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ハッピーエンドは眠りについてから~ランタナ心の花~【第22魂】

【情愛】

私  今のままで大丈夫かな
私一人の愛で足りるかな
あなたも私も
二人の親からたくさんの愛をもらって
幸せなのに
私は一人  一人の愛
君は「平気だよって」って言ってくれるかな
私  不安でいっぱい
あなたの分も頑張るって
頭でも体でも心でも思っているつもりだけど
やっぱり…
あなたはどんな声をかけてくれる
あなたはどんな優しさをくれる
あなたは…
あなたの愛をもっと
もっと
知りたかった
感じたかった

  早矢華と母親は今日も病院に居た。
「つわりはどうですか?」
  先生の問いに応えた。
「まだ辛いですけど何とか大丈夫です。まあまあ食欲もありますし」
「そうですか。いよいよ妊娠三ヶ月に入りましたね。8週目です。妊娠生活に少しずつ慣れてきますね。心拍も確認されて赤ちゃんが無事に育っていますよ。実感してますか?」
「はい、なんとなく」
  先生はにっこりした。
「妊娠初期の大きなトラブルが起こる可能性が少なくなり、病院での検診も一ヶ月単位になる方も居ます。もちろん心配ならばいつでも相談してくださいね」
「ありがとうございます」
二人は病院を出た。
「優しい先生だね」
  母に早矢華はそう言った。
「そうだ、これから誠くんの両親とこに行かない?子供もできたんだし、伝えなきゃ」
  早矢華はハッと顔を動かした。
「そうだね!行こうか」
  早矢華は携帯の電話帳を開いた。
「えっと。あったあった。じゃ今から、まこちゃんのお母さんに連絡するね」
  時計は十一時三十分を表示していた。繋がった。
「あっもしもし、さやかです。はい、お久しぶりです。突然お電話すみません。はい。元気ですよ。大丈夫です。はい、あの今日ってお時間ありますか?大事なお話がしたくて。はい、十四時からなら、はいわかりました。それじゃ十四時頃に母とお邪魔します。失礼しまーす」
  十四時に会う約束をした。今の電話での会話で母も分かったと思うが一応伝えた。
「二時頃からなら大丈夫だって」
  母は車のエンジンをかけながら応えた。
「うん。じゃお昼どこかで食べてお土産を買って行こうか」
「そうだね!そうしよう」
  早矢華に体調も今日は良い感じ。つわりもなく食欲もあって安心だ。
「お昼何がいい?」
  母が聞いてくれた。母と二人きりで外食なんて久しぶりだ。なんだか嬉しい。最近では、母とまこちゃんとの三人だったから。父は仕事。同時になんだか寂しい。
「じゃ久し振りに、花風月のうどんが食べたいな」
  花風月とは早矢華が小さな頃から母と父に良く連れて行ってもらっていた、老舗のうどん屋さんなのだ。
「いいね。ここから近いし行こっか」
  早速そこへ向かった。花風月の駐車場に車を停め二人は中に入った。花風月には、お客さんが二十人ほどで満席くらいになるお店で、大将とその奥さんと娘さんの三人で営んでいる。
「いらっしゃーい」
  六十歳くらいの女性が出迎えてくれた。案内された席につくと女性が気付いた。
「杉山さん?」
  早矢華と母の目が合い、母が応えた。
「そうですよ。覚えてくれてたんですね。もう五年ほどお邪魔してませんで」
「やっぱりだ、覚えてますよ。こちらは、さやかちゃん?綺麗になってえ」
  早矢華はにこっと笑った。
「はい。ご無沙汰してます。お久しぶりです」
「ゆっくりしていってね」
  うどんを二人前注文した。
早矢華は厨房の方を見た。男性が二人いる。
「ね、お母さん、旦那さんどっちだっけ?娘さんは居ないみたいだね」
母も厨房の方を見た。
「えっと、指示をだしてる方が大将だね。お手伝いかな?」
  早々にうどんがやってきた。
「どうぞ」
とても良い香りがする。鰹ダシの香りが鼻に優しくそよぐ。
「母が訪ねた。大将の隣にいる方は?」
女将さんは小さな声で、
「杉浦俊樹さんって言って、四十二歳で会社にクビにされちゃって。突然修行させてくれって来たのよ。初めはびっくりしたけど熱心でね、一生懸命に頑張ってるのよ。人生何があるかわからないわね」
  杉浦俊樹は誠に命を救われた一人。
「そうなんですか。おうどん、とても美味しいです。懐かしい」
「ありがとうございます。そう言えば早矢華ちゃん、ご結婚されてるんですよね。風の噂で聞いたのよ。あぁ旦那様を見たかったな」
  早矢華のうどんを食べる動きが一瞬止まった。母と目が合った。そして母は頷いた。
早矢華はしっかり応えた。
「旦那は少し前に亡くなりました」
  女将さんは申し訳ない感じで、
「あら、ごめんなさい。気付かずに聞いちゃって」
  早矢華はにこっと笑った。
「大丈夫です。亡くなった時に旦那の分まで幸せになるって誓ったんです。旦那もそうしろって言った気がするんです」
「そっか。早矢華ちゃんは強いね。よし。今日のうどんはご馳走するよ」
  それには母が口を開いた。
「大丈夫ですよ。そんな気つかわなくても」
「いいのよ。じゃちょっぴり遅いけど結婚祝いって事で」
  早矢華と母は頭をさげた。
「ごちそうさま~また来ますね。ありがとうございます」
  店を出た後に、デパートへ行き手土産を買って誠の実家へ向かった。誠の実家に向かいながら母と話した。
「お義母さん、子供ができたって言ったら驚くよね。喜んでくれるかな?」
「それは勿論喜んでくれるでしょ」
「あのさ、一応というか今私さ宮石家の人間なんだよね。それでも今のままお母さん達と住んでていいのかな」
母は顔が曇った。
「そうね。私達の娘であっても誠君のお嫁さんだからね。それもしっかり話さないとね」
  母は早矢華が家に居てほしいと思うのが当然だが、結婚をしているいじょうはそうもいかない。宮石家の子孫になるわけなので、仕方が無いとは言え複雑な心境である。
「まこちゃんも一人っ子だったからお孫さんもほしいよね。まこちゃんのお母さんもお父さんも優しいし凄く良い人達なんだけど、まこちゃんが居ないなら実家で住みたいのが本音だよ」
「そおね」
  それ以上母は口を開かなかった。しばらく沈黙が続き誠の実家に到着した。車を停め玄関の前に立った。早矢華も母も緊張していた。呼び鈴を鳴らす。
【ピンポーン】
  するとインターホンから義母の声が届いた。
「はーい」
  とても明るい声だ。
「こんにちは、早矢華です」
「さやかちゃんね。今行きますね」
  インターホンが切れてすぐに玄関の戸が開いた。
「こんにちは。お久しぶりね」
  早矢華も母も頭を下げ、
「つまらないものですが」
母は土産を玄関先で渡した。
「わざわざすみません。ありがとうございます。中へどうぞ」
  挨拶をし早々に部屋へ案内された。
「お邪魔します」
  綺麗な和室へと案内されたが、すぐに義母に話し掛けた。
「あの、すいません。まこちゃんに挨拶をしたいんですがいいですか?」
「そうね。隣の部屋だからどうぞ。私はお茶を用意してくるね」
早矢華が
「ありがとうございます」
  と言うと母は頭を軽く下げた。早矢華が母の手を引いて仏壇のある隣の部屋へ行った。二人は仏壇の前に座り御線香を用意した。そして手をゆっくり合わせ目を閉じた。そして心の中で話し始めた。

お久しぶりです
まこちゃんに報告があります私のお腹の中に子供が居るんだよまこちゃんの生まれ変わりかななんて思ってるんだとっても幸せを感じています
これからも見守っていてね
愛してるよ

  
あなたとの絆
大切にするね

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