3月のアイスまんじゅう
寒いのになぁと思いつつも、口にほおばる。
さっきまで青空が広がっていたのに、今や車の外ではあられが降っている。どうにもお腹の弱い私は、内心不安に思いながらも、ほおばる。
お、おいしい。
ギ、ギルティ…!
それが私のアイスまんじゅうとの出会いでした。
◇
2019年の3月、私は福島に行きました。
今思うと、新型コロナウイルスが日本で流行りだす、本当に直前くらいの
時期。語り部さんのツアーに参加しに行ったのでした。
これは、そのツアーのお昼ご飯の時のお話。
浪江町名物、なみえ焼そばを食べた後、
語り部さんがデザートにおごってくれた、アイスまんじゅう。
◇
皆さん、見てください。このフォルム。
ピノを巨大化したような?いや、きのこの山を巨大化したような?
かわいらしい形を。ちなみに上から見ると、梅の花のようです。
(.....急いで撮ったら暗い雰囲気になってしまったのは、ご愛敬)
アイス部分に牛乳を50%も使ったアイスまんじゅう。
ほのかな牛乳の香りとともに、優しい甘さが口にひんやりと広がります。
私は甘いものがどちらかと言えば苦手なのですが、
アイスまんじゅうの主張しすぎないあの甘さは、程よく舌に合いました。
アイスまんじゅうの中心部分を構成するのが、この練り餡です。
しっとりとした餡、外側のアイス。
この組み合わせに勝るものはないでしょう。
舌に触れたら溶けだす練り餡、少し遅れて溶けだす外側のアイス部分....
そして、いつの間にか、
私の手元には木のスティックしか残っていませんでした。
◇
しかも、手造り。
このアイスまんじゅう、一つ一つ手造りされているのです。
福島県に拠点を置く松永牛乳さんが作られています。福島県の太平洋側に
位置する、相馬地区や二葉地区を中心に親しまれているそう。
真心こめて作られているのでしょう。
60年以上も親しまれ続けたその味には、誰にもまねできない優しい甘さが
込められていました。
そして、「せっかく来てくれたから」とおごってくれた、
語り部さんの優しさも。
いつの間にか現れた太陽が、フロントガラスについた滴に反射します。
お腹の不安もどこへやら。
浪江町と、語り部さんと、私と、アイスまんじゅうと。
3月の福島は、冷たくて、甘くて、優しい味がしました。
◇