向き合えなかった恋
昔の恋の思い出を語る事って、歳を重ねる度にだんだんとなくなっちゃうのかもしれない。どんなきっかけでその恋が始まったのか、何だか良く覚えていないのも、振り返る過去の時間が長いのだから、自然な事なのかもしれないし。
「ねぇ、どうしてあの時、僕から逃げたの?」とかつて片思いをしていた人が聞いた。
出会った頃、私は彼が気になってた。でも、何故か彼が傍に来ると、素直に自分の気持ちを表現出来なかった。そんな子供みたいな恋愛、高校時代に卒業していたはずだったのに。
学生時代に私を好きになる人は、分かり易い一生懸命さを持っていた。恋の主導権は常に私が握っていた。でもその彼は違ってた。
彼に彼女が出来たと人伝に聞いた時、ショックを受けている自分がいた。一人静かに失恋の気分を味わった。
その彼とは友人として交流を重ね、彼が失恋した翌日に偶然会って、顛末を聞いてあげた事や、私がしんどい時に偶然、傍にいてくれた事もあった。
私たちは恋人同士にはならなかったけど、同志のような、そんな絆が育まれていった。
久しぶりに彼に会った時、帰り際に言われた一言。
「どうしてあの時、僕から逃げたの?」
逃げてないけど、向き合えなかった自分を思い出す。
それさ、グループの友人からも聞かれたんだよね。「今だったら、どう?まだヤツから逃げるの?」と。
友達に答えた。「今なら逃げない。」
でも、それは「今」だから。
出会った頃の私たちにはもう戻れない。でも、今だから見えるものがある。
だけど、「向き合えなかった関係は、やっぱり向き合えないままなんじゃないのかな。」と私は彼に答えた。
帰り道に大好きなシュークリームを買った。これ食べながら、ゆっくり考えよっとと思いつつ。
出会う人は、皆、一人ひとり違っていて、皆異なるメッセージを伝えにやってきたのだと思う。私に沢山の経験をさせるために。
これまでの彼との関係性から学んだ事がある。そして、これからも友人でいる限り、私たちは互いにメッセージを伝えあうのだと思う。
「互いに何かを伝えあう役割?なんじゃないのかな。」と大好きなシュークリームを食べながら思う。
「恋人になっちゃったら、今までみたいには言いたい事、言えなくなっちゃうし。」と、最後のシュークリームを口に運びながら思う。
これで良かったんだ。
恋人という特等席には、私は座らなかったけど、友人という丁度いい距離感でこれからも交流していけば、それでいいんだ。
またひとつ自分自身を知る機会を彼からもらった。
いつもありがとうと心の中で感謝する。
彼が幸せでありますようにと心から祈りながら。
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