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iHerbと、私と、エンゲル係数と、戦々恐々な夫と。 【洋梨夫人のダイエット日記 vol.15】

体を絞るためだけに
そのエネルギーを費やせば話は早いのに、
はっきり言って気分が乗らなくて、
ジムに行く前に、
何だかんだウダウダと時間を費やす。
何も食べなければ一番体重が減るだろうに、
やっぱり食べることって、
手っ取り早く、かつ手軽に欲望を満たせることだから、
ついつ安直な行動に走りがち。
一生懸命ダイエットしてるって言う姿勢だけはなんとか取り繕って
自分自身さえ煙に巻き巻きして
どこー?どこー?
って”痩せる食品”って言うのを必死で検索してみたりする。
そんなもんないって、実は勘付いている。

そうやってワチャワチャしていたら、
ある日ウチに
BOXが届いた。


娘が受け取ってくれて
私の目の前にストンッって置かれた。
あまり重くはないらしい。

これは、何?
もしかして玉手箱?浦島太郎系?
ッ、パカッって開けて、一気に白い煙をくらったら、
浦島花子誕生するんじゃない?

洋梨「あらやだぁ、一気に髪の毛真っ白なんて…
逆に斬新!
あの黒髪に白髪が混ざり始めた、
”ごま塩アタマ”期間をすっ飛ばして、端折って、一気に飛び級。
綺麗に全部真っ白になれるならそれもいいかな…」

なんて、
ヨガの”木のポーズ”を決めてた体勢から
膝を折って縮めていた方の脚を
アチョォッッ
とピーンって伸ばした。
クッ、足裏ツリそう…。
足の親指の指先に、かかすかにその箱が触れたことで
箱が僅かにスライドされて角度が変わった。
ホッ、よかった。
自分の想像していたくらいには、脚の長さが辛うじてあったらしい。


その箱には
親しみやすい、緑色の丸ゴシック体のアルファベットで

iHerb

と書いてあった。

はい、そう、これ!
注文したことさえ忘れてた。

”体の中から綺麗になる”
”健康は資本”
”年齢なんてただの数字”
世界レベルに
意識高い系のキラキラしてる方々、
皆々様、御用達なことで有名な
あのオンラインショップ、アイハーブ。
ああ、眩しい。
キラキラが止まらない。
ただの段ボール箱なのに、キラキラが溢れてる(気がする)
私もぜひその一員になりたい。
補欠合格でもいいから入れてほしい、粘り強く連絡待ってる。
意識を高く持って、
iHerberの皆さんと一緒に、
健康で綺麗にキラキラして、
「あのぉ〜、はぁ〜(ため息)。英語話せる人近くにいたりしますぅ〜?」
って英語を話してた私に、電話口でそう言った奴の眼を、
一点集中ダイレクトにキラキラ攻撃して煩わしいなと思わせてやりたい。
クソッ、
また思い出しては怒りが湧いてきた。
何回反芻するんだ。



なぜiHerbか?
あれはそう、最近始めた新習慣。
ピザ10回ゲームみたいに、
ただただ
「質の良い脂質、質の良い脂質、質の良い脂質…」
って自作の早口言葉を毎朝10回唱えてから、
「はいコレは?

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えっ
あー、
イノシシ…?

ブブー!
シツノイイイノシシノツノ(質の良い猪のツノ)、イツノツノ(いつの角)?でした〜」

とか
一人でやってから、1日を始める。
「馬鹿じゃない?」
とか言った人はとにかく
”質の良い猪のツノ、いつの角?”って10回言ってみて?
朝から頭と口がなんかバグるよ。


とにかくこれが、
これ以上、頬と口角の間にできてしまっている
グランドキャニオンのような大渓谷…
それはもう世界遺産並みになってしまっている
いわゆる”ほうれい線”を刺激しすぎないように気を配りながら
顔全体の筋肉を動かしていく、質の良いモーニングルーティンです。

同時に、自分自身に
「おい、わかってんだろうな、洋梨?
お前の脂質代謝はどうやら貧弱らしい割に、
チョコレートとかチョコレートとかチョコレートとか…
脂質の高いものばっかり、好んで食べまくってきたそのツケが、
今のこの状況なんだぞ。
質の良い脂質だけを見極めて、それだけを優先的に取り入れるんだぞ」
って
自己暗示して分からせてやっているんだ。
一応、ギリゆとりじゃない世代のハズの洋梨だけど、
体のフォルムを見たらわかるように、
体の細胞達は、かなり甘い汁だけ吸った、美味しいとこ取りの
ゆとった奴らが多そうだ。
だから
自分で自分の細胞たちに
今のこのカラダはどういう方針、指針で使われようとしているのかを
詰め込みまくり教育し直す必要があった。
しかし、
私の細胞たち意外と素直だったようで、
この”質の良い”何かを探すことに、徐々に力を傾けるモードになってたようだ。





その日はマレーシアにはめずらしく
朝からちょっと小雨が降っていたせいもあって
私のジム外出を躊躇わせた…
いや、正直、

洋梨「なんかダリぃな。
誰も見てないし、一回くらいサボってもバレないんじゃないかな。」

とか思ってグズグズしてたら、
夫に、

夫「今日は痩せのためじゃなくて、健康のためって思って歩いてきなよ。(ピカ〜ん)」

って諭されて、
無駄に”器のデカいオレッ”みたいなのを見せつけられて、
自分ばっかりいい格好しやがって!
と悪態つきつつ、
それでも
依然と続くマレーシアっぽくないシトシト雨は
私にジムをダラダラ先延ばしさせるのには十分だった。

洋梨「ちょっとだけチェックしよ〜」

とか言いながら、
ぽちぽち触ったスマホ。
質の良いモノ…質の良いモノ…質の良いモノ…
新しいカルト、”質の良いモノ”教。
いつの間にか私の細胞たちは、その新興宗教へ入信し、
洗脳までしっかり完了。
着々とその組織内での階級を上げていたようだった。
秘密の儀式とかやったのかな?

洋梨「ああ、砂糖が入っていない脂質、
ナッツとかのペーストで、
なんかいい商品ないかな?
できたらオーガニックの方が質が良さそうだし、
無添加の方が質は良さそうだし、
ナチュラルで、NON-GMO(非遺伝子組み換え)の方が質は良さそうだよね。」

とか思ってたら、
なんと
どこかのページの広告に
iHerbが出てきて、
吸い込まれるようにクリックをして、
気がついたらboxで
”質のいい”ピーナッツバター届いていた←イマココ
状態なわけだ。


もう、ホイホイも良いとこなワケで。
びっくりするくらいチョロいワケで。
何も疑いもなく、裏を取ることもなく、すぐ盲信。
”質が良さそう”なニュアンス、
”質が良さそう”な雰囲気、
”質が良さそうな”イメージ画像
とあらばなんでも、いくらでも…。
”なんとなく、クリスタル”系統の感覚的な匂わせ、大好物。
読んだこともないのに、
タイトルの”なんとなくさ”だけで見切り発車した。
ごめんなさい、田中康夫さん。
とにかくそう言うもの、だいたい大好物。
ユルッとフワッとホッコリとやってれば
現実と向き合わなくて済むからね。
いいから早くジムへ行け。


とにかく、この突如巻き起こった、
”なんとなく、ニュアンスで、雰囲気的に、質が良さそう”ムーブメント。
これに戦々恐々したのは、我が家の夫。

「あれ?
何?
MCTオイル? ココナッツオイルと何か違うの?」
「ピーナッツバター? 子供たちピーナッツアレルギーだから気をつけないとね。」「サイリウム ハスク パウダー? あっ、サイリュームってピカァーって光るやつ?オタ芸とかの?(違う)」
「小麦粉… が隅に追いやられて、バックウィートパウダー、オーツパウダー、キヌアパウダー…名前は違うけど、見た目はだいたい全部一緒…。」
「ミルクどこ? オーツミルクとアーモンドミルクとソイミルクは見つかったけど、肝心のミルクがない。」
「ケルプ入ってる塩ぉぉぉ…  って、えっ?ケルプって何?一体何のこと?ねえ、ヘルプッ!!」

キッチン周りでパニックがたくさん発生している。
疑問がさらに疑問を呼んで、疑問の多重事故を引き起こし、
疑問渋滞した上に、
さらに後続では疑問の玉突き事故も発生して、
もう目も当てられない状態。
今マレーシアのナビゲーションアプリWazeで我が家のキッチンを見ることができたら(実際そんなこと不可能だけど)
きっと真っ赤っ赤に染まって
勇者みたいなソードを持ったWazeユーザー達のキャラが
マップ上に数珠繋ぎに連なっていることだろう。
とにかく赤色は”ワヤだがや”ってこと。


夫「…
なんかさ…
最近キッチン周り…?
すごくさ…

充実?
してきてるよね…
うん。」

充実…。

おおおおおおお!
充実。
なんと
角が立たなくて、
オフェンシブではなくて、
むしろ一見、褒めてるようなポジティブな言葉だけど、
それでも一瞬、「あれ?これもしかして皮肉?」って
少しだけ何かを牽制してくる風なような、
それなのに発した本人は”オレ良い人”イメージを全く崩さない、
夫にしてはかなりの絶妙な塩梅の言葉のチョイス!合格!!

けど…
まあ、今回は残念だったな。
私はそういう”良い人キャンペーン”は、最大限に逆手にとっていくタイプ。

洋梨「そうなの。充実なの。
良いでしょ?最高でしょ?充実って!
もっと充実させて、
質の良いもの摂って、
体の中から綺麗になって、
いつか立派なiHerberになるんだ!」

”質の良い”教のマスターの座に着くまでは、
もしくは”質の良い”教に飽きるまでは(意外とすぐそう…)、
決してその手を緩めないぞ。





夫、沈黙…



夫「…
エンゲル係数にはだけには、気をつけてね。
今、インフレで世界的に物価も上がってるし…
止まらない円安だし…」

って
経済用語を持ち出して、
その後どっか行っちゃった。

”良い人キャンペーン”の代償は、彼には少し大きかったみたいね、うふふ。
(続け

May 2022

心地良いプレッシャーをありがとうございます!もっと面白くなるかどうかは、あなたにかかっていると言っても過言ではないのです!今後も、”全力の合いの手”をよろしくお願いいたします!