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缶ペンケースのおもひで

おいでませ。玻璃です。

中学生活は順調だ。
まず、小学生の時と大きく違うのは、教科ごとに先生が変わること。
教科ごとに個性ある先生が多く,、モノマネ好きな私たち窓際族の話のネタとなった。

女子の体育教師でスラリと背が高く、日に焼けたショートカット、水泳の木原光知子さん似の「おだばあ」。

家庭科教師で体の比率が湯婆婆に似た「とくばあ」。
(基本女性の中年以降の先生は”ばあ”がつく)

国語教師で20代半ばのスポーツウーマン、全校生徒でマラソンをする耐寒訓練では先頭をまるで原始人のような逞しさで走る「ヒロシマ」。

クラスが多い分、各教科2名ずつの先生がいたので他にも個性ある先生はいたが、今回全員は紹介できない。
今日は中でも印象的な先生とそのエピソードを紹介したい。

社会科の片山先生、通称キャタ。
年の頃はだいたい50代だっただろうか?
身体に対して頭は小さめ、薄くて天パの髪の毛は昔ながらのポマードでベタついてる。「眼鏡をかけた亀」という印象だ。
教科書を手に机の間を通って教室を回りながら講義をするのだが、座っている私たちの目の高さで丁度視界に入るのが、尿漏れをしたであろうズボンのシミだ。
当然みんなから好かれているはずはない。

キャタにはもう一つ大きな特徴があった。
口癖だ。

「いわゆるぅ~(所謂)」

一度の授業で何度も…鬼のように使う。
あまりにも言いすぎるので、ある日みんなでいたずらをすることに。
その頃ほとんどの子が使っていた缶ペンケースを「いわゆる」を言うたびに机から落とすというものだ。

キーンコーンカーンコーン

授業が始まるチャイムが鳴る。
いつものようにキャタが入って来た。

「起立!」
「礼!」
作戦は成功するのか?

「今日は~前回の続きの~いわゆる~」

ガチャン!!

「あ~いわゆる~このぉ~いわゆる~」

ガシャン!!ガチャン!!

「なんだぁ?おまえらぁ!集中して聞けよ。
 え~次のページの~いわゆる~」

ガチャン!ガシャン!!ガチャガチャン!!

さすがにキャタも怒り出す。
そしてもう一つのお得意の口癖を…。

「だてやすいきょうで言うとるんやないそどぉ!」
(伊達や酔狂)

この言葉を合図にほぼ全員で缶ペンケースを落下。
ガチャン!ガシャン!!ガチャガチャン!!ガッシャン!!!

呆れ果てたキャタの顔。
もっと叱られると思ったが、案外大ごとにはならなかった。
自分の口癖に気づいていたのだろうか?

私たちが卒業して数年が経ち、キャタは他の学校の教頭を経て、どこかの校長になったと風の便りに聞いた。
きっと「校長先生の話」の時にはあの言葉を連発していた事だろう。

「いわゆる〜このぉ〜いわゆる〜」

ではまたお会いしましょう。


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