物語を作るうえでの経験値

『殺人をしたものでないと殺人事件を描けないか?』
答えはノーです。殺人など犯罪に触れていない人物であってもクライムものの物語を描くことは当然可能です。
ですがもし仮に殺人を実際に行った方が書いた殺人事件のお話であれば、それはその行為を行っていないものが書くものとは別の視点で描かれたものとなるでしょう。

今回はそんな物語の経験値についてのお話です。


俺らにロマンス経験はない!

『トラブルシューター:捨てられた子供たち』というゲームでユーザーからの意見に「魅力的なキャラクターたちだから、彼らとのロマンス機能を実装してくれ」というレビューが書かれました。
しかしそのレビューへの返答の内容があまりにも悲しいことからかこんな記事が書かれました。

結論だけ書くと「我々制作した者の中にデートした経験がないため、デートする機能は実装できません」という返答だった。
そんなことある!?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、私も含め青春時代をほぼゲームに捧げていたモノ達は異性との経験が豊富な方は少ないです。

なんせゲームセンターに女性ほぼおらんかった。今では女性も遊べる音ゲーなどもありますが、当時はいても入り口周りのプリントシール機とかのコーナーに少数いるくらいで、私が足を運ぶような格ゲーの周りにはほぼ女性はおらず、脱衣麻雀のゲームなどもむき出しで置いてあり、タバコも煙かったし、女性が気軽に立ち寄れる雰囲気の場所ではなかった。
男たちは自身の誇り(100円)を掛け合い、怒号と灰皿が飛ぶ、まさに現代の戦場の一つと呼ぶべき場所であったと思う。

そんな環境で過ごしていたら異性と触れ合う機会は存在せず、「デートしたことないからデート機能は作れない」と言われても納得するほかない。

ロマンス経験ある人連れてくる!

逆に「その機能つけたいけど経験ないから、経験ある人呼んでくる!」という形になったのが『Rise of the Ronin』である。
詳しくはこちらの記事を参考に。

史実の人物が多く登場する今作ですが、ロマンス要素は企画当初から入れようと考えられていたそうです。
ですがご存知の方もいるとは思いますが、『Rise of the Ronin』はTeam NINJAというバリバリ硬派ゲーしか作ってこなかったチームであり、ユーザーが満足できるようなものを提供できるか不安だったそうです。
そこでコーエーテクモでロマンスゲーといえば!?ということで、ルビーパーティーからスタッフを参加してもらい開発にこぎつけたという経緯があったそうです。

ルビーパーティーは男性ゲーマーにはあまり馴染みがないとは思いますが、いわゆる「ネオロマ系」を担った実績のあるチームです。
ネオロマ系とは女性向け恋愛ゲームの総称であり、昨今巷に溢れかえる女性向け恋愛ゲームはルビーパーティーが走りです。

たとえゲーム市場であっても「世界の半分は女性だ」と考え、1980年後半より男性ばかりだった業界内で女性スタッフを中心に集め、『アンジェリーク』や『遥かなる時空の中で』などの女性向けゲームを開発していった。
なんだったら『遙かなる時空の中で3』だと源義経でてたりするから「歴史キャラとの恋愛ゲーなど我々は20年前に通過した場所だ!!」とルビーパーティーは思っていたかもしれない。

ハードなアクションゲーを作ったチーニンと至極の甘いロマンスゲーを作ったルビパが組んだことは、まさに鬼に金棒であったことだろう。
上述の『トラブルシューター』では越えられなかった経験値の壁はコーエーテクモであれば越えることができたようだ。

経験値の必要性

上記2つは直近で似たような話だったので例として挙げさせてもらったが、やはり結論で言えば『経験値があった方がより良い』と言えるのではないだろうか。
恋愛ゲームであれば自身の恋愛経験が無いと描写は想像どころか模倣となることすらあり得てしまう。
最初に例として殺人を挙げたが決して殺人を肯定しているわけでは無いことを改めて言わせてほしい。

常識の範囲内での様々な経験があなたの作品に縁取りを与えることで、より魅力的な作品となることを願います。

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