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ハッピーエンドは眠りについてから~ランタナ心の花~【第21魂】

【存在愛】

  少し前。
「ねえ、お母さん。最近ねたまにだるくなって吐き気がするんだよね、気持ち悪いの。ただ体調が悪いのかなぁ。」
  もしかしたらとは思ったが、あえてまだ口にはしなかった。
「あらっ。大丈夫?今日はゆっくり寝てな。んっ!もしかして妊娠?」
  母に先に言われた。
「うん。かもしれない。生理も来てないんだ」
「早速病院に行こう」
  母はとても嬉しそうだった。
「妊娠したか検査キットを使って調べない?」
  と母に言うと、
「あんた絶対妊娠よ!まこと君の生まれ変わりだってば!そんな気がするの。女の感ってやつかな。支度しなさい!」
  まこと君ってのが亡くなった私の旦那。
私の名前は早矢華。支度を早々に済ませ母の運転で病院へ向かった。
「今から行く病院はね、あたしがあんたを産んだ病院なのよ」
「そうなんだ!」
  母は終始笑顔だった。私もなんだか嬉しかった。まだ必ずしも赤ちゃんかどうかはわからないが。
「あんたを産む時は大変だったんだよ。なかなか出てきてくれなくてね。あたしの顔が真っ赤になっちゃって。難産だったんだから」
  初めて聞いた。子供を産むってやっぱり大変なんだな。
「ねえお母さん、私が産まれた時ってどんな気持ちだった?」
「とっても嬉しかったよ。最初に顔を見た時に、ありがとうって泣きながら言ってやったんだ」
  そうなんだと喜びながらお腹をさすった。そうしてる間に病院へ到着した。駐車場へ車を停め病院の中へ入り、受付を済ませ待合室で待った。
「大丈夫?」
  母が私を心配してくれる、その優しさで安心した。
「うん。大丈夫ありがとう。」
  しばらくして呼ばれた。
「宮石 早矢華さん」
「はい」
母と二人で中へ。白髪の眼鏡をした先生が居た。
「どうしました?」
  早矢華は最近、体がだるかったり疲れやすいし熱っぽいなど、風邪に似た症状があります。と応えた。その後に尿をとり少し待った。
  先生が隣の部屋から出て来た。
「早矢華さんお母さん、おめでとうございます」
  私と母は目を合わせ大喜びした。
「早矢華さん。吐き気等のつわり症状が始まってますね。つわりは、母体が妊娠を受け入れる準備なのでほとんどの方が経験しますが、症状や期間には個人差がありますが大丈夫です」
「はい」
  嬉しかった。本当に嬉しかった。母と喜んでいると先生が、
「今の状態ですと六週目ですね。超音波診断で胎のうが確認できるんですが、確認しますか?」
「たいのうってなんですか?」
  早矢華は詳しく知りたかった。
「胎のうとは赤ちゃんを包んでいる袋の事です。妊娠、四週の終わりから五週にかけて、子宮内に一センチ程度の胎のうが確認されるはずです。それが超音波診断でわかるんですよ」
「凄いですね。是非お願いします。」
  母も賛成した。
  診察を終え最後に先生が、
「過ごし方ですが、今の時期は食欲がなくてもあまり気にしなくても大丈夫ですよ。空腹を避けるために、つまめるものをいつも用意しておいて好きな物を少しずつ何回にも分けて食べましょうね。音楽を聴いたり散歩するなど、気分転換も大切ですよ」
  と教えてくれた。
「ありがとうございました。またよろしくお願いします」
   私と母は頭を下げ診察室を出た。そのまま受付を済ませ外へ出て車へ乗り込んだ。
「良かったねえ」
  私も嬉しかったが、それ以上に母が喜んでいる。鼻歌まで歌って終始笑顔だった。自宅に帰るまで母はずっと孫の話しをしていた。だが私は聞き流してしまっていた。上の空だ。亡くなった旦那の事を想っていた。
(まこちゃんが居たら飛んで喜んでるだろうな。見てくれてるかな。頑張って沢山の愛情を注がなくちゃな)
「…だよ。ほらっ着いたよ。なにボーっとしてるの。体調悪い?大丈夫?」
「ごめん大丈夫だよ。運転ありがと」
  とは言ったが少し気持ち悪いので家に入るなり自分の部屋に向かった。
「何か用事があったら呼びなねー」
  少し離れた所から母の声が届いた。はーい。と返事を返し部屋のドアを閉めた。部屋に入ってすぐに出て洗面所へ向かった。吐き気がしたのだ。口を濯いだ後、何か食べようと母の所へ向かった。お腹に赤ちゃんが居るのだと思うと何か食べないといけないと思った。
「お母さん、何か食べ物ない?」
「もう少ししたら夕飯なんだけど」
「ごめんね。匂いがダメみたいで嗅いだら気持ち悪くなるんだ」
「そっかぁ、フルーツでも買ってくれば良かったね。ヨーグルトならあるよ」
  母はヨーグルトを冷蔵庫から出しテーブルに置いた。三つセットの物だ。
「ありがと」
  早矢華はスプーンを用意してイスに座った。ヨーグルトの蓋を開けながら母に話しかけた。
「お母さんはつわりってどうだった?ひどかった?」
  母は料理をしながら背を向けたまま応えた。
「ん~、まぁ普通なんじゃないかな。辛かったけど、とてもってわけじゃなかったし。子供がお腹にいるんだなって思えば平気だったよ」
「お父さんはどうしてた?」
「お父さん?お父さんはね、いつも朝と夜にお腹を優しくさすってくれてたよ」
「ふ~ん。そっかぁ。私も頑張るね。ごちそうさま。部屋に戻るね」
  早矢華はヨーグルト二つ全部を食べ終え、一つは冷蔵庫に戻し容器とスプーンを片付けて部屋に戻った。早矢華はベットに横たわった。
「あぁだるいなぁ。いつまで続くかな。赤ちゃんを授かるってのも大変だな。だからこそ自分の子供を愛せるんだろうな」
  独り言を言った後、寝返りをして今度は心の中でいろいろ話した。
(自分がお母さんになるんだなぁ。二十七で母親か。私大丈夫かな。まこちゃんが側に居てくれたらお腹さすってくれるかな、分かち合いたかったな。とりあえず、お母さんとお父さんにまだ甘えさせてもらうか。まこちゃんが居たらきっと頑張ってって応援してくれるはず!だから頑張る)
  早矢華の目から少しだけ光が流れた。早矢華が部屋に戻ってから一時間ほどが過ぎた頃。玄関が開いた。
「ただいま~」
「お帰りなさい」
父親が帰ってきたのだった。仕事着からラフな格好に着替えリビングへ行き、妻に聞いた。
「早矢華の調子はどうだ?最近また元気が無いからな。誠君の事か?」
  父は一人っ子の愛娘 を心配していた。
「体調は良いってわけじゃないけど悪くもないんだよ。でも誠くんの事よ」
「よく分からんが、大丈夫か?いただきます」
  イスに座り夕飯を食べ出した。父は少し不機嫌になっていた。秘密事が大嫌いなのだ。
「本人に聞きなよ。今呼んでくるね」
  母は自分で今すぐにでも言いたかったが、ぐっとこらえた。本人から伝えてほしかったから。母は早矢華の部屋のドアをノックした。
「開けるよ」
「は~い。どうした?」
  早矢華はベットに寝転んだまま返事をした。
「大丈夫?」
「うん。だいぶ良くなったよ」
母はベットの横に立ったまま話した。
「お父さんが帰ってきたから赤ちゃんの事話な」
  早矢華はゆっくりと起き上がり、立ち上がった。
「うん。びっくりするだろうね」
  母と娘二人とも、ドキドキしながらリビングに向かった。
  二人はイスに座り早矢華と母が変に真面目な顔をして父を見つめた。早矢華はドキドキッ。母はワクワクッ。父は娘と妻をキョロキョロ
  ……父が先に口を開いた。
「なんだ二人で。見つめるな!さやか、体調は大丈夫なのか」
  缶ビールの蓋を開けた。そして早矢華が遂に。
「あのね…」
「早く言いなさい」
  イライラした父は缶ビールを口に運んだ。
「私のお腹にね、今っ!なんと!子供がいま~す!初孫だよ。」
  満面の笑みで言った。
「……………」
  一瞬止まった父は口に含んだまま動かない。ビールを娘の言葉を理解したと同時に思い切り吹いてしまった。
「ビファッ~!」
「お父さん汚いー」
「アァハッハッハッヒッヒー」
  母はお腹を抱えて大笑いした。大笑いしている母は笑いながらも布巾を持ち、ビールで濡れたテーブルを拭き取っていた。
「フフッフハハ、ふっふふ吹かなくてもいいのっにっ」
やっと笑いが治まってきた。
「ごめんごめん。あんまりにも驚いて」
  ティッシュで口を拭きながら言った。
「お前は笑いすぎいだぞ。しかしや~、さやかおめでとさん。誠君の子か?」
  早矢華はにっこり笑った。
「うんありがと。まこちゃんとの子供です」
早矢華はおつまみの枝豆を食べた。
「良かったな、来年には母親か。俺はじいちゃんか。楽しみだな。体調管理には気を付けろな」
「うん、まだまだお世話になるけど、よろしくね」
  父と母は優しく頷いた。

私とあなた
今は      私と君
あなたと出逢った時
ドキドキしたよ
君に逢える気持ちは
ワクワクしてるよ
私の心の中にあなたが居て
私の体の中に君が居る
だから一生懸命に生きれるよ
あたなと君はしっかりと
存在してるから
愛してるから
生きる事に
感謝します

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