なぜ院進したのか?のおはなし

表題にもありますが、4月から大学院に進学しまして、大学院生として日々研究に追われています。以前noteで受験期の辛かったことを語っていたのが懐かしい。先日、自分の担当教員ではない先生に なぜ大学院に進学しようと思ったの?と質問され、院進を決めたときの記憶がスッと蘇ったので記憶が覚めないうちに記録しておく。

1.なぜ文芸大なのか

今、私は静岡県浜松市にある静岡文化芸術大学大学院文化政策研究科(以下:文芸大)の院生です。文芸大に進学したと言うと、みんなこぞって「地元に帰ったんだね!」と言うけれど、それは断じて違うのだ。そう言われるのがなんかとても嫌で、入学が決まったときに公開しなかった。文芸大を志望した理由としては大きく3つありまして、① 日本で初めて文化政策学部ができた大学 ②卒論執筆中に出会った本の影響 ③日本で初めてのフェアトレード大学 であるから。

①日本に精通している人文科学系の学術の中でも、文化政策は未だマイナーで、新しい学問と言われている。戦時中、文化の力によって国民を統一させようとする政策を文化政策と呼んでいた影響で文化政策という言葉を拒んでいたという話もあるが、とにかく文化芸術領域の経営・政策が重視され、アートマネジメントという言葉が流行り始めたのが1990年代ごろ。いち早くアートマネジメントの人材教育を始めたのが文芸大で2000年に誕生した。さらにアートマネジメント教育の国際組織である芸術経営教育者協会(AAAE)の正会員として、国際基準に沿ったカリキュラムを提供し、研究機関としてもアートマネジメントの日本における拠点として実績を積み重ねている。そういうわけで、やはり日本のアートマネジメント・文化経済や経営・公共政策などのプロフェッショナルの略歴を見ると必ず文芸大に籍を置いている。

②極め付けは卒論執筆時に読んだ『アートマネジメント概論』という書籍であるが、日本のアートマネジメントについて網羅されていて、この著者からアートマネジメントを学びたいと思って、大学を決めた。そして見事、この執筆者の研究室に入ることができた。もしこの先生が九州だったら九州に行ってたかもしれない。北海道だったら北海道に行ってたかもしれない。大学院を決めるってそういうことだと思ってる。でも私はラッキーなことに文芸大だった。

③学部時代は、青山学院大学総合文化政策学部に所属していたが、エクレシア(キリスト教推薦会)の顧問で高校生の時に入学面接をしてくださった先生がフェアトレードに尽力されていて、非常に縁を感じたから。私自身もフェアトレードには興味があって(というか大いに賛成、拡散していきたい)基本的にはフェアトレードのコーヒーしか飲まない。一方文芸大もフェアトレードに力を入れていて、青山学院よりも先に、日本で初めてのフェアトレード大学に認定されている。そういった縁も、結果論だが感じられる。

2.どういった研究をなぜしてるのか

先程も述べたように、アートマネジメントに精通したプロフェッショナルが揃っているのでアートマネジメントに関する研究をしているのだろうと想像がつくかもしれない。確かに私はどちらかといえばアートマネジメントだが文化政策研究科という研究科名なので、様々な文化に纏わる研究をされている方がいる。私の研究とは到底離れた東南アジアのテロリズムについて、バリの民族芸能など多種多様な研究テーマを持つ同期に恵まれてとても楽しい。未知の知識を得ることができるのも大学院の魅力である。そして、私が具体的にどんな研究をしているのか、それは、「身体的パフォーマンスを伴う舞台芸術分野の持続可能な創造活動をするための方策」を導き出すことである。身体的パフォーマンスは、英語で言うとパフォーミングアーツ、役者やダンサーなどを指し、主に無期限の雇用関係を持っていないフリーランスや業務提携契約をしている事務所所属の表現者を対象としている。もともと私自身が舞台に立つ人間で(今も辞めたわけではないが)現場に入るたびに日本の文化芸術分野の労働環境は杜撰で脆弱だと思ってきた。表現者というのは、心根が優しいのか、そもそも欲がないのか不明だが、金銭的報酬+創作満足報酬(心の報酬)と二重報酬があるのでお金に対して執着心がないという研究データがある。また昔からの慣習がどうか分からないが、口約束契約や契約なしで物事が進んでしまうことも多くトラブルが絶えない。こうした状況を変えられないかと思い、現状把握と解決策解明を求め研究をすることに決めた。綺麗事かもしれないが、本当に文化芸術を愛しているので、従事する人を守りたい、そんな一心で研究に励んでいる。

3.研究とは別の進学理由

上記にあるように、自分の研究テーマも明確でありきちんした進学理由がある。しかし、比較的に現場重視の研究テーマなら勤めながらの方が効果的なのでは?と思うかもしれない。なので、テーマとは別にある進学理由について述べることとする。まず1つ目に、現場視点と学術的視点の両方を兼ね備えたアートマネージャー人材が非常に少ないと感じているから。現場のプロフェッショナルにも専門家にも両方良い点がある。しかし、判断の中で経験から培われたセンスで対抗するのか理論的に対抗するのか、現場の中でしばしば議論されることもある。また、劇場の館長や、文化芸術領域の民間企業のトップは未だに高学歴でやり手の経営者であるという事実も拭えない。その人たちを納得させるにはやはり学歴と専門知識が必要だと考えている。つまり、肩書きに説得力を持たせるために大学院に進学したと言っても過言ではない。現代の日本社会の構造に、外から攻めていくタイプではなく、内側からじわじわ攻めて、対抗していくつもりである。2つ目に女性であるということである。1つ目の意見にも繋がるが、日本においての男女格差は、残念ながら進歩の一歩が小さい。私が大の大人になるまでに男女が同等になるなんて思えない。そいうわけで女性が強くある(見せる)ために理論武装を味方にしておきたいと思ったからだ。

おわりに

長々と私が院進した理由を述べてきた。これが正しいわけではないし、正解かもわからない。研究が辛くてうろたえている中、学部の同期は仕事をしているんだと思うと、自分は一体何をやっているんだと分からなくなってしまうこともある。今まで表現者としてやってきたからこそ見出すことのできたこの課題をアカデミックな視点でどう解決することができるのか、正直自分の研究にとてもワクワクしている。今までお世話になった人たちに、もうちょっと待っててね!もうちょっとしたらよりよい環境の中で創作活動ができるからね!と言いたい。なので待っててください。文化芸術分野で活躍する人々に敬意を込めて、研究を進めて参ります。

最後まで読んでくださりありがとうございました!

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