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『胃炎の神様』

神様と呼ばれている、人型の
生物なのかどうかも分からない“像”が
真向かいに座り、お茶を啜っている

“像”は透けてはいないから
きっとお茶は
胃の部分へ流れていると思われた

何故ここに居るのか
訊ねてみれば
「ストレス性の胃炎で苦しいんだ。」
と、少し俯いて
嘆くようにこぼした

「胃薬ありますけど飲みますか?」

「有り難う。
 それでは一回分だけ頂戴出来るか。」

わたしは薬箱から胃薬を探して
水を注いだグラスと一緒に渡した
“像”は薬を飲み
ふぅー、っと深い息を吐いた

「ところで君はいま、幸せか?」
“像”が突然に妙な事を訊いてきた

「???・・・急になんですか?」

「君は、
 幸せを感じられる心をお持ちか?」

「・・・幸せだなぁって感じる事は、
 たまにありますけど。」

「そうか。それならば良い。
 感謝を忘れてはならないよ。
 全ての命に。森羅万象に。」

「な、なんなんですか・・・。
 感謝の気持ちは忘れたりしませんよ。
 それより、あなたは何故ここに居るのか
 教えてくださいよ!」


天井がぼんやりと見えている
カーテンの隙間から
明るい陽が射していて
朝なのだと気づいた

わたしは、目が覚めた



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