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ドルトムント サッカーとビールの街

私のパートナーは、サッカーチーム、バイエルン・ミュンヘンの熱狂的なファン。
ドルトムントでバイエルン・ミュンヘン戦が開催され、私もスタジアムに誘われた事があった。

ドルトムントは、サッカーの思い出が強い。
2006年にドイツで開催されたワールドカップでも、チケットが当たったので試合を見に行った。

ドルトムント駅前には、ドイツサッカー博物館がある。
Deutsches Fußballmuseum

2015年に開館したそうで、まだ博物館には入場した事がないのだが、人気スポットの一つのようで常に賑わっている。


ドルトムントにあるサッカースタジアム。
ジグナル・イドゥナ・パルク 
Signal Iduna Park

ドイツの生命保険会社ジグナル・イドゥナが命名権を買い、改名された。
調べてみたところ、2005年からこの名前になったようだ。
以前の名前は、ヴェストファーレンスタディオン。

8万3千人を収容できる、現在ドイツで一番大きなスタジアムとなっている。
香川選手が活躍していたのは、ここを本拠地にしたボルシア・ドルトムント。
人気のあるチームというのは、必ずアンチも多い。
アンチは、ドルトムントの選手やファンのことを、ミツバチと呼ぶ。
その呼び名を初めて知った時、私は苦笑してしまった。たしかに黄色と黒でミツバチのようだ。

私はどうもバイエルン・ミュンヘンに不幸をもたらすようで、観に行くゲームはことごとくバイエルン・ミュンヘンが負けてしまう。
この日もドルトムントが勝利した。

この日をずっと前から楽しみにしていたパートナーは、がっくりと肩を落として隣に座っている。
そして『Ditoと一緒にスタジアムに行くのは、もうやめようかな』と真剣な顔で呟いたので、吹き出して笑ってしまった。


開催国ドイツが3位に終わった、2006年ワールドカップ。
全期間中に、ドイツが負けたゲームが1試合だけある。
そういえば、私はその試合をスタジアムで見たのだ。
パートナーが『Ditoは不幸を呼ぶ』と言ったのは案外的確な表現なのかもしれない。


私は日本でサッカーを見たことが、ほとんどない。
2002年日韓共同開催ワールドカップの時に、初めてドイツでサッカーを見るようになった。
学生寮はサッカーで盛り上がっており、みんなと過ごすうちにサッカー好きになったのだ。
寮のキッチンにあるテレビで応援し、テレビ放送していないものは、スポーツバーに行って見た。

私は、スタジアムで見るサッカーが好きだ。
近くに熱狂的なファンがいると、その会話を聞くだけでも面白い。
スタジアムでたまたま隣り合わせただけの他人でも、その日はまるで親友かのように語り合っている。

今はこうするべきだった!
あ~、一体何をやっているんだ!
何故パスを出さない!

怒っているかと思えば、上手いパスワークを褒め称え、ゴールの瞬間には奇声をあげて喜ぶ。

一度、私の前に座っていた人が、ゴールの瞬間に感極まり、手に持っていたビールを持ったまま万歳した。
私は、思いっきりビールのシャワーをお見舞いされた。
まるで漫画のようだけれど、本当に起きたことだ。
周りは大爆笑で、私も思わず釣られて笑ってしまった。
冬の気温の低い中、コートはずぶ濡れ。
どうにでもなれ、という気持ちだった。
私はそれ以来、濡れてもいい格好でしかスタジアムには行かないようにしている。

ハラハラ、ドキドキの展開も、ぐたぐたの試合も、熱狂的なファンの解説を聞いていると90分があっという間だ。



ドルトムントを訪れた時は11月で、ちょうど広場にクリスマスツリーを建てているところだった。
ドルトムントのクリスマスツリーは大変珍しく、たくさんの木を組み上げて、一つの大きなツリーを『作って』いる。
ドイツ最大のみならず世界最大のツリーとも言われているその高さは、なんと45m。

コロナの影響で、クリスマスマーケットが中止されたり、規模を縮尺しての開催が続いている。
今年こそ、ドルトムントのクリスマスツリーの周りは、以前のようにたくさんの人々で賑わって欲しいものだ。

さて、ドルトムントはビールが有名な街でもある。
駅前の建物の上に『U』という文字が大きく見える。
ここは、Dortmunder Unionというビール醸造所の名残で、昔はここが倉庫でもあり貯蔵庫でもあったそうだ。
今は芸術のための施設に生まれ変わっている。

ビールと言えば、世界一のビールの祭典オクトーバーフェストが開かれるミュンヘンを思い浮かべてしまうが、実はここドルトムントは一時期、ドイツで一番の生産量を誇っていた。

1900年頃までは、ミュンヘンとベルリンがビール製造の中心地だったそうだが、ドルトムントで最新のビール工場が建設され始め、生産量一位の座を奪った。

因みに、ビール大国ドイツは、世界のトップ40に入るビールメーカーが現在7つあるそうだ。

・Radeberger Gruppe (11,8 Mio. hl)
・TCB Beteiligungsgesellschaft mbH (8,6 Mio. hl)
・Oettinger (8,5 Mio. hl)
・Bitburger Braugruppe (6,6 Mio. hl)
・Krombacher (6,3 Mio. hl)
・Paulaner Brauerei Gruppe (6 Mio. hl)
・Warsteiner (4 Mio. hl)

特に、Radebergerグループは世界第21位で、世界総生産の0.6%にもなる。(2019年度)
ドイツ国内のビール販売シェアは、15%程にもなるそうだ。
このRadebergerグループはDr. Oetkerグループが株主。
このグループ下の主な醸造所は以下の通り。

・Stuttgarter Hofbräu
・Schöfferhofer
・Dortmunder Union
・Berliner Kindl
・Brinkhoffs
・Clausthaler
・Sion Kölsch, Gilden Kölsch
・Schlösser Alt
・Jever

どのブランドも有名なので、このブランドもグループの傘下なのだと分かると、より一層このグループの巨大さを実感する。

Dr. Oetkerはお菓子作りに欠かせないベーキングパウダーを発明した人で、その薬局は今もビーレフェルトに残っている。
ビーレフェルトの街についても、先日ブログに残した。
Dr. Oetkerの会社見学にも行った事があるので、いつか記事を書いてみたい。
また、Jeverという街のビル大規模ビール工房にも訪れた事があるので、こちらも記事に残してみたい。


昔は、ドルトムント市内に約60軒もの醸造所があったそうだが、廃業、経営統合、買収が繰り返され、今はほとんどの醸造所はこのRadebergerグループ下に属している。

DAB(Dortmunder Action Braurei)だけが今もなお、どこにも買収されることなく経営を続けているようだ。

買収された後も多くの醸造所は残り、ビールはそのままのブランドとして販売が続けられている。

 

ドルトムントは、ここノルトライン・ヴェストファーレン州の工業都市。
ルール工業地帯の要、鉄と石炭の街として知られている。
ドルトムントのビールは、長年の間、多くの肉体労働者たちの喉を潤してきたのだろう。

しかし、エネルギー革命によって、次第にこの街の持つ重みは失われていった。
街は活気を失い、また労働者の数も減少してしまった。
ビール醸造所の衰退は、街の衰退でもあったのだろう。

それでも今もなお、サッカースタジアムに集まる8万人の熱狂的なサッカーファンの喉を潤すのは、ドルトムントに昔からあるビールが相応しいと思う。

はて、あの時スタジアムで私が浴びたシャワーは、どの醸造所のものだったのだろうか。

ビーレフェルトの街について

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