カッセル①水の芸術〜世界遺産の噴水
暑い日が続くと、涼を求めてお出かけしたくなる。
Kassel
カッセルは、ヘッセン州北部に位置し、フランクフルトからは約200km。
以前この街を訪れた事はあったが、街の代名詞でもある噴水を見ていなかったので、いつかまた必ず訪れたいと願っていた。
市の中心地の様子
公園に行く前に、街を歩いてみる。
ドンとした構えで威厳のある市庁舎。
フリードリッヒプラッツ
フリードリッヒ2世の像が見守る大きな公園は、博物館や劇場などに囲まれている。
5年毎に開催されるドクメンタのホールも、この公園の近くだ。
彼は芸術や科学を推進し、街を発展させた貢献者だそうだ。
広場から北東に延びるトレッペン通りの上には、オベリスクが聳え立つ。
ケーニッヒスプラッツ
マルティン教会
グリムの世界
カッセルは、グリム兄弟が30年ほど暮らし、童話を収集していた街。
ここに、Grimmwelt グリムの世界 という博物館が新たに建設された。
その詳細は、また別の記事にて纏めたい。
Bergpark Wilhelmshöheヴィルヘルムスヘーエ公園
この街を有名にしているのは、Bergpark Wilhelmshöheという公園。
Berg 山という名前が付いている通り、丘陵地帯にあり、その総面積は560ヘクタール。
東京ディズニーランド10個分と言えば、その広さを理解しやすいかもしれない。
Wilhelmshöheヴィルヘルムスヘーエという名前は、ヴィルヘルム9世から取ったもので、元々この辺りにあったWeißensteinという街が、彼の名前に取って代わられたようだ。
この公園の建設は1689年まで遡り、ヘッセン・カッセル方伯により始められた。
時代は、この土地を数々の支配者の下に置き、その間にそれぞれの支配者が、この公園内に好みの建物を建設していった。
そして2013年、この公園は世界遺産に指定された。
街から見ると、公園と宮殿、そして噴水は、山の上にある事が分かる。
宮殿前から、ヘラクレスの像(噴水)を見上げてみる。
Schloss Wilhelmshöhe宮殿
Schloss Wilhelmshöhe ヴィルヘルムスヘーエ宮殿は、方伯ヴィルヘルム9世によって建てられた。
ここは、ナポレオンの弟ジェローム・ボナポルトが住んだ事でも有名だそうだ。
現在は、美術館として利用されている。
美術館内部については、別の記事に纏めたい。
公園内には、もう一つのお城がある。
まるで中世の城を思わせるLöwenburg レーベンブルク城は、18世紀末に建てられた。
スコットランドの城を真似て、造らせたそうだ。
Wasserspiel 水の遊び
Wasserspiel 水の遊びと名付けられたこの巨大噴水装置は、カール・フォン・ヘッセン=カッセル方伯(統治1677〜1730年)により造られた。
彼は、フリードリッヒ2世の祖父にあたる。
この装置はエネルギーを使わずに、物理の法則だけで動いているそうだ。
流れる水の量は、750立方メートル。
二人暮らしの平均水道使用量で換算すると、約4年分に相当する。
これは、300年前から変わらないというから驚きだ。
噴水には、カールスベルクKarlsbergと呼ばれる山全体が使われており、その高さは527メートル。
山の頂上には大きな八角形の建物が聳え、その上にはピラミッド型の塔、そしてその上に8メートルのヘラクレス像が立つ。
像の完成は1717年。
夏の間、水曜日と日曜日には、きっかり14:30に、このヘラクレスが踏みつける岩から水が流れ出し、麓まで2キロに渡り滝や噴水となり、水が流れ落ちる。
水の流れのスケジュール表があり、観光客は自分の足で水の流れと共に移動しながら、その流れを楽しむという、面白い企画なのだ。
まさに、水の芸術。
全体で6つの中継地、滝や池などの見どころがある。
噴水が始まる前に、ヘラクレス像まで登ってみる。
ゴツゴツした岩場が、噴水のスタート地点のようだ。
八角形の建物の下の部分には、悪魔の洞窟と呼ばれる空洞があり、中心には笛を吹き鳴らす悪魔の像が置かれている。
ヘラクレス像の後方には、等身大のヘラクレスの頭部模型も置かれていた。
ここからは、この水の芸術の流れ。
1️⃣14:30 ヘラクレス像
こちらがスタート地点で、先ほど見た岩場から水が湧き出す。
ヘラクレス像は入場可能なアトラクションの一つだが、訪れた時は工事中のため入ることはできなかった。
ヘラクレス像の真下からの眺め。
水の流れと、市街地の道路が一直線に繋がり、街全体がまるで芸術作品のよう。
2️⃣14:35 カスケード 小さな段差のある滝
綺麗に造られた階段を、心地良い音を立てながら水が流れ落ちる。
上方から水が流れてくるのを待つのも、ワクワクして楽しい。
階段下の池の前には、大勢の観光客が集まる。
噴水が始まる1時間前には、既に中央部分の噴水がよく見える場所は、場所取りが始まっていた。
暑い日だったので、全く日陰のない場所で長時間待つ事は、私達は控えることにした。
3️⃣15:05 シュタインホーファーの滝
岩場を豪快に流れる滝。
このように、次の滝を目的地として森の中を歩くのだが、太陽が出ていても木陰は涼しく、とても気持ちが良い。
4️⃣15:20 悪魔の橋
橋の下から流れ落ちる滝。
橋の上は人気の観覧スポットのようで、すぐに人で一杯になっていた。
橋からの眺めは、迫力満点だろう。
5️⃣15:30 水道橋
この場所は私に、京都南禅寺の水道橋を思い出させた。
ここにある水道橋は、途中でプッツリと切れて、大きな滝となる。
6️⃣15:45 大噴水
最終地点のヴィルヘルムスヘーエ宮殿前の池では、高さ50メートルもの噴水が湧き上がる。
フィナーレに相応しい豪快さだ。
ここまでゆっくり歩いてきたが、ちょうど噴水が始まる直前にこの場所に到着した。
散歩に相応しい速度で、この噴水装置が計算されているのだと分かる。
轟々と噴き上がる噴水に、池の近くで草を食んでいた羊たちは、慌てて逃げて行った。
噴水だけでなく、この公園は見どころがとても多い。
この街を訪れたのは、ちょうど薔薇の季節。
敷地内の大きな池Lacには、薔薇の島と名付けられた場所がある。
島には薔薇が咲き乱れ、とても美しいのだ。
Seerosen 湖の薔薇 と呼ばれる睡蓮も、ちょうど花を咲かせていた。
淡いピンクと黄色の睡蓮は、とても美しかった。
池をぐるりと一周するのも、丁度良い散歩になる。
自然豊かなこの公園には、豪華な宮殿や城の数々が点在する。
大掛かりな巨大噴水を建設する事のできる財力と、素晴らしい芸術的センス。
私はこのカッセルの街の至るところから、落ち着いた優雅な雰囲気を感じ取る事ができた。
19世紀末、ビスマルクの専属医師エルンスト・シュヴェーニンガー博士はこの地を特に気に入り、この地の温泉が有名になったそうだ。
彼は「ここでは、一息ごとに1ターラーの価値がある」と熱弁をふるったとか。
この街の温泉は「クアヘッセン・テルメ」と呼ばれ、現代医学でもその有益性が認められている。
ヴィルヘルム9世に愛されたこの場所は、自然と芸術と医療、それぞれの調和がある街だった。
水の芸術と言われるWasserspielは、5月1日から10月3日まで、水曜日と日曜祝日のみ開催される。
森と噴水が涼を届けてくれる、夏にぴったりの観光地だ。
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