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異世界転生-男の娘2/僕とリリーの奇妙な関係 7-9


7 帰り道のトリップ


「タマタマを残されるのと、両方取られるのってどっちがきついんでしょうね」
 任務完了の帰り道、ケンタがそんなことを言いだした。
 ケンタが右肩に担いでいる革袋には、12人の山賊達の肉棒や睾丸が収まっている。

 山賊達は処置の後、命ばかりは助けてやると言って放逐してきた。
 次は問答無用で殺すからなとリリーに言われた彼らは、アジトを引き払い荷物を持って反対方向に歩き去ったのだった。

「俺は女だからそんなの分かんねえよ。ジュン、どう思う?」
 リリーに聞かれて僕は考える。

「タマタマは男の性欲の源だから、それ取られたら性欲減退して穏やかな気持ちになるのかなあ。それを残されると、性欲だけはあるのにそれを発散できなくてきついかもしれませんね」

「じゃあ、タマ残された方が不幸なわけか」
 リリーは納得したみたいだったが、後ろからケンタが別の意見を言う。
「でも性欲って、生きがいとかやりがいってこともあるでしょ。欲求不満の解消法を見つければ、タマタマある方が良いと思うようになるかもしれませんよ。男でもお尻で感じるでしょ。ジュンさんあの時すごく気持ちよさそうだったし」
 ケンタが僕のお尻をチョンとつつく。

 リリーがフフッと笑った。
「なんだよ。ケンタもお尻受けしてみたいのか? ケンタも可愛いから男の娘似合うかもしれないけど……、そうだ、試してみるか? ちょうど鞭の充電しなきゃいけないんだった」
 リリーは淫電の鞭を引き出して見せた。
 淫電の鞭の柄先には立派な亀頭がピンク色に光っていた。
「うわあ、それ、エッチな形だなあ」
 ケンタがその部分を見つめて感嘆の声を上げる。

「やめておいた方が良いですよ。男の娘になりたいのなら、無理に止めないけど」
 警告する僕にケンタがくっついてくる。
「そんなにいいんですか? なんか興味あるなあ。そうだ、早速充電してみてくださいよ。見学するだけなら問題ないでしょ」
 ケンタが僕の腕をとり、林の木陰に引っ張る。

「そうだな。充電するか。ジュン、そこでお尻だしなさい」
 リリーが命令してくる。
 服を脱げとかお尻を出せとリリーに命令されると、僕はなぜか胸がきゅんと来る。
 無理やり恥ずかしい格好を強いられることにドキドキしてしまうのだ。

 リリーはリリーで僕を恥ずかしがらせることに快感を感じているようにも思える。
 そんなところを考えるに、僕とリリーは実にいい相棒関係なのだ。

 僕はケンタにお尻を見せないように、ケンタの方に頭を向けて這いつくばると、ローブを捲ってお尻を出した。
「じゃあ、ケンタはそっちで見てなさい。入れるぞ」
 リリーの持つ淫電の鞭の亀頭部分が僕の肛門を広げながら入ってくる。
 僕のそこはいつものようにじゅんと濡れてすっぽりと咥え込んだ。

 鞭の柄が僕のそこ奥深くまで侵入してくる。
 柄が振動を初めて、いきなりすごい快感が僕を襲う。
 これまで何度も経験してきた鞭の充電だけど、今日はいつもと違う感覚だった。
 最初、ケンタが見てるからかと思ったけど、そんな些細なことは関係ないとばかりに、その快感は僕の心を破壊するかのようだった。

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 ここか。大きな家だな。豪邸とか、屋敷と言った方がぴったりくる、そんな家だ。
 時刻は午前九時。ちょうど約束の時間だった。
 小雨がしとしと降る春の日。
 傘をさしていても、水たまりで靴のつま先が濡れて冷たかった。
 僕は青山と表札の出た門の前に来ると、インターホンのボタンを押した。

「木村圭一です。家庭教師斡旋サービスから参りました」
 誰何すいかする声に僕はそう答えた。
 どんな生徒だろう。女の子だということだったけど、バイト仲間に聞いた話では、すでに三人がこの生徒を担当して、辞退していった後なのだった。

 門扉が自動で開いて、奥にどうぞと声が言った。
 僕は門をくぐり、丁寧に刈られた植木の中、十メートル以上もある石畳を進む。
 そして玄関ドアの前にたどり着いた。

 ドアが内側から開いて、どうぞと声が言った。
 こんな豪邸だからお手伝いさんかと思ったけど、中を覗くと可愛い女の子が立っていた。
「青山凛々子です。今日からよろしくお願いします」
 その14歳の女の子が、僕を見つめてにこりとした。


8 現実なのか夢なのか、異世界なのか過去なのか



「おいしっかりしろ。いい加減起きろ」
 リリーの怒鳴り声が僕を夢から覚ましてくれた。
 すぐに状況を思い出した。
 僕は淫電の鞭の充電で、快感が強力すぎて気を失ったようだ。
 以前、超人カル‐エルとやったとき、あまりの彼のパワーで快感を処理できずに気絶してしまったことはあったけど、淫電の鞭では初めての事だった。

「あ、すいません。もう大丈夫です」
 腹ばいから起き上がる。
 首を振ると、少しめまいがした。
 手を貸してくれたケンタに、ありがとうと僕は一言いう。
 大きく息を吸って森の冷えた空気を肺に取り込むと、徐々に気分がすっきりしてきた。
 そして、さっきまで見ていた夢の輪郭もくっきりと、まるでアニメの一場面のように浮かび上がってくる。

 玄関ドアを開いて僕を迎え入れた青山凛々子という女の子の顔が、はっきり思い出された。
 その子の顔は、三年前、この世界で出会ったリリーに瓜二つだった。
 髪型は違うにしても、目鼻立ちは間違い様がないくらいに。

 あの夢は何だったのだろう。僕の前世の記憶だろうか。
 ただの夢と片付けるにはリアル過ぎたのだ。
 でも、記憶という感じでもなかった。
 記憶だとしたら、あの先のことも僕は憶えているはずだ。
 だけど僕の心の中には、青山凛々子とその後の関わりの記憶は何も存在しなかった。
 顔はリリーそのものだったし、彼女は前世のリリーなのか?

 あおやま、りりこ、僕がぽつんとつぶやくと、前を歩くリリーの肩がぴくんと動いた。
 そしてゆっくり振り向いた。
「その名前、なんだ?」
 リリーは眉を寄せて首をかしげている。 
「さっき、気を失っている時に夢で見たんです。その子に会う夢を。青山凛々子って名前、心当たりがあるんですか?」
 僕の質問に、リリーはうーんと唸って首を振った。
「その名前聴いて、いま思い出したんだ。それが俺の前世の名前だったってこと。これまで全然知らない名前だったのに……」
「やっぱりそうですか」
 僕が言うと、横からケンタが聞いてくる。
「何の話ですか? リリーさんの前世って?」

 前世の記憶をリリーが持っているということと、その前世が僕の前世と同じ世界のようだという事を、要約して僕がケンタに説明した。
「人間って、誰でも死んだら輪廻転生するんだって、五蔵ってショタ法師も言ってた」
 リリーがひと言付け加える。 

「そうなんですか。僕は全然憶えてないな。でも、リリーさんたちの前世って、このソラリムの国じゃなかったんですか」
 ケンタの疑問はもっともだ。
 転生するとしたら、同じ世界の未来に生まれてくると考えるのが普通だから。

「この世界とは全く別の世界だよ。その前世では、ロールプレイングゲームというのがあって、どう説明すればいいか難しいけど、その世界での物語として、この世界が語られるような感じ。リリーさんはその物語がとても好きだったから、その物語そっくりなこのソラリムに転生したんだと思うよ」
 簡単な言葉で説明しても、ケンタは首を傾るばかりだ。
 異世界転生なんて、想像したこともないだろうから無理もない。

「という事は、ジュンさんもこの世界に転生してきたんですか?」
 ケンタがもっともなことを聞いてくる。
「僕の場合は、リリーさんと違って、紅の触手事件でダイナロスとサタノスの召喚合戦に巻き込まれた形だったんだ。だから赤ん坊としてこの世界に生まれたわけじゃないよ」
 僕が答えると、前の世界に帰りたいとは思わないんですかとケンタが聞いた。

 どうだろうな。もう前の世界の事よく覚えていないし。
「三年経つからね。もう僕にとっては此処が僕の世界だと思ってるんだ」
 本心を答えた。

 しばらくは町への道を淡々と三人で歩いた。
 そうだ、一つ聞いておこう。
 僕は話を戻して、リリーに質問した。
「リリーさんは前世で病弱な少女だったって言ってましたけど、家庭教師とか雇いましたか?」
 さっきの名前の時とは違って、今度はリリーの反応は薄かった。

「家庭教師ねえ。扉を開いたら、小太りでさえない顔した大学生が額に汗かいてにやけているのをふと思い出したぞ」
 ぼんやりとした口調でそう言った。

 もしかしたら、それが僕の事かもしれない。


9 眠ると前世の扉が開く


 ホワイトホースの街に戻ったのは、日暮れ前だった。
「ジュン、お疲れさま。また明日な」
 そう言って早速城に報告に向かうリリー。
 そのリリーに付き従う見習いのケンタとも別れて、僕は酒場に向かう。

 リリーは騎士として城内の宿舎で生活しているが、僕は彼女の従者だけど従者用の部屋はないから、街中の宿屋で寝泊まりしているのだった。
 ただ、もう少ししたらお金が貯まるから、古い一軒家を買って二人で住もうという事になっていた。男女で一緒に住むといえば恋人関係と普通は思われるが、僕とリリーはお互いに性的な関係ではない。
 男の娘サキュバスのセックスの相手は男なのだから。

 酒場兼宿屋への道すがら、城へ続く階段の途中の円形広場に人々が集まっているのが見えた。
 大声で叫ぶ声がする。また何かの伝道者が信者を集めているのかな。
 そのまま通り過ぎようとして、ある言葉を聞いて僕は足を止めた。サタノスと聞こえたのだ。
 サタノスは紅の触手事件を起こした張本人と言っていい異世界の神の一部だったが、一般的には知られていないはずなのだ。
 ホワイトホースの首長にはロイナース師からの報告がいってるかもしれないが、公に知れ渡るニュースにはなっていない。
 胸騒ぎをおぼえながら、僕は階段を駆け上って円形広場に行ってみた。 
 
「神はもうすぐ降臨する。サタノスが降臨すればこの世界は一変する。今のうちにサタノス教に入れば、その後の世界で幸福になれるのだ」
 黄色いローブをゆったり羽織った背の高い男が、そう叫んでいた。
 周囲を取り巻く人々は、半分は怪訝な表情。
 首を振りながら離れる人も多かった。あまり相手にされていないようだ。
 
 僕は彼の演説が済むのを待って、彼に話しかけた。
「サタノスというのは何ですか」
 背の高い男は僕を見下ろして、うんと頷いた。

「やっと興味を持つ者がいたか。サタノスは異世界の神だ。この世界にもうすぐ誕生する。サタノスが降臨すれば、これまでのソラリム神は一掃され、サタノスの世界になるだろう」
「どうしてそんなことがわかるんですか?」

「二か月ほど前になるか。私の夢に現れて、そう伝えられた。これを見よ」
 男はローブの袖をまくって左腕を露わにした。
 その腕は肘の先から指先まで、褐色の肌がピンク色に変わっていた。

「この腕はサタノスのご利益だ。怪我や病気を治すことができるのだ」
 男は自慢げに言うが、ちょっと信じられない。
 サタノスは時空の隙間を閉じたときにダイナロスの中に吸収されて消えたはずだったのだ。
 あの時、手違いがあって、サタノスの一部がこの世界に残ったのだろうか。

 もしそうなら、明日早速リリーと相談する必要がある。
 それから、ロイナース師にも相談しないといけないかもしれない。
 明日は忙しくなりそうだ。

 何か新しい冒険が始まりそうな、そんな危機感とも興奮とも取れる気持ちを抱えたまま、いつもの宿屋に僕は向かった。

***************************

「先生、ここどういうふうに解けばいいの?」
 凛々子に聞かれて、僕は焦る。
 胸元の開いた彼女のTシャツの中、乳首がもう少しで見えそうなところだったのだ。

「あ、そこね。ええと、XをYイコールで出して、それを三番目の方程式に入れてみればいいよ」
 数学の連立方程式を教えているけど、中三にしては遅れているなと思う。
 この子は病気でほとんど学校には行けてないということだった。
 今この調子なら、高校入試は絶望的だろう。

「難しいなあ。あたし、数学は苦手なんだよね、先生は医学部行ってるんでしょ。すごいね」
 僕に慣れてきたからか、凛々子の言葉使いもずいぶんタメクチになってきた。

 家庭教師として、言葉使いは重要だ。
 先輩の話では、生徒によってその辺は変わってくると言っていたけど、あくまでナメられてはダメだということだった。
 僕はすでにダメなのかな。教師の威厳なんてゼロだから仕方ないか。

「先生、いま私のオッパイ覗いていたでしょ」
 いきなり凛々子が僕の腕を取った。
 机の横に立っている僕がよろけてしまう。
 椅子に座る凛々子の前に跪いてしまった。

「いや、それは違うよ。誤解というかなんというか。僕は覗いてないよ」
 焦る僕の言葉は明らかに不自然な響きを放っていた。
「中学生のオッパイを覗きこむ家庭教師なんて、最低だよね。アプリの感想に入れちゃおうかな」
 凛々子の言うアプリというのは、家庭教師斡旋サービス(KKAS)のアプリの感想欄の事だ。そこにそんなこと書かれてはたまらない。
 もちろん僕のことだとすぐにバレるだろうし、そうなったら僕は首、ヘタしたら賠償金まで払わされかねない。

「どうするの? 先生。あたしの言うこときくなら内緒にしてやってもいいけど」
 凛々子はふっと笑みを浮かべていった。
 そうか。この手口、これまでもやってきたのだろうな。
 三人も前任の家庭教師が辞退したのはそういうわけだったのだ。
 前任の三人がどういう状況なのかは知らないけど、僕にとってはこの子の担当を外れるのはできるだけ避けたかった。
 最近は家庭教師も外見で選ばれることが多いのだ。
 僕はこのところなかなか選ばれずに、三ヶ月ぶりにやっときた依頼だったのだから。

「わかった。言うこと聞くから内緒にしてください」
 僕は自然と丁寧な口調になった。
「いいね。先生とはうまが合うかも。じゃあ、私の足の指舐めてみて」
 凛々子は裸足の足先を僕の鼻先に差し出した。
 ツンとくる足の匂い。すっぱそうな匂いだ。
 
 その足指を見ていると、胸がドキドキして息苦しくなる。
 どうして僕はこんなことをしているのだろうか。
 疑問に思いながら、口を開いて凛々子の右足の親指を口に含んだ。
 舌を絡めてそれをしゃぶる。汗の塩気と埃っぽいざらつき。
 それを感じながら、僕の興奮は徐々にふくれ上がっていった。


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