから考えられる仮説(リーサーチクエスチョン)を立てて、その仮説は本当に有効か?どうか?ということを調査研究によって明らかにする作業を行います→その調査は定性的な観察やインタビューなどであったり、あるいはアンケートを取って質問表に答えてもらいそのサンプルデータから統計学の手法を使いながら有意性を検証していきます→そこから見えてくる「事象」からインプリケーション(気づき・含意と訳すそうです)を見つけ出し、それに対しての可能であれば解決手法までを想定する→最後に研究なので引用文献や参考文献を記す。」

というものが「課題研究」です。これが本格的なものになると研究論文ということになっていくそうです!私たちはこの課題研究を通して社会人としても、これからのいろんな課題に向けて同じようなアプローチで探索していくことでヤマカンで行っていたかも知れないことの確率を上げることが出来るという作業が出来るようになります!ヤマカンで数十億を無駄にしたということではなく、ちゃんと統計的なリサーチなどを踏まえた上で確率50%だから、やってみる、損金がここまだ出たら撤退する。というようなことが計画出来るようになるということです!もちろん、会社の上層部には今までの経験第一主義という方もおられるでしょう!
 でもその経験+統計的な手法で確率を上げていき、最後はアーティスティックなセンスを持って事業を行っていく、という三本柱がこれからの経営には大切になってくるのではないでしょうか?適切な統計を取ることがいまは企業にとってはコストではなく投資ではないでしょうか?人財育成と共にこれからの企業はこの両輪を追加して「人財」「統計」「経験」の三輪で走っていくことが求められて来るのではないでしょうか?本書にはそういうような意味のことが書かれているのだ!と私は理解しました。
 
本書のことはIBAのO先生の課題研究基礎の参考文献のところに書かれていました。O先生の薦める参考図書はどれを読んでも面白い。そして読みやすいものを選んでくれています。

 私は、カリキュラムスケジュールなどが私の予定と合ったY先生の課題研究基礎を取りました。ものすごい勢いと情報量で授業が行われるので初めて学ぶことは翌日以降の復習や講義のビデオを見返したりしてなんとかかんとか理解しようとしました。KHCoderで分析とかSPSSで分析も初めて行いました。こうしたソフトを使用するのはマニュアルを見ながらやれば何とかなります!それよりも大切なのは「事象」や「課題」に対してどう「問い」を立てるのか?ということ。そしてそこから出て来たインタビューなどからの「テキストデータ」や「定量的な質問表からのデータ」などをどう分析してどう読み解くか?ということの方が大切だ!ということでした。そのためにPCソフトのテクノロジーやAIに頼るのは省時間という意味でも大賛成です!  

 しかし、考えるということは「人間」だから出来る事。AIに向かって壁打ちは出来るのですが選択するのはまさに人間の行為、このアーティスティックな部分を助けてくれるのは「教養」「一般教養」であるのだな!ということを学校で学んでさらに確信に近いようなものがありました。そして、同時に、やはり一人で考えるのには限界があるということも同様です。どういう座組でどのように課題を解決するかなどのことは私たちがこれから毎度直面する最大の課題となっていくのではないでしょうか?あとは生成AIやPCソフトにやってもらえればいい!という時代です!

 本書の作者の佐藤郁哉さんの文章のうまさに舌を巻きました。この先生は現在同志社大学商学部におられるそうです!生まれは1955年なので、私より7歳上ですから現在68歳か69歳ではないでしょうか?この御年とは思えない現代的でPOPな文体。学部生を対象にしてわかりやすく書こうとされていたのかと思いますが、すいすいと書かれたことが頭に入って来ます。そして、本書の文脈が同時に研究と言う「論理的で科学的」であるという前提が微動だにしていないので常にそれらのことを意識して読むことになります!しかも多くの方にわかりやすく語るためにより多くのページを使っていろんな角度から研究をどのように行うのか?についてていねいに書かれています。この多くの文章を駆使することで、一般の教科書などにあるようなポイントだけ書かれていて、その物事の本質が分かりにくい、ということがないようにされているのではないでしょうか?なので、わからなかったところをもう一度文章を通して読むとわかるようになります。

 私が大学4年生だった1984年(ジョージオーウェルの「1984」と同じ年ですね、しかもアップルからマッキントッシュが登場した年。あのCMは今も歴史的に貴重ですね!)

卒業論文という体で書いたものはまったく課題研究の論文などではなかったことが良くわかりました。卒論の題名は「糸井重里と彼をめぐるメディア状況の変化について」というもの。大宅文庫で雑誌などの記事を大量にコピーして、著書と、雑誌などのインタビューを読んで、複層的に糸井重里さんのことが分かる、というちょっと長文の(400字詰め原稿用紙で100枚以上だけが決められていました。)糸井さんの紹介記事だったのです!今なら何故、その時代にメディア状況が変わったのか?糸井さんのような方が登場してサブカル文化が何故、隆盛して行ったのか?みたいなところまで考えればよかったと今となっては思います。
サブカル文化に関しては故、宮沢章夫先生がNHKのETVで放送した「日本戦後サブカルチャー史」をおススメします!


 本作では研究に大切な「課題を検証する」「問いを立てる」そのためにはどうすればいいのか?どう考えればいいのか?そして科学的・論理的にそれを調査(リサーチ)するにはどうすればいいのか?という根源的なことが書かれています。最初に「課題研究」て何だろう?「論文の作成」って何だろう?などと感じた方が最初に読むのにとてもいいテキストではないでしょうか?
そして余談ですがこの佐藤先生は「エスノグラフィー」としての研究をされていてそれが著書になっています。暴走族の集団の中に自ら入って研究をした「暴走族のエスノグラフィー」(@新曜社)

を書かれていて以前本書を読んでこんな研究者がいるんや、と驚愕したことを思い出しました。

 最後に本書の中で印象に残った個所を引用させていただきます!
P214 「無計画的な『アンケート調査』の結末
短時間の「ブレーンストーミング」程度の議論で出てきた項目を中心にして質問表を作成して一連の作業が始まったりします。このようにして、いわば「出たとこ勝負」で調査を始めてしまった場合に生じがちなのが、手元に回答が記入された質問表の束―インターネット調査の場合はデータファイルの山―が集まってしまった後で、それをどのように処理していけばよいか見当もつかずに困り果ててしまう、といった事態です。苦しまぎれに出てくるのが、とりあえず質問表に盛り込まれた個々の項目について基本統計量(平均、分散、パーセントなど)を計算してみたり、幾つかの質問項目の回答データに関するクロス集計の結果を出してお茶を濁してしまう、というやり方です。(以上)

まさに上記のようなことを3週間の科目履修の中で経験したのでした。

 そしてP273に書かれていた
「パズルのピースを埋めていくー標本調査のアートとサイエンス」の項で
統計的事例研究を的確な形で実施していくためには、確率論や統計学などをはじめとする「サイエンス」に関する知識と技術だけでなく「アート」としての素養が要求されるのです。(以上)
と書かれてあり経営学の書籍の中でこのように「アート」に関して言及したものが割とたくさんあると言うことに私の好奇心がとても刺激されたのです!





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