見出し画像

クリストファー・ノーラン監督の最新作「オッペンハイマー」2023年米国(@TOHOシネマズ日比谷)を見て来ました!

「オッペンハイマー」2023年米国(@TOHOシネマズ日比谷)

脚本・監督:クリストファー・ノーラン。ノーランは本作品でもプロデューサーを兼ねている。プロデューサーをやることで作品の内容に自らが介入でき理想的な制作環境が構築できると考えてのことなんだろう!ノーランと言う才能を世界が認めたことで、こうした創作の自由が増えていく。そうして自らの手で自由を獲得できるというのが米国の素敵なところ。もちろん米国は競争や淘汰は激しいが自由なところはいつも感心させられる。ノーラン自身も元々英国人だったが、どういう理由で米国に移住したのだろう?ロバート・オッペンハイマーという理論物理学者が国家から依頼されてロスアラモスでトリニティ計画を実行し、原爆の爆破実験に成功し、その直後に広島と長崎に実際に原爆が投下された。戦勝で浮き立つ米国とオッペンハイマーを賞賛する世間の人々。そして同時に大量破壊兵器を開発してしまい、多くの人類が犠牲になっていったという事実も突きつけられる。その葛藤の中で孤独を抱え生きづらさが増え、生きていることが幸せと感じられなくなってしまう!ということがこうした方々には起きるのだ!ということを冷徹なまなざしで描写した作品。こんな難解な作品に多大な予算を投入し、ものすごいセットを作り、VFXに頼らずIMAXフィルムで撮影するという信念を持った監督の作品がこうして現実的に出来上がるというのは、やはりノーランのこれまでの功績あってのことだろう!ノーランの過去の作品「インターステラー」などに代表される、高度な理論物理学の世界が本作でも展開される。相対性理論と量子力学。これらの知見が原子力の兵器を生むこととなる。ノーランは研究者に対するレスペクトがあるのだろう!理論を発見してそこからイノベーティブなものが生み出されるということ。このプロセスはまさに魔法の箱でもある映画製作の世界そのものと言えるのかもしれない。そしてデジタル時代にフィルムにこだわり、しかも最高度の映像を写し取ることが出来るIMAXフィルムを回して切り取っていく。取り回しすら大変な機材を使って一期一会の世界を切り取ることはまさにこうこで描かれたトリニティ計画の実験と通底するものがあるのではないか?

本作はユニバーサルピクチャーズでの製作となっている。ノーランと言えばワーナーブラザーズというイメージがあったのだが?いったい何があったのだろう?理論物理学者として世界に賞賛されそうして圧倒的な孤独の中で生きていったもう一人の先輩物理学者アインシュタインがこの映画の中で大きな役割を果たしている。またアインシュタインも、オッペンハイマーもユダヤ人であり、第二次大戦以にはドイツでユダヤ人の大量虐殺が行われる。そうした様々な要素が複雑に絡み合い、その複雑さをそのまま描き出そうとしている。オッペンハイマーの人生はは映画界に置きかえるとクリストファー・ノーランの苦悩や人生観などにも通底しているものがあるのではないだろうか?そのような、共感があってこそなのか?どうかわからないが。こうした映画が商業映画の体裁をとって公開されるのではないだろうか?まさにアートフィルムの粋と言っていいような造り。米国アカデミー会員たちは、本作を作品賞や監督賞に選び出し、映画に対する見識の高さを証明してくれている。日比谷のTOHOシネマズも月曜日の昼の上映にもかかわらずかなりのお客様が入っており私たちの民度の高さがこうしたカタチで描かれているのではないだろうか?被爆者や原爆投下の世界を具体的に描き出していないという批判もあるらしい。しかし、この映画の中には爆風や被ばくで皮膚が剥がれたり、高熱で一瞬で炭化してしまった人間が描かれている。人間の想像力をきちんと信じているからこそ、こうした表現でいいという判断になったのではないか?人間はその一瞬から大きなイメージを想像できる!それを信じて創作するという胆力が創作者には問われているのではないだろうか?そういう意味でも米億アカデミー会員のこの数年にリテラシーの高さに感心する。評価も変化して、その時代そのものがそこには含まれているのではないだろうか?また映画館で見ると音響効果の体験にも感動するだろう。音楽は、ルドウィグ・ゴランソン。3時間の長尺なので事前にトイレに行き、水分摂取は控えめにすることをおススメする。上演時間180分。

この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?