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【Vol.8】首・肩こりの鍼灸治療5 (肩の関節編)

こんにちは。とある鍼灸師です。
前回に引き続き、首・肩のこりに関してお話していきます。

この記事では、西洋医学や東洋医学の理論で症状について考えていき、その症状についてどのように鍼灸治療をしていくかを書いていきます。

みなさまのカラダの状態を把握するための参考にしてください。


首・肩こりは、その背景に大きな病気が隠れています。

〇首の骨によるもの(頚椎性(けいついせい))
〇精神的によるもの(心因性(しんいんせい))
〇目の病気によるもの(眼疾患(がんしっかん))
〇肩の関節の病気によるもの(肩関節疾患(かたかんせつしっかん))
〇心臓や肺の病気によるもの(心肺疾患(しんぱいしっかん))
〇歯やあごの病気によるもの(歯や顎関節疾患(がくかんせつしっかん))〇耳や鼻の病気によるもの(耳鼻科疾患(じびかしっかん))

今回は、肩の関節の病気による首・肩こりです。


1.肩関節の病気

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肩と聞くと図のように首の付近の部位を表します。
肩関節は腕の付け根の部分を指します。

肩関節の病気はいろいろあります。

〇四十肩・五十肩(しじゅうかた・ごじゅうかた)
〇腱板炎・腱板断裂(けんばんえん・けんばんだんれつ)
〇石灰沈着性腱板炎(せっかいちんちゃくせいけんばんえん)

などほかにもいくつかあります。

これらの病気は医学的な名称として、肩関節周囲炎(かたかんせつしゅいえん)といいます。

肩の関節の周囲の組織に炎症がおきている状態を示した言葉です。

肩関節の周囲の炎症であるため、痛みもあります。
この痛みが、肩の筋肉も緊張させるので、肩こりにつながります。
ただ、痛みのほうが強いと思うので肩こりを感じている余裕はないと思います。

(1)四十肩・五十肩(しじゅうかた・ごじゅうかた)

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《概要》

四十肩・五十肩は、肩関節の痛みと腕を上げるときの運動制限を出します。はっきりとした原因は不明です。

男女差はなく、40代から60代にかけて発生するのでこの名前がついています。


《症状》

肩関節の痛みは、冷えや寒さによって悪化し、夜間に強くなる傾向があります。
また、痛み自体は肩関節の周囲だけでなく、にの腕や肘まで散ることがあります。
炎症したときにおきる熱っぽさやその部分だけ赤くなることや腫れたりすることはあまりありません。

肩関節の痛みが激しい場合は、四十肩・五十肩よりも石灰沈着性腱板炎(せっかいちんちゃくせいけんばんえん)を疑います。

四十肩・五十肩は、発症して比較的早い段階で関節が動かしにくくなります。
しかし、この関節が動かしにくくなる状態がない場合は、五十肩よりも腱板断裂(けんばんだんれつ)を疑います。


《診断》

ぶつけたり・ひねったことがなく、痛みと関節の動かしにくさがあれば、五十肩を疑います。
特に、髪を結う動作やエプロンの帯を結ぶ動作で痛みが強くなったりします。


《経過・予後》

五十肩は、急性期・慢性期・回復期という3つの経過をたどります。

発症から約2週間は急性期になります。
急性期には腕を動かしたときの痛みや安静にしているときの痛み、夜に痛みが出現し、徐々に関節動かしにくい状態が現れて肩の可動域が制限されます。

その後約6ヵ月間は慢性期なります。
慢性期には、少しずつ痛みが軽減し日常生活でも痛いところをかばう必要がなくなるが、可動域の制限は残ります。

回復期には、可動域制限がまだ残るものの、痛みが少ないために大きな機能障害の自覚はなくなり、徐々に可動域が自然回復します。

これらの回復経過に1年前後の期間が必要になってきます。


(2)腱板炎・腱板断裂(けんばえん・けんばんだんれつ)

腱板損傷

腱板とは、腕の骨にくっつく4つの筋肉の総称です。
腕をいろいろな方向に動かしたり支えるのに重要な筋肉になります。

腱板炎は、この腱板に炎症をきたす状態です。
野球の投球動作などの使いすぎや、原因不明の石灰沈着性腱板炎でおきます。


腱板断裂(けんばんだんれつ)

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《概要》

上腕の骨と肩甲骨とをつなぐ腱が切れてしまう状態です。
四十肩・五十肩と似ていて、肩に強い痛みを感じます。
腱板断裂では肩に力が入りにくく痛みがいつまでも続くことがあります。

《症状》

肩の動きに制限があり、動かしたときに痛みが出ます。
また、夜になって痛みがあり、この痛みで睡眠がとれない状態があります。

五十肩と違うところは、関節の動きが固くなることが少ないことです。
 
他には、腕を上げるときに力が入らない、上げるときに肩の前上面でジョリジョリという音がでることがあります。

《診断》

肩を上げられるかどうか、関節の固まりがあるかどうか、肩の前上面で音があるかどうかをみます。

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また、腕を上げた状態から、だんだんと下していったときに60°~120°の範囲で痛みを感じるならば、腱板断裂の疑いがあります。


(3)石灰沈着性腱板炎(せっかいちんちゃくせいけんばんえん)

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《概要》

突然発症する肩の痛みをだし、日常よく遭遇する疾患です。
40~50歳代の女性によくおこり、腱板に石灰が沈着して炎症を引き起こします。
石灰沈着部は半数以上が棘上筋の腱におこります。

石灰沈着性腱板炎は、

・発症して1~4週の間に強い症状をだす急性型
・中等度の症状が1~6ヵ月続く亜急性型
・運動時痛などが6ヵ月以上続く慢性型

にわけられます。


《症状》

肩に強烈な痛みがあるため、痛い側の腕や肩を動かすことが出来ません。
夜間に突然生じる激烈な肩関節の疼痛で始まる事が多く、夜も寝に付くことが出来なくなります。
痛みで睡眠が妨げられるため、ストレスもたまります。

急性期は、夜に激しい痛みを発症することが多く、関節もほとんど動かせないような痛みを出します。
主に安静の時でも続く自発痛であり、症状は2~4週で軽減します。

亜急性期、慢性期では、急性期より痛みは軽いです。
亜急性期では1~6カ月、慢性期では6カ月以上にわたって痛みが継続します。
痛み自体はは安静しているときには認めず,主に腕を動かしたときの痛みです。


《診断》

症状が四十肩・五十肩と似ていますが、レントゲン撮影で石灰が確認されれば、石灰沈着性腱板炎となります。


2.肩関節周囲炎の鍼灸治療

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