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わたしのそばに海。

海沿いの町に産まれた。
わたしが生まれた病院はもうなくなってしまったけど、
海のすぐそばにある大きな病院だった。
そう思うと、わたしには産まれた時から
海はすぐそばにあったのかもしれない。

小さいときは集合住宅に住んでいた。
海沿いの町とはいえ、住むところは海より高いところで
ベランダから遠くに青い水平線が見えていた。
子どもながら東を見れば海。と思っていた。

小学校も中学校も校歌は海がモチーフだった。
小学生の頃のわたしは、太陽は海から昇り、山に沈むと思っていた。
それはこの町に住んでいたからだけのこと。
四方山に囲まれたところでは、海側はないと
キャンプに行ったときに気づく。

一軒家に引っ越しをしてからも、
窓から、通学路で、遠く向こうに青い海が見えていた。
遠くを見ると海と空の青がずっと続いていた。

別の町の祖父母の家から帰ってくるとき、
高速道路のインターで最初に迎えてくれるのが地球一面の海なのだ。
水平線がすごく高い位置に見えていて、
高速道路は相当高いところにあるのに、それと同じくらいの高さに
水平線が見えている。
地元が同じ友達と、なんであんな高い位置に水平線が見えるのか、
不思議だよね(笑)、なんて話したこともある。

大学生になって、友達と海に夕日を見に行こうとドライブをした。
到着してずっと海を見ているが
一向に太陽は見えず、でも、空が暗くなっていく。
なんでだろうと思っていると
山のほうに日が沈んでいくのが見えた。
「ここでは、海に太陽が沈むのはどう頑張っても見えないじゃん!」
と、友達と大爆笑した。
―海は日の出しか見られないのに、なぜか気づかず。
ずっと頭の中で海に沈んでく太陽が再生されていた。


最寄りの駅はわたしが大人になる頃まで海のそばにありながら
海が見えなかった。
今は駅が建て替えられてとてもよく見える。
朝早い出発の日は、橙のような黄金色のような朝日と海がわたしを迎えてくれて、
昼間は青い海が一面に広がる。
夜は真っ暗闇で何も見えなくて、少し不気味だ。
そんな風に海の表情は変わる。

電車の車窓から海が見えるのも好きだ。
電車の旅に出るとき、海沿いを走る列車があれば
必ず海側を予約する。
海が好きなんだ。
青色も好きなんだ。

社会人になって、海が見えない町で暮らしている。
いつか海の見える家で暮らしたい。
窓を開けたら毎朝、海が迎えてくれるような
そんな日を実現したいと
ずっとずっと思っている。


晴れた日のすがすがしい青い海はとてもきれいだ。
あぁ、家に帰ってきたなぁと思う。
海を見て。

#わたしと海

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