見出し画像

いつか記憶からこぼれおちるとしても - 江國香織

敬愛する作家、江國香織さんの著書 - いつか記憶からこぼれおちるとしても

中学2年生のころ、初めて江國香織さんの本に出会った。
元々読書が好きだった私は、母の影響で赤川次郎やアガサクリスティなどミステリー小説を中心に読んでいたが、たまにはミステリー以外も読んでみよう、と思って本屋さんで適当に手に取ったのがきっかけだった。

本書は、10人の女子高生の日常と、日常に隠れた彼女たちの秘密や幸福、抱えきれない孤独が織り混ざった、とても繊細な短編集である。
いつか記憶からこぼれおちるだろう日常、でもふとしたときに思い出すような出来事たち。

今までそれなりに色んな作家さんの本を読んできたけれど、「天才」という言葉を使いたくなるのは江國さんである。(もちろん他にも大好きな作家さんはたくさんいる)

毎日生きている中で、全ての感情を言葉にできるわけではない。
江國さんは、そういう「言葉にできない感情」を表現するのが最高に上手だと思う。言葉のセンスが上品なのに身近で、ちょっとの焦燥感を含んでいて、共感せずにいられない。
自分でもわからずモヤモヤしたり、心に鬱憤がたまったときに江國さんの本を読むと、心がスーッと浄化される。


ミステリーや時代物も大好きだけど、心がしんどいときだと中々重くて入り込めないので、そんなときは江國さんのやわらかい言葉たちに包み込んでもらうことにしている。

忙しない毎日にすこし疲れているひとにぜひおすすめな1冊です。


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?