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北ドイツ⑤ブレーメン メルヘン街道の終着点

美しい北海の風景に後ろ髪を引かれながら、私達は次の目的地、ブレーメンへ。

一度、グリム童話のお話の時にも触れているが、とても美しい街なので書き残したい。

ブレーメンは、ブレーメン州の州都で、人口約56万人。(2021年調査)
ドイツで11番目に大きな街だ。

ブレーメンはハンザ同盟と深く関わっているので、簡単に纏めておきたい。
ハンザ同盟のハンザとは『商人の仲間』という意味。
同盟は13世紀に発生したもので、皇帝などから独立し、お互いの街の利益を守る目的がある。
その中心的な街がリューベックで、他にハンブルクとこのブレーメンが有名だが、最盛期の14世紀は100都市を越えており、その活動は17世紀まで続いていた。
独立、つまり自由を掲げるブレーメンを州都とするブレーメン州の正式名称は、自由ハンザ都市ブレーメンFreie Hansastadt Bremenである。

この街を世界的に有名にしているのは、グリム童話のブレーメンの音楽隊だろう。
本屋を覗くと、たくさんの言語のブレーメンの音楽隊が揃えられていた。

街はこじんまりとしているが、建物がどれも美しい。
マルクト広場は、街の見どころが詰まった場所で、ブレーメンの音楽隊の像は広場の一角にひっそり佇んでいる。
ロバの足を触ると幸運が訪れるということで、金色に光っていたのが印象的だ。

市庁舎の建物は、世界遺産にも登録されており、その建物の重厚さに目を奪われてしまう。

広場の中央には、ローランド像がある。(Bremer Roland)
このローランド像と市庁舎は、セットで世界遺産に登録されている。

ブレーメンの方々にとって、このローランド像は大切なもので、ブレーメンが自由と独立を守る象徴として、1404年にこの広場に建てられたという。
翌年には、市庁舎が完成している。

ローランドは、カール大帝に仕えた12士の1人と書かれているものもあれば、カール大帝の甥でもあると書かれているものもあった。
ローランの歌に残されたように、命を落としながらも、現代まで英雄として崇められている。

余談だが、後にクロアチアのドブロブニクを訪れた際にも、このローランド像を見ることがあった。
ドブロブニクも自由都市であったから、同じような意味を込めて建てられたのだろう。



グリム童話の記事にも書いたので重複するが、ブレーメンに残る少し悲しいお話について。

どの街にも、暗い過去や事件というものは付き纏う。
ブレーメンに詳しい人に、ブレーメンに行くならとお勧めされた場所がある。
それが、Spülstein(唾をかける石)というものだ。

1785年、天使と呼ばれていた心優しい女性が、ヒ素を使い15人もの人々を毒殺した。
この石があるのは、まさに当時の処刑場の跡地。
大量殺人という稀に見る残酷な事件だったため、彼女が亡くなった後でも、人々は彼女への嫌悪感を示すために、この石に唾を吐きかけるのだそうだ。
そして今も、この街を訪れる人に語り継がれ、観光客によってその光景が繰り返されている。

この黒い石が、広場の片隅に残る石だ。

シュノーア地区 Schnorr
15世紀から19世紀の時代の建築物が並ぶ、住宅街だが、観光ガイドにも載っているほどなので、たくさんの観光客が散歩をしている。
どこを切り取っても美しい風景になるほど、この地区は綺麗だった。

小路の何気ない風景までもが絵になる。

他にも、素敵な通りが多い。
仕掛時計Glockenspiel House (Haus des Glockenspiels)を目当てに出かけたのだが、その通りがとても美しかった。
ベットヒャーストリートBöttcher straßeは、とても小さな通りなのだが、可愛らしいお店やギャラリーが建ち並び、まるで中世に戻ったかのような感覚になる。

この建物に、仕掛け時計が設置されている。
演奏時間になると、たくさんの観光客が集まってきた。

ヴェーザー川沿いを散歩。
遠くから見る街並みも美しい。

川沿いに建てられた大きな工場は、ドイツのビール大手のBecks。

Universum
科学博物館。
色々な実験や装置を体験できるので、子供達もたくさん見学に来ていた。

まるでUFOのような建物は、その入り口通路も、宇宙への旅立ちのようにも見える。
入口からこんなにワクワクさせてくれるのは、演出の一部なのだろうか。

私は子供達に混ざり、子供達と同じように館内の実験装置に驚き、目を見張り、はしゃいだ。

Übersee-Museumは、前出の科学とは反対に、自然博物館のようなものだ。
ここで『Cool Japan』という特別展が開催されていると知り、出かけてみた。


日本家屋が再現されていた

ハンブルクと同じように、港町ブレーメンは、コーヒーも有名だ。
私達は、Münchhausenというコーヒー豆専門店を訪れた。

今も、コーヒー豆用にこの缶を使っている。
ブレーメンのコーヒー缶と、ホークジールのコーヒーカップ。
これが私の朝のお供だ。

夜が更けて、あかりが灯り始めると、街はより一層美しくなる。
ブレーメンは、グリム童話だけでなく、たくさんの魅力を持つ街だ。

ハーナウからブレーメンを結ぶメルヘン街道。
その終着点ブレーメンは、私達の休暇の終着点でもあった。

休暇最後の夜、休暇が終わってしまうのが寂しくて、私達はなかなかホテルに戻ることができず、広場でいつまでも過ごしていた。
私達はその時、市庁舎の柱に寄りかかり、一つの約束をした。

70歳になった時、また二人で今回と全く同じコースを辿り、旅をしよう。

約束した後、ふとある事を思い出した。
それは、イェーファーまでの自転車旅行だ。
北海沿岸は、強い風が一日中吹いている。
片道12kmの道のりはそれほどの距離ではないけれど、私はヘトヘトになってしまったのだ。
70歳になった時に、あの強風の中、果たして同じことができるだろうか。

次の旅行は、全く同じコースでいいけれど、イェーファーへの自転車旅行だけは、電動自転車を借りるのはどうかな?
風の強い北ドイツを、颯爽と走り抜けてみたいな。
あの、Friesisch-herbの大地を!

私の追加提案を聞いた途端、パートナーは吹き出して笑った。
そして、是非そうしようと言ってくれた。

約束した歳が、なぜ70歳なのかは、特に理由はない。

ただ、その歳までずっとパートナーの側にいたいと、そう強く思った。

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