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父からのバトン

私の父は少し、いや、結構変わり者である。
端的に言うとコミュ障、頑固、オタク。

幼少期に父と話した記憶はほとんどない。
一日の会話が
私「おかえり」
父「おう」
だけ。
という日が大半であり、何か記憶に残るやり取りといえば、小さい頃に私が妹に怪我をさせたことでひどく怒られたということくらいである。

私は三姉妹なのだが、今で言うワンオペで母は頑張っていた。父が家事をしているところや、母に感謝を伝えているところはほとんど見たことがなく、結婚相手は反面教師で探そうと心に決めていた。

時は流れて私が結婚・出産し、二女も昨年結婚したことが影響したのか、父は近年嘘みたいに丸くなってきた。

正月に実家に帰ったときには
「あきちゃん(私の娘)、何食べたい〜?」などと嬉しそうに話しかけ、おままごとの相手までしているではないか。
ちなみに私は幼少期、父に名前を呼ばれた記憶すらほとんどない。

親族で夕食を終えていい感じに酔った父が、コンビニにアイスを買いに行こう!と私を誘ってきた。
どういう風の吹き回しや、と思いながらついていくと、
「最近は楽しくやってるんか?」と近況を心配され
「俺は来年定年やから肩の荷が下りる」
「お母さんのことを頼む」
と言われた。

突然の発言にびっくりして
「え、お父さんやばい病気なん?死ぬん?」と聞いてしまったが、幸いやばい病気ではないらしい。
おそらく平均寿命的に父が先に逝くであろうと考え、長女の私になにかあったときは頼むと言いたかったらしい。

今までほとんど会話したことがなかったような父がいきなり、母を頼む、なんて言うものだから本当にびっくりしたけど、
口下手な父なりに家族への愛を言葉にしてくれたんだなと思って、なんだかじーんとしてしまった。

せっかくいい関係になってきたことだし、父にはまだまだ長生きしてほしい。
まもなく定年を迎える父になにかお祝いしようと、妹たちと計画するのが楽しみである。

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