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人の心

物心がつき、若干七歳にして不意にこの世界の真実に辿り着いてしまった。

私が地球上最後の人間で、周りに存在する「人間らしきもの」は全てロボットであると。

違和感は特になかった。疑ったこともなかった。ただなんとなく気づいたのだ。私の他に人間はいない、ということに。

両親も、兄弟も、学校にいるみんなも、全ては誰かが私に見せている幻なのだ。そしてきっとみんなは、私が最後の人類であることを知っている。知っていて私にそれを伝えない。きっとそれを伝えることは出来ないようにプログラミングされているのだろう。自分たちがロボットであることも、人類が私以外にはもういないことも。

私が死んだ時、きっとこの世界は終わる。私以外に人間はいないのだ。ロボットだけで生きながらえても意味はない。というかロボットに生きているという感覚などあるのか?どうせ答えないだろうが、聞いてみたかったもんだ。

私は生きるのに疲れた。

絶望とはこのことか。こんなことなら、こんな真実に気づかなければよかった。

もううんざりだ。友達を作っても、相手は所詮ロボット。人間とは、一生喋ることすら出来ない。虚しくなるだけだ。

私が死んで、人類の歴史に終止符を打つことにしよう。すべてのロボットたちよ、今まで夢を見させてくれてありがとう。

さようなら。




「またか」
「ええ、またです。どうしても七歳あたりを境に私たちの開発した最新AIは、自らプログラムを終了してしまう。人間の両親とも仲良くできて、学校にも通い、さらに友達まで作り、人類の希望になれる存在だと思うのですが」
「うーむ、思考力の発達が進むとこうなってしまうな。早急にこのバグを改善せねば。よし次のAIの制作だ」


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