見出し画像

国外に出た人も当たり前のように同胞だと思っているアイルランド(人)

今日はアイルランドはダブリンの中心部にある EPICミュージアムについて書いてみようと思います。

EPIC というのは愛称で、正式名称は "The Irish Emigration Museum" です。つまりアイルランドから移民として外へ出て行った人々について綴られたミュージアムなのです。
では、EPIC が何かというと、本来の意味合いと兼ね合わせて、 Every Person Is Connected の頭文字をとったものだそう。この件からだけでも分かるように、地球上に住むすべてのアイルランド人に焦点を当てたミュージアムとなっています。

そこに行って感じたことは、アイルランド人って、アイルランド政府って、地球上のあらゆる場所に住む自国民(やそのルーツを持つ人)のことを大切に思っているのだなぁ、ということ。

1845年から数年にわたって起きたジャガイモ飢饉の際には、年に25万人もの人がアイルランドの地を離れたのだと言われています。それらの人々がどのような経路で世界中のどの地域に散っていったのかを、美しいグラフィック映像で分かりやすく説明しています。小学生半ばの年代ならば十分惹きつけられて学べる内容でしょう。2016年に開かれた新しいミュージアムだけあり、デジタルの利点を活かした作りになっています。
世界各国にアイルランドにルーツを持つ人々が移住し、その人達とアイルランドに残っている人達が、お互いのことを尊重しあっているということが感じ取れました。
一番酷かったジャガイモ飢饉から150年余り経った今でも、アイルランド人と話していると Famine (ジャガイモ飢饉)に関する話を聞くことがありますし、従妹や又従妹や、さらに先でつながっている親戚の誰それが、どこそこの国に居て、その家族構成がどうなっているのか、、などという話もよく耳にします。

日本で、1845年と言ったら江戸時代。今の日本で江戸時代の話をする人はなかなかお目にかからないのでは(いや、京都にはいらっしゃってもおかしくないかな??)。
それくらい先までの自分の親戚関係を遡れますか?(私は無理)
ブラジル始めいろいろな国へ移民で行った人々の事を同胞だという実感はありますか?
国際結婚されて海外に住まわれている方やそのご家族の事は?

突き詰めて考えてみると、アイルランドで「移民」という言葉からうける雰囲気と、日本で受ける雰囲気は随分と違っている、(という事はここに住み始めた直後から感じたことですが、さらに)様々な感情が湧きあがてきました。

日本では、近代史、国民、国の在りようについての展示は、タブー視されているように思います。美術館は数あれど、国全体の歴史に関する博物館が、今、思いつきません。もし、あるのなら、次に一時帰国したときに行ってみたいです。
私はどこかの国に旅行に行くと、その国の歴史をまとめた博物館に行き、その国のことざっくりと見ることが多いです。隣国との戦争や内戦の話も、淡々と展示されています。特に歴史好きでもないのですが、ガイドブック等ではお勧めトップ10の中に入っていることが多いですから、何となく立ち寄るのです。
日本人的な感覚でその展示を見ると、隣国との戦争の話題をこのように大々的に展示して関係悪化しないのか、と余計なことが気になりますが、多分、相手国にも相手国の視点で綴った歴史が展示されているからお互い様なのでしょうね。
日本では、外国の方が日本に観光に来て、日本の歴史を知る場所はどこなのでしょう?

戦争が起きていることにも後押しされて、今になって歴史に興味が出てきました。中学高校時代に、もう少し真面目に歴史を勉強しておけばよかった。でも、私は人の名前を覚えるのが苦手で、それだけでも敷居が高かったのです。今なら、受験勉強に関係ない別の学び方ができる気がします(笑)。


以下、よもやま話です。

EPICミュージアムの展示はどれも面白く体験できたのですが、一点だけ、残念だったものがあります。ある展示物で「いらっしゃい」という言葉を多言語で表現していたのですが、残念ながら日本語表記はありませんでした。目につくのは中国語ばかり。ヨーロッパ人からすれば、日本語も中国語も韓国語も同じようなものなのかもしれませんけれども、ちょっと残念。オーストリアはじめ大陸側のヨーロッパの国々で美術館に行った時には、日本語の表記も散見されたので、最近は日本のパワーが落ちてきている表れなのかな、とうがった見方をしてしまいました。

ここまでお読みくださりありがとうございました。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?